増加傾向にある腰痛
腰痛は男性の自覚症状の第1位で、女性では肩こりについで第2位となっており、症状に悩んでいる方が非常に多い疾患です。
厚生労働省が発表した「令和3年の労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷者数は149,918人と平成10年以降で最多となりました。
事故別順位では、「転倒」に続き腰痛等の「動作の反動・無理な動作」が2位で、前年に比べ8.7%増加しています。
一度腰痛が起きてしまうと治るまでに時間がかかってしまったり、再発する可能性が高くなってしまうため、腰痛を起こさないための予防が重要になります。
今回は運転中とデスクワーク時の姿勢と、腰痛が起きた後の対処法についてお話をさせて頂きます。
運転中の作業姿勢
長時間の車両の運転は、振動が腰部に加
わることもあり、腰に過度の負担がかか
って、腰痛が発生しやすくなります。
運転中は以下の点に気を付けましょう。
- ・座面や背もたれの角度や、座席の位置
が適切かどうかを点検し、調整を行う
- ・クッション等を用いて腰への振動を減
らす
- ・適宜休息を取り、車両から降りて、背
伸びなどの軽い運動をして、凝り固まっ
た筋肉をほぐす
_その他、作業しやすい衣服、滑りにくい靴、腰部保護ベルトなどの補装具は、腰痛予防に役立ちます。なお、腰部保護ベルトは医師から正しく指導を受けて装着しましょう。
デスクワークの作業姿勢
コロナ禍でテレワークが増加したこともあり、長時間のデスクワークに伴う腰痛も大きな問題となっています。デスクワークの際は、以下の点に気を付けてみましょう。
- ・椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支
- え、履物の足裏全体が床に接するようにする
- ・必要に応じて、滑りにくい足台を使用する
- ・椅子と太ももの膝側背面との隙間に、手指が
- 入る程度のゆとりがあり、太ももに無理な圧力
- が加わらないようにする
- ・ 膝や足先を自由に動かせる空間を作る
- ・ 前かがみの姿勢を避ける
- ・適宜、立ち上がって腰を伸ばすなど、姿勢を
- 変える
腰痛が起こってしまったら
気を付けていても、腰痛が起こってしまうこと
は誰にでもあります。腰痛(ぎっくり腰)が起
こった際には以下のような行動を心掛けましょ
う。 強い痛みで体を動かすことが難しい場合に
は、安静が必要です。
横向きか上向きで膝を曲げ、エビの
ような姿勢で横になります。仰向け
に寝るときには、膝の下に枕などを
入れます。柔らかな布団やソファー
はお尻が沈み、腰椎が不自然に曲が
ってしまうので、固い布団が望まし
いです。
これまでは、腰痛が起きたらしばらく安静にした方がいいと言われていましたが、最近の欧米の文献では、安静にして横になることは回復を遅らせたり、その後の腰痛の再発率が高いとされています。
発症直後の動くことができない状態を脱したら、普段の活動を維持するように努めましょう。可能であれば、早めに鎮痛剤などの薬を服用し、痛みが楽になるまで飲み続けることが、慢性の腰痛防止に効果的です。
腰痛ベルト、コルセットは腰痛があり、装着することで痛みが和らぐ間にだけ使用しましょう。長期間装着することは、腰を支える筋力を低下させるため、好ましくありません。
まとめ
気温も一段と下がり、腰痛が発生しやすい季節になりました。腰痛を起こさないためには作業環境や作業時の姿勢、業務前後の体操やストレッチがとても大切になっています。点検や体操を日々の業務の習慣に組み込み、職場全体で腰痛を予防していきましょう。
<参考文献>
世帯員の健康状況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf
令和3年の労働災害発生状況を公表(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25944.html/
運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/131025-02.pdf
職場における腰痛予防対策指針及び解説(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034mtc_1.pdf