統合失調症の症状
日本における統合失調症の患者数は約80万人といわれています。生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%、100人に1人弱います。原因ははっきりとわかっていませんが、脳の機能的な異常や、遺伝子の異常が推測されています。
症状は主に、健康なときにはなかった状態が表れる「陽性症状」と、健康なときにあったものが失われる「陰性症状」があります。
陽性症状 |
【幻覚】
他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い。
【妄想】
事実ではないことを確信しており、周りが訂正しようとしても受け入れない。「誰かにいやがらせをされている」という被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想がある。
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陰性症状 |
意欲が低下し、趣味や楽しい出来事に興味を示さなくなる。 喜怒哀楽などの感情変化が乏しくなる。また、他者の感情に共感しなくなる。
疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる。 入浴や着替えなど、清潔を保つことができなくなる。
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また、考えがまとまりにくく、言いたいことを伝えにくくなったり、相手の会話の意図を理解できなくなり、周囲にうまく合わせることができなくなってしまいます。
統合失調症の治療は、薬をつかう薬物療法と、専門家と話をしたりリハビリテーションを行う治療、心理社会療法を組み合わせて行います。症状が長引くと対人交流が失われ、社会生活から遠ざかってしまい、失われた機能を取り戻すことが難しくなります。早期発見、早期治療が非常に重要な病気といえます。
職場での配慮のポイント
統合失調症者の患者さんの特性に、「状況に合わせて必要な情報を選び、まとめる能力が低い」「周りに溶け込めず、いつも緊張している」「状況の変化に弱く、対人関係を築くことが苦手」「常識的な思考や行動をとりにくい」などがあります。
そのため、集団に溶け込むことができず、職場で孤立してしまうことがしばしば見受けられます。
また、複数の人とやり取りをし、色々な情報から優先順位をつけるような業務では、強いストレスを感じて、幻覚や幻聴などの症状が悪化する場合があります。
そのため、職場では以下のような事に配慮して頂ければと思います。
- ◆本人の話をよく聞き、困っていることを確認する。
- ◆幻聴、妄想を否定しない。
- ◆内服が主な治療で、飲み続けないとほとんどの方が再発してしまうため、職場でも内服を続けられるよう、休憩時間を設けるなどサポートする。
- ◆ストレスや環境の変化に弱いため、配慮した対応を心がける。
- ◆一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなど整理して、一つずつゆっくり具体的に伝える。
- ◆症状が強い時には無理をさせず、休養を促し、精神科の受診を勧める。
- ◆会社のルールが守られない場合は、見過ごすのではなく、対応可能な範囲で具体的に分かりやすく指導する。
幻聴や妄想がある方は、物事に集中できず、職場で
の作業能率が落ちたり、労働災害を起こす危険があ
るため、できるだけ早く精神科を受診することが必
要です。
家族に職場での状況を話し、協力を求めることも検
討します。
また、職場復帰の段階では、もとの業務に復帰可能
かどうか、本人・職場上司・主治医・産業医でよく
話し合う必要があります。
場合により、軽い業務からの段階的な復帰も考えま
す。
幻聴や妄想などの典型的な症状だけでなく、遅刻や欠勤、作業効率の低下、労働災害など「いつもと違うな」「調子が悪いのかな」という状態から、精神疾患を疑い、早期発見・早期治療につなげることができれば最良と思います。
そのために、日頃からの職場内でのコミュニケーションを大切にして、声掛けを行い、小さな異変に気付けるような職場環境を作っていって頂けたらと思います。
【イラスト】清水杏里
<参考文献>
精神・発達障害者仕事サポーター養成講座 精神疾患(精神障害)の特性(代表例)統合失調症(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/seishin/characteristic.html
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/
みんなのメンタルヘルス 統合失調症
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_into.html