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ワークエンゲージメントの高め方とは?向上のための企業事例も解説

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更新日: 2025.07.11
ワークエンゲージメントの高め方とは?向上のための企業事例も解説
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

近年、ワークエンゲージメントの概念は各企業に普及しています。働きがい向上の重要性は理解されてきたものの、どのように取り組めば良いか悩む担当者は多いかもしれません。

本記事では、ワークエンゲージメントの概要と高めるメリット、向上のための具体的な取り組み方法と事例をまとめています。

ワークエンゲージメントの高め方を知りたい企業の担当者はぜひ参考にしてみてください。

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ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメントとは、従業員が職務から「やりがい」や「誇り」などの活力を得て、熱心にいきいきと仕事に没頭できる心理状態をいいます。

オランダのユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授らにより確立された概念です。反対の概念は「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。

ワークエンゲージメントを高水準に維持できると、企業の生産性だけでなく、従業員の働く満足度の向上にもつながります。

そのため、近年は厚生労働省が労働白書にまとめており、注目すべき概念として扱われています。

参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」 第Ⅱ部第3章第3節 「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について」

ワークエンゲージメントを構成する3つの要素

シャウフェリ教授らは、ワークエンゲージメントが満たされるためには、以下の3つの要素が満たされる必要があると論じています。

要素 説明
活力
(Vigor)
仕事を通じて活動する活力を得ることができている状態。活気に満ちており、困難な課題が目の前にあったとしても、挑戦できる体力・気力が十分にある。
熱意
(Absorption)
自分の仕事に誇りを持てる状態。仕事にやりがいや専門性(技能)を持つ者としての誇りを感じており、興味関心をたえず注ぐことができている。
没頭
()
仕事に夢中になっている状態。仕事をしていると時間を忘れて無我夢中となるが、その状態を心地よく「幸せ」と感じることができている。

参考:厚生労働省「ワークエンゲージメントの概念について」

ワークエンゲージメントに関連する3つの状態

ワークエンゲージメント_高め方02.jpg

参考:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について」をもとに自社で作成

ワークエンゲージメントは、図のように仕事に費やす時間や注ぐエネルギーが高く、仕事が「楽しい」と肯定的に捉えている状態です。

対極にあるのは、仕事に嫌気が差して活動水準も低いバーンアウトです。健康障害やメンタルヘルス不調につながる恐れがあるため、予防が必要といえます。

また、表面的には活動水準は高いものの、職務をこなすのが手一杯でやりがいどころではないのがワーカホリズムです。一見熱心なように見られますが、自主性が高いとは言いがたい状態です。

図のように活動水準と仕事への態度・認知という2つのポイントから、ワークエンゲージメントの状態を正しく理解しましょう。

ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントが高まることで得られるメリットは、以下の3つです。

  • ・企業全体の生産性が向上する
  • ・従業員の技能向上が見込める
  • ・従業員の離職率が低下する

従業員が仕事に熱意と誇りを持つことで、主体性やチームでの協力姿勢が生まれ、組織全体の生産性が向上します。また、一人ひとりの成長意欲が高まり、自発的なスキルアップが促進されるため、企業全体の技能も底上げされます。

さらに、働きがいと心理的安全性が確保されることで、優秀な人材の離職率が低下し、採用・育成コストの削減にもつながります。

これらの好循環は、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支える強固な土台となるのです。

ワークエンゲージメントを高める方法

ワークエンゲージメント_高め方04.jpg

ワークエンゲージメントを高める方法として、以下のように業務や組織、個人を対象にした3つのアプローチがあります。

  • ・業務:業務負担の軽減により働きやすくする
  • ・組織:従業員の成長を支援する仕組みをつくる
  • ・個人:従業員の目標とやりがいを引き出す

以降で詳しく解説します。

【業務】業務負担の軽減により働きやすくする

業務負担はワークエンゲージメントの低下につながる要因の一つです。ワークエンゲージメントのメカニズムを説明する「JD-Rモデル」のうち、仕事の要求度(業務量や責任の重さなど)がバーンアウトにつながるとされています。

長時間労働や過重労働などの物理的な負担に加え、役割のあいまいさや不必要な業務などの可視化しにくい負担も含みます。気づかないうちに従業員のワークエンゲージメントが低下する恐れもあるため、負担軽減を目指した職場環境改善が大切です。

負担軽減の取り組みとしては、「役割分担の明確化」や「業務プロセスの見直し」が挙げられます。業務量自体は減らすことは難しいことが多いため、仕組みやプロセスを見直すことが適切です。

参考:Bakker, A. B., Demerouti, E., & Verbeke, W. (2004). Using the Job Demands-Resources Model To Predict Burnout and Performance. Human Resource Management, 43(1), 83–104.

取り組み例①:役割分担の明確化

「誰が何をどこまでやるのか」という役割や責任範囲があいまいだと、業務の重複や抜け漏れが生じて負担が増大しやすくなります。1on1ミーティングなどを通して、上司と部下が業務範囲や期待する役割について具体的にすりあわせておくとよいでしょう。

取り組み例②:業務プロセスの見直し

形骸化した会議や効率的でない報連相、複雑な承認フローなどは従業員のエネルギーを損ねかねません。情報共有ツールの導入により報告を簡略化したり、必要のない会議は短縮したりするなど、業務プロセスの見直しを図りましょう。

【組織】従業員の成長を支援する仕組みをつくる

従業員が生き生きと働くためには、負担を減らすだけでなく、仕事への意欲を高める周囲のサポートが欠かせません。ワークエンゲージメントを高めるだけでなく、業務負担が大きい場合のネガティブな影響を緩和させる効果があります。

具体的には、権利委譲や成長を促すフィードバック、リーダー育成が重要となります。

取り組み例①:権限委譲

従業員を信頼して、一定の権限を委譲することは「会社から必要とされている」と従業員のワークエンゲージメントを高めます。自律的に仕事ができる環境は、従業員の主体性を育みます。

ただし、丸投げにならないよう、任せる範囲を明確に決めた上で必要な知識やスキルを伝えることが大切です。権限委譲後も、上司が部下に適宜フィードバックを行う仕組みを整えておく必要もあります。

取り組み例②:成長を促すフィードバック

日々の努力や成果が適切に認められ、成長につながるアドバイスが得られる環境は、従業員のモチベーション向上につながります。

結果だけでなく、仕事への姿勢や過程も評価対象に含めることで「日々の職務が正当に評価された」と感じやすくなります。定期的な1on1の面談を通じて、上記項目を具体的に評価し、フィードバックすることがおすすめです。

また、サンクスカードやメッセージボードで同僚同士で賞賛し合える仕組みを導入できると、チーム内で互いに努力をシェアする文化が根づきます。

参考:厚生労働省「働きがいのある職場づくりのために」

取り組み例③:リーダー育成

従業員の働きがい向上には、管理職やリーダーの存在は不可欠です。リーダーシップとワークエンゲージメントの関係を検討したメタ分析では、以下の行動傾向をもつリーダーがふさわしいとされています。

行動傾向 具体例
倫理的な視点を持っている
     
  • ・常に誠実で正直である
  •  
  • ・公平な意思決定を行う
  •  
  • ・困難な状況でも、倫理的な判断を優先する
ロールモデルとして行動する
     
  • ・リーダー自身が仕事に熱意を持って取り組む
  •  
  • ・組織の価値観や望ましい行動を自ら実践する
  •  
  • ・部下が模倣したいと思うようなモデルになる
部下の自己決定を支援する
     
  • ・部下に意思決定の裁量権を与えて自主性を尊重する
  •  
  • ・部下に研修機会やフィードバックを与える
  •  
  • ・部下の意見や提案を傾聴して価値あるものとして扱う
良好な社会的交換を促進している
     
  • ・部下の話を真剣に聞いて共感を示す
  •  
  • ・部下の利益を優先して尽くす姿勢を見せる
  •  
  • ・オープンで透明性のあるやりとりをする

以上のような行動傾向をもつリーダーを育成できるよう、管理職育成研修などで周知していくことが大切です。

参考:Decuypere, A., & Schaufeli, W.B. (2021). Exploring the Leadership–Engagement Nexus: A Moderated Meta-Analysis and Review of Explaining Mechanisms. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18.

【個人】従業員の目標とやりがいを引き出す

働きやすい環境が整っても、仕事に意味を見いだして主体性を発揮するには従業員自身の力も必要です。従業員一人ひとりが持っている目標とやりがいを引き出すアプローチが求められます。

具体的には、「目標設定」や「ジョブ・クラフティング」があります。

取り組み例①:目標設定

定例会議などで個人の目標を共有する機会を作ることで、従業員は職務の意義を再確認することができます。

また、経営層が前に出てビジョンを直接伝えられる機会を持つと、従業員の理解やコミットメントを高めやすくなるでしょう。目標を共有する際は、従業員一人ひとりの目標が企業全体の目標達成につながることをイメージできることが大切です。

目標の明確化や細分化、達成可能な行動計画への落とし込みは、次の指標の活用が有効です。

指標 目標設定の効果
OKR 目標の明確化と目標達成度のわかる結果の設定
KPI 目標達成のための各プロセスを数値で評価

※OKR:Objectives and Key Results(目標と主要な成果)

※KPI:Key Performance Indicator

なお、OKRに関しては以下のGoogle re:Workのコンテンツで、目標と成果指標を記すテンプレートシートが配布されています。目標設定の取り組みを強化する際の参考にしてみてください。

Google re:Work「OKRを設定する」

参考:Locke EA, Latham GP. Building a practically useful theory of goal setting and task motivation. A 35-year odyssey. Am Psychol. 2002 Sep;57(9):705-17.

参考:Abujudeh HH, Kaewlai R, Asfaw BA, Thrall JH. Quality initiatives: Key performance indicators for measuring and improving radiology department performance. Radiographics. 2010 May;30(3):571-80.

取り組み例②:ジョブ・クラフティング

ジョブ・クラフティングとは、従業員が仕事に意味ややりがいを見いだすために行う主体的な工夫のことです。自分自身の仕事を捉え直し、やり方の工夫や考え方を変える取り組みを指します。具体的には、以下の3つの種類があります。

指標 目標設定の効果 目標設定の効果
課題クラフティング 仕事のやり方や範囲、内容そのものを物理的に変えるアプローチ。日々の業務に工夫を加え、より効率的でやりがいのある形に変える。
  • ・新しいITツールやアプリを導入し、定型業務を自動化・効率化する
  • ・同僚と業務の交換をして自分の得意な業務の比率を増やす
  • ・業務の優先順位付けの方法を見直す
関係クラフティング 仕事で関わる人や、その関わり方を主体的に変えるアプローチ。職場での人間関係をより刺激のあるものにすることで、仕事の満足度や活力を高める。
  • ・他部署の詳しい人に積極的に質問し、メンターのような関係を築く
  • ・顧客や取引先とのコミュニケーションの頻度を増やし、より深いニーズや感謝の声を直接聞く機会をつくる
  • ・チーム内のランチや交流の機会を企画し、仕事以外での相互理解を深める
認知クラフティング 仕事そのものに対する考え方や捉え方を変えるアプローチ。業務内容は変えずに、その仕事が持つ意味や価値を再定義することで、仕事への誇りや使命感を見いだす。
  • ・単調なデータ入力作業を、「会社の重要な意思決定に関わる資料づくり」と捉え直す
  • ・クレーム対応の仕事を、「お客様の不満を解消し、会社のファンになってもらう最前線の仕事」と意味づける

以上のような切り口でグループワーク形式で話し合うことがおすすめです。仕事の捉え方を変えることで、日々の行動や人との関わり方が変化し、ワークエンゲージメント向上につながります。

ワークエンゲージメントの測定方法

ワークエンゲージメント向上の施策を行うためには、従業員の現在の状態を正しく把握することが欠かせません。ワークエンゲージメントを測定する方法として、代表的なものは以下の3つです。

測定尺度 測定対象 構成要素 主な特徴
UWES ワークエンゲージメント
  • ①活力
  • ②熱意
  • ③没頭
安定性が高くエンゲージメント測定で一般的に活用される。
MBI-GS バーンアウト
  • ①消耗感
  • ②シニシズム
  • ③職務遂行能力の低下
バーンアウトを測定する。ネガティブな状態の分析に強い。
OLBI ワークエンゲージメント
  • ①疲弊
  • ②離脱
MBIの代替的尺度。「離脱」がエンゲージメントの対極として捉えやすい。

ワークエンゲージメントを直接的に測定できるのはUWESです。MBI-GSやOLBIは、バーンアウトの程度を測るもので、得点が低いほどワークエンゲージメントが高いと解釈されます。

エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、結果をもとに改善策を講じることが大切です。部署や職種、勤続年数などの属性ごとに分析を行い、具体的な課題を抽出してみましょう。

ワーカーズドクターズでは、嘱託産業医紹介サービスをご提供しています。専任のスタッフが選任時の手続きから選任後の業務調整まで対応可能なため、初めての選任でも安心してご利用いただけます。お気軽にお問い合わせください。

嘱託産業医サービス | 産業医の紹介ならワーカーズドクターズ

参考:慶應義塾大学 総合政策学部 島津 明人 研究室「ワークエンゲイジメント(UWES)」

ワークエンゲージメントを向上し企業全体の成長につなげよう

エンゲージメントサーベイを活用し、結果の分析を元に職場の課題を洗い出すことで、的確な施策を講じることが可能です。

企業理念の浸透を狙っての研修や対話、管理職への支援、1on1ミーティング、相互承認の推進などが実施例です。職場の課題に合わせて必要な施策を選択し、実施することをおすすめします。

本記事を参考に、ワークエンゲージメントの向上を目指した取り組みの検討にぜひご活用ください。

公開日: 2025.07.11
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