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36協定の残業時間の上限は45時間?超えた場合も解説

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更新日: 2023.06.13
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

産業保健に関する情報を幅広く発信。産業医業界で10年以上、約1,250ヶ所の事業場の産業保健業務サポートをしているワーカーズドクターズだからこその基礎知識や最新の業界動向など、企業様の産業保健活動に役立つ情報をお届けします。

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36協定は法定労働時間を超えて残業を行う際に必ず取り交わさなければならない協定です。法令順守はもちろんのこと、長時間労働の削減・予防は従業員の健康を守り労働状況を改善するうえでも大切です。

36協定の残業時間の上限は原則である月45時間以外にも、特別条項付きでの上限変更があるため、しっかりと理解する必要があります。

今回は36協定の残業時間について解説していきます。

36協定とは時間外労働に関する取り決め

36(サブロク)協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定を指します。正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」と呼ばれています。

労働基準法により定められている法定労働時間は、1日8時間・1週間40時間以内です。これを超えて従業員に時間外労働をさせる場合、従業員との36協定締結と所轄労働基準監督署長へ36協定届の提出が必要になります。

企業が届出をしないまま従業員に時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるため注意が必要です。

36協定の残業上限についてのポイント

36協定における残業時間を知るうえで押さえておきたい時間や期間は以下の通りです。

  • ・月45時間、年360時間…36協定で定められている残業時間の上限
  • ・月100時間未満、年720時間…特別条項付き36協定の残業時間の上限
  • ・月45時間超の残業は1年に6回まで…特別条項付き36協定の取り決め

36協定の残業時間内で収まる場合は問題ありませんが、突発的な業務発生や業態によって特別条項付き36協定を取り交わす必要が出てくるでしょう。特別条項付きの残業上限には、上記ポイント以外にも規定があります。

残業時間の上限は原則月45時間、年360時間

36協定の締結の際、1日・1か月・1年あたりの時間外労働の上限時間の設定を行います。ここで設定できる残業時間の上限は月45時間・年360時間です。また、働き方改革関連法案が改正されて以降、この上限には法的強制力があります。上限を超えて残業をさせた場合には罰則が課せられるため注意が必要です。

過去の業務量や残業時間を参考にしつつ、上限を超えないための対策が必要です。

また、36協定で定められている残業時間の上限以上の労働がどうしても必要な場合、特別条項付きの36協定の締結も可能です。

しかし、「特別条項」を付けた36協定にもいくつか規定があります。

特別条項付き36協定の残業時間の上限

特別条項付き36協定によって残業時間の延長は可能です。ただし、残業の上限はありますので規定を理解しておく必要があります。

特別条項付き36協定を締結した場合、月100時間未満(法定休日労働含む)、年720時間以内(法定休日労働含まず)が残業時間の上限に加えて、以下の規定に収まるようにしなければなりません。

  • ・月45時間を超えての残業は1年につき6回まで
  • ・2~6か月平均の残業時間が80時間以内(法定休日労働含む)

また、延長のための手続きや、健康・福祉確保措置についても定める必要があるほか、割増賃金率についても法定割増賃金率を上回るよう努めなければいけません。

月の残業時間の上限は100時間未満

特別条項付き36協定を結んだとしても、法定労働時間外労働と法定休日労働の合計は月100時間未満でないといけません。「次月の残業を減らして平均残業を抑えればいい」ということではありませんので、注意しましょう。

残業時間の上限、年720時間=月平均60時間ではない

特別条項付き36協定にある、法定休日労働を含まない年720時間の残業時間の上限から人によっては「月平均60時間で抑えておけばいいか」と考える人もいるかもしれません。しかし、規定にある月45時間を超えての残業が可能なのは年6回までのため注意が必要です。

月の平均残業は80時間以内

特別条項付き36協定の規定でわかりにくいのが、2~6か月平均の残業時間が80時間以内という点でしょう。80時間以内には法定休日労働の時間も含みます。 2~6カ月の期間のどの期間を切り取っても、平均残業時間が80時間以内でないといけないという規定です。

例えば、1月が90時間、2月が70時間の残業時間であった場合の3月に可能な残業時間を考えてみましょう。この場合、3月の残業時間は80時間以内にしないといけません。なぜなら2、3月での平均を考えるのみではなく、1~3月での平均時間も考慮しなければならないからです。

長時間労働削減のためのポイント

各業界で働き方改革が進んでおり、決められた労働時間内で効率よく業務を進めることが求められています。

そのためには、企業全体で業務効率化に取り組む必要があるでしょう。ここでは、労働時間削減のために企業が意識すべきポイントを解説します。

労働時間の管理方法の見直し

長時間労働の予防のためには、労働時間の適正管理が非常に重要になります。正確な労働時間を把握して自社に適した施策を講じるため、労働時間の管理の徹底が効果的です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けてテレワークが普及して以降、従業員の労働状況の把握が難しくなっています。

テレワーク下の労働時間の計算のため、ログイン状況が記録されるチャットアプリの活用による始業時間・終業時間の把握、ネットワーク機能付きのタイムレコーダーの導入による労働時間の計算などが多くの企業で採用されているようです。自社に合った方法で従業員の労働状況を確認し、長時間労働を減らしていきましょう。

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職場環境の改善

労働時間を管理する制度が整っていたとしても、サービス残業が文化として残っている、人事評価に影響を及ぼす企業も多くあるのが現実です。労働時間管理の方法だけでなく、働く環境の改善も長時間労働の削減につながります。

人事評価制度の見直しや、職場の雰囲気の改善などを率先して行い、長時間労働の予防に努めると良いでしょう。

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気をつけたい。残業時間超え月60時間と80時間

36協定の残業時間の上限以外にも気をつけておきたいポイントがあります。それは月60時間を超える場合の割増賃金率の設定と月80時間超えの医師の面接指導です。

月の残業時間が60時間を超える場合

1か月60時間を超える時間外労働について、50%以上の割増賃金率の設定か労使協定の締結による代替休暇の付与、いずれかの対応が必要です。

割増賃金率50%以上については現在、中小企業への適用は猶予されていますが、2023年4月以降は適用対象となる点も注意しましょう。

残業時間が月80時間を超える場合は医師の面接指導が必要

月80時間以上の時間外労働を行い、疲労が蓄積している長時間労働者が面接指導を申し出た場合、医師の面接指導は義務となります。

研究開発業務従事者の場合は月100時間を超えて時間外・休日労働を行った者、高度プロフェッショナル制度適用者の場合は事業所にいた時間と事業所外で業務を行った時間の合計(健康管理時間)が1週間あたり40時間超えた時間が月100時間超えると、申し出がない場合でも面接指導の対象となります。

面接指導で勤務状況や疲労・ストレスの蓄積状況、メンタルヘルス面でのチェックを行い、必要な指導を行うことが産業医の役割です。

また、対象とならない場合でも脳・心臓疾患などの健康障害発症リスクが高いと考えられる労働者には面接指導を行い、労働環境の改善に努めます。

長時間労働者への面接指導では、主に以下の項目について確認します。

  1. 1.勤務の状況:労働時間、出張回数、深夜勤務、作業環境など
  2. 2.疲労の蓄積状況:仕事の負担度、自覚症状、睡眠、休養の状況など
  3. 3.その他心身の状況:現病歴、生活状況、検査所見(血圧等)など

この情報をもとに、総合的に評価・判断し、労働者への指導を行い、企業へ事後措置に関する意見を述べます。面接指導を実施した医師から必要な措置についての意見を聴取した企業は、面接指導の結果を踏まえて、就業場所の変更や作業の転換など必要な事後措置を行います。

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まとめ

今回は、36協定で定められている残業時間についての概要や長時間労働削減のためのポイントについて解説しました。労働時間が長くなると、従業員の心身の健康に悪影響が及ぶ可能性が高まります。残業が多くなりがちな企業では、労働時間削減のための策を講じると良いでしょう。

また、長時間労働の改善には産業医の役割も重要となります。産業医の面接指導で適切な措置をとり、労働者が健康に働ける職場づくりの実践につなげましょう。

公開日: 2022.04.20
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