働く女性の増加とともに明らかになる女性の健康課題
女性の社会進出が進み、働く女性の割合は職場全体の4割を超えています。
月経や妊娠・出産、卵巣や子宮のガンなど、女性特有の健康課題は様々です。
これまで企業では、こうした女性特有の健康課題があることについて、あまり認識はされてきませんでした。経済産業省の調査では、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」約4割が「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」と回答しています。
女性特有の健康課題により仕事の生産性が低下したり、昇進や責任の重い仕事に就くことや、望むキャリアをあきらめる女性がいることは、女性だけではなく企業にとっても損失です。働く女性が増加し、その活躍が一層期待される中で、女性従業員の健康支援は重要な課題となっています。
女性特有の病気・症状とは
女性の身体は、女性ホルモンの影響を受けて大きく変化し
ます。現代女性は、妊娠・出産の機会が減っているため、
月経の回数が昭和初期に比べて9倍~10倍に増えています。
そのため、月経や女性ホルモンによる病気や症状が増えて
いると言われています。 月経痛、月経前症候群(PMS)、
子宮内膜症、子宮筋腫などの症状に加えて、妊娠、出産期
の身体の変化や、不妊などの悩みも増えてきます。
更年期になると、女性ホルモンの減少によって、ほてりや
冷え、不眠、うつといった症状が現れます。 更年期障害は、
女性だけでなく男性にも見られます。男性ホルモンの減少
によって「集中力の低下」「筋力低下」「不眠」といった
さまざまな症状があらわれるのです。男性の更年期障害に
ついては、主に泌尿器科や内科で診断・治療が行われてい
ます。
更年期以降は、生活習慣病、骨粗しょう症や認知症など、
男性より女性がかかりやすくなる病気があり、注意が必要
です。
がん検診が受けやすい環境作りが大切
日本医療政策機構の調査によると、婦人科疾患による経済
的な損失が2.3兆円に上ることや、子宮頸がん検診や乳がん
検診の受診率が諸外国に比べて低いことがわかっています。
職場全体で、女性特有の健康課題を認識し、希望する時に
休暇や時短勤務などがとりやすい環境を整備し、子宮頸が
ん検診や乳がん検診の受診をしやすくすることが大切です。
症状には個人差があります
月経周期に伴う不調や更年期(閉経前後、各5年程度) の症状は個人差が大きいため、男性のみならず、症状が比較的軽い女性の方からも理解が得られにくいことがあります。
「気力でカバーできないの?」「病気じゃないんだから」などと言われてしまい、 それが更に負担となり、症状が悪化することになりかねません。
女性の健康課題には、職場の理解と配慮が重要となります。症状が重くてつらい場合には、レディースクリニックなどの産婦人科で、さまざまな治療を受けることができますので、受診しやすい環境作りを検討しましょう。
産業医、産業保健師に相談することも効果的な方法です。
女性の健康支援の取り組みのポイント
女性が健康的に働きやすくなるために、会社では、以下のような取り組みを検討しましょう。
体調不良時
- ・不調時の休養、治療・通院、検診と仕事を両立するために、休暇制度の整備や柔軟な働き方 (フレックス、時差出勤、テレワークなど)の導入
- ・生理休暇を取得しやすい環境の整備
- ・不調時に横になれる休憩スペースの設置
- ・女性だけでなく管理職や男性も含めた職場全体の働き方改革 他
検診率をあげる取り組み
- ・検診受診の重要性(早期発見・早期治療の重要性)に関する啓発
- ・乳がん検診、子宮頸がん検診受診料の補助
- ・勤務時間内に検診ができる仕組み作り
相談先の確保
- ・女性特有の不調について相談できる女性の産業医、カウンセラーの配置
- ・女性限定のチャットルーム等の設置、気軽に相談できる場を提供
妊娠・出産のサポート
ハラスメント対策
- ・セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメント防止に向けた方針の周知徹底
家族や職場など、身近にいる女性がいつもと違う様子なら、
まずは心や身体の状態についてゆっくりと話を聴いてあげ
ましょう。
悩みを聞いてもらうだけでも心身の不調が軽くなることも
ありますし、いつでもサポートするよ、という姿勢は心強
いものです。
女性の健康支援を通じて、誰もが健康で生き生きと働くこ
とのできる職場づくりに取り組んでください。
<参考文献>
健康寿命を延ばそう SMART LIFE PROJECT 健康イベント&コンテンツ> 婦人科受診のトリセツ >男性編(厚生労働省)
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/womens_health/2022/page3
働く女性の健康応援サイト(女性就業支援バックアップナビ)
https://joseishugyo.mhlw.go.jp/health/lifestage.html