企業が取り組むべきメンタルヘルス対策の内容と導入のメリット

2021年09月24日

会話を楽しむビジネスマンたち

「メンタルヘルス」とは、「心の健康」を意味します。 長引くコロナ禍のストレスも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人はますます増加しています。そのため企業は、従業員のメンタルヘルス対策(=心の健康促進のための措置)が極めて重要な課題と言えます。

また近年では、従業員に対するメンタルヘルス対策が企業を評価するひとつの指標にもなっており、さらにメンタルヘルス対策に注目が集まっています。 そこでこの記事では、メンタルヘルス対策の基本的な考え方から企業が導入するメリットと注意点、導入事例までを網羅してご紹介します。

メンタルヘルスケアの基本的な考え方

ビジネスシーンで活躍する経営層

厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持促進のための指針~」では、企業がメンタルヘルス対策を積極的に推進するためには、「3つの予防」と「4つのケア」が重要としています。その概要を詳しく見ていきましょう。

一次予防から三次予防まで

企業がメンタルヘルス対策を確実に推進・実施するには、「一次予防」から「三次予防」まで、3つの予防が円滑に行われる必要があります。 まず、「一次予防」は、メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的として行うものです。次に、「二次予防」は、メンタルヘルス不調を早期に発見し適切な措置を行うことです。最後に「三次予防」は、メンタル不調となった労働者の職場復帰支援などを行うことを目指しています。 また、一次予防から三次予防まで正しく遂行するために、「4つのケア」を効果的に推進する必要があります。

「4つのケア」

「4つのケア」は、企業がメンタルヘルス対策を効果的かつ適切に進めるための基盤となります。これらのケアを計画的に、継続して行うことが、健康な職場づくりを推進します。

・セルフケア

従業員が自らストレスを予防し、ストレスに気づき、ストレスを対処することをセルフケアと呼びます。企業は、情報提供や研修などを通して、従業員が上記を行えるようサポートしなくてはなりません。

・ライン(管理監督者)によるケア

管理監督者(=上司)は、職場環境を十分に把握した上で、部下である従業員の相談に対応し、ストレス要因を把握して改善する役割を担います。例えば、職場環境の是正もそのひとつです。そのほか、休職者の職場復帰の支援なども行います。ケアを遂行するに当たっては、部下の僅かな変化をいち早く察するスキルが求められます。

・事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医をはじめとした事業場内産業保健スタッフは、従業員が「セルフケア」、管理監督者が「ライン(管理監督者)によるケア」を効率的に行えるように指導・支援を行います。また、メンタルヘルスケア関連の研修等の企画立案・実施、後述の「事業場外資源」との連携やその窓口なども担います。

・事業場外資源によるケア

事業場外資源とは、労災病院、産業保険指導センターなど、メンタルヘルスケアの専門的な知識を有する外部の機関やサービス、専門家などを指します。それらを活用した従業員への支援が「事業場外資源によるケア」です。事業場外資源は、社内に相談内容を知られたくない従業員のケアをはじめ、企業に対してメンタルヘルス対策のより専門的な知識や情報の提供などを行います。

メンタルヘルス対策を行うメリット

部下と面談を行うマネージャー

企業が従業員に対して適切なメンタルヘルス対策を行い、従業員の良好なメンタルヘルスを保つことは、従業員のみならず企業にも大きなメリットを施します。

従業員の生産性向上につながる

職場環境の改善や人員配置の見直しなど、従業員が働きやすい環境を整えるのも、企業が行うメンタルヘルス対策のひとつです。職場環境の改善や人員配置の見直しなどの施策は、従業員の仕事に対するモチベーションの向上や仕事における生産性向上など、好循環のサイクルを創出します。これは、企業の安定的な収益にも直結します。

経営リスクマネジメントを行うことができる

従業員のメンタルヘルスが良好であれば、集中力や判断力が正常に機能するため、業務上の事故やトラブルが発生しづらくなります。一方で、メンタルヘルス不調に対する企業の対応が不十分な場合、労災請求や民事訴訟へ繋がる可能性もあります。メンタルヘルス対策は、経営へのリスクも未然に防ぐ機能も併せ持ちます。

企業の健康経営の促進になる

経済産業省「健康経営優良法人2021(大規模法人部門)認定要件」「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定要件」においては、どちらにおいてもメンタルヘルスケア対策が認定要件の指標とされています。つまり、メンタルヘルス対策を講じることで健康経営優良法人認定獲得の一歩に繋がります。

「健康経営優良法人」に認定されると、政府が認めるホワイト企業とみなされ、企業のブランドイメージの向上や就職・転職市場で優秀な人材獲得に期待出来ます。

医療費の削減が期待できる

メンタルケアの不調が原因で従業員が休職すると、企業はその通院費や入院費を負担しなければいけません。従業員が健康であればその負担は不要であり、医療費の削減に繋がります。

企業が実践しているメンタルヘルス対策事例

企業が従業員のメンタルヘルス対策として実践している取り組みにはどんなものがあるのでしょうか。メンタルヘルス対策に注力している企業では、下記の3つを導入しているケースが多いようです。

ラインケア

ラインケアは、管理監督者(部長・課長などの直属の上司)が部下に対して行うメンタルヘルス対策です。厚生労働省の「職場における心の健康づくり」で掲げる「4つのケア」のひとつであり、管理監督者は部下からの相談対応やメンタルヘルス不調により休職していた部下の職場復帰支援、職場環境の把握と改善などを行います。

ラインケアに関する詳しい内容はこちら
ラインケアとは?職場のメンタルヘルス対策として有効的な施策

セルフケア研修

従業員が自身のストレスのコントロール方法を学ぶための研修です。ストレスのメカニズムを理解することで、ストレス対処につなげます。企業のメンタルヘルスケアの2軸のひとつであり(一方は管理監督者を対象としたラインケア研修)、従業員全員を対象に行います。研修方法は公開型、講師派遣型が一般的ですが、e-ラーニングを取り入れる企業も増えています。

精神科産業医の配置

日本では、常時50人以上の労働者を雇用している事業場において産業医の選任義務がありますが、メンタルヘルスに関する専門知識が備わっていない「名ばかり産業医」も散見しているのが実情です。職場を健全に保つためにも、メンタルヘルスの専門家である精神科の医師を産業医として配置し、従業員のメンタルの不調をいち早く対処できるような体制を整える必要があります。

メンタルヘルス対策の留意事項

部下の話を聞くマネージャー

企業のメンタルヘルス対策の普及にあたり、厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持促進のための指針~」では、下記を留意事項として掲げています。

労働者の個人情報の保護への配慮

個人のメンタルヘルス問題は、好んで他人に知ってほしいというものではありません。そこで、従業員が安心してメンタルヘルス対策に取り組めるよう、企業および関係者は、従業員の健康情報を含めた個人情報をしっかりと保護する必要があります。

心の健康問題の特性

心の健康については、本人から状況を聞きだすしかない上、その客観的な指標がないため、他人が状況を把握・評価するには困難を極めます。また、メンタルヘルス不調の過程にも個人差があるため、一人ひとりに寄り添ったサポートを行わなくてはなりません。

人事労務管理との関係

心の健康不調は、職場配置や人事異動など、人事労務管理と密接に関係する要因によって引き起こされる確率が高い傾向にあります。そのため、人事労務管理スタッフとの連携が必要不可欠です。

まとめ

企業のメンタルヘルス対策は決して一朝一夕で成り立つわけではありません。それでも企業は、社会的責任のひとつとして、企業の持続的成長を支えるメンタルヘルス対策に真摯に向き合っていく必要があります。

特に中小企業にとっては、従業員のメンタルヘルス対策は難解であり、目を背けたくなるでしょう。しかし、メンタルヘルス対策には、従業員の仕事に対する生産性やモチベーションの向上などが期待できるほか、企業価値の向上(ブランディング)など、企業にとってもさまざまなメリットがあります。また、メンタルヘルス対策は、政府が推進する企業の「健康経営」への足がかりとして大変有効なステップです。

従業員・企業・社会の共存共栄を実現するメンタルヘルス対策、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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