【20年ぶりに改正】脳・心臓疾患労災認定基準の改正ポイントを解説

2021年11月19日

【20年ぶりに改正】脳・心臓疾患労災認定基準の改正ポイントを解説

2021年6月、厚生労働省は脳・心臓疾患の労災(=労働災害)認定の基準を20年ぶりに見直す方針を固めました。そして同年9月14日、見直しを行なった新しい労災認定基準に改正され、翌15日に運用が開始。「勤務時間の不規則性」や「心理的・身体的負担を伴う業務」に焦点が当てられ、以前より柔軟な労災認定ができるよう改正されました。

本記事では、20年ぶりに改正された「脳・心臓疾患労災認定基準」について、改正の背景や具体的な内容、押さえておくべきポイントを解説します。

労災認定とは

労災認定とは

そもそも労災(=労働災害)補償は雇用形態に関係なく、労働・通勤による傷病について金銭的な助成と復帰のサポートが受けられる制度です。

厚生労働省の公式HPには、「労災保険制度」について下記のように示されています。

“●労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。 ●労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。”

(労災補償 |厚生労働省)

つまり「労災認定」とは労働者の傷病について、厚生労働省が運営する「労災保険制度」が適用される傷病として認められるか否かの判断を指します。

認定基準は傷病によってもさまざまですが、今回は「脳・心臓疾患」について改正が行なわれました。

なぜこのタイミングで「脳・心臓疾患」の労災認定基準が改正されたのでしょうか。その答えは、テレワークや副業の普及など、ここ数年で働き方の多様化や職場環境が大きく変化した点にあります。

なお「脳・心臓疾患」においては、下記3つの認定要件が設けられています。

・長期間の過重労働
・異常な出来事
・短期間の過重労働

厚生労働省が定めている3つの認定要件に基づいて、今回の改正で維持された部分と、変更・新たに追加された対象疾病について、次の項目で解説します。

脳・心臓疾患における労災認定基準の改正ポイント

脳・心臓疾患における労災認定基準の改正ポイント

今回の労災認定基準の改正には、押さえておくべきポイントが4つあります。それぞれ確認しましょう。

労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価

大きな改正ポイントとして、「長期間の過重業務」の評価について労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価することが明確化されました。

“【改正前】 発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できることを示していました。 【改正後】 上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。”

(脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント)

上記を要約すると、1か月の時間外労働が80時間に至らなくても、労働者に多大な負担がかかっていれば、それを考慮して判断するようになったということです。負荷要因については次の項目で解説します。

労働時間以外の負荷要因を見直し

前述した「労働時間以外の負荷要因」についても、今回の改正で項目が見直されました。

(脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント)

2021年9月の改正では、表の赤字部分が新たに追加され、単に労働時間や業務に関する面のみで判断するのでなく、心理的・身体的負担も考慮するよう明記されました。たとえ労働基準を遵守していたとしても、製造業や介護職、輸送業を始めとする一部の業種では、日常的に大きな精神ストレスを抱えている可能性が高くなります。今回の項目追加によって、日常的に大きな精神ストレスを抱えやすい業種に就いている労働者に対し、柔軟に補償の対象として判断できるようになりました。

短期間の過重業務、異常な出来事の関連性を明確化

また、認定要件の「短期間の過重業務」と「異常な出来事」の2つについても改正され、漠然としていた基準を、例を挙げて明確化しています。

(脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント)

例を挙げることで、労災認定に値するかどうかについて、より判断しやすくなったほか、労働者自身も労災について気づきやすくなったというメリットがあります。

対象疾病に「重篤な心不全」を追加

さらに、労災認定の疾病について1点項目が追加されました。

不整脈が原因とされる心不全症状などは「心停止(心臓性突然死を含む)」に含められていましたが、今回の改正では、心不全は心停止とは異なる病態と示され、新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加されました。「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含まれます。

2021年現在「脳・心臓疾患の労災認定」で扱われる疾病は下記の通りです。

〈脳血管疾患〉
・脳内出血(脳出血)
・くも膜下出血
・脳梗塞
・高血圧性脳症

〈虚血性心疾患等〉
・心筋梗塞
・狭心症
・心停止(心臓性突然死を含む)
・解離性大動脈瘤
・重篤な心不全

改正を踏まえて企業が取るべき対応

改正を踏まえて企業が取るべき対応

ここから、脳・心臓疾患の労災認定基準の改正内容を踏まえて、企業が取るべき対応について2点ご紹介します。

従業員の労働時間の見直し

1点目は、従業員の労働時間管理の徹底です。労災認定の判断材料となる時間外労働の時間には変更ないものの、80時間に近い時間外労働量であれば他の要因を考慮し労災認定される可能性が高まりました。

従業員の勤怠状況の把握

2点目は、労働時間にあわせて「休日のない連続勤務」や「勤務間インターバルが短い業務」となっていないか把握しておく必要があります。人事担当者や経営者は、数字上だけでなく、現場の労働状況を今一度確認しましょう。

まとめ

今回改正された注目のトピックは、「勤務時間の不規則性」や「心理的・身体的負担を伴う業務」を総合的に考慮して判断が必要になった点です。

常に従業員の勤務状況を把握し、長時間労働以外に「勤務時間の不規則性」や「心理的・身体的負担を伴う業務」が伴っていないか把握できる体制づくりを検討しましょう。

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