2017年度からスタートした健康経営優良法人認定は、年度を追うごとに申請企業数は増加しており、近年多くの企業から関心が集まっている制度です。
健康経営優良法人に認定されると豊富なメリットがあるため、今年度(2025年度)の認定を是非とも目指してみましょう。
当記事では、健康経営優良法人認定の制度概要や申請フロー、認定のメリットや近年の傾向について解説します。
2017年度からスタートした健康経営優良法人認定は、年度を追うごとに申請企業数は増加しており、近年多くの企業から関心が集まっている制度です。
健康経営優良法人に認定されると豊富なメリットがあるため、今年度(2025年度)の認定を是非とも目指してみましょう。
当記事では、健康経営優良法人認定の制度概要や申請フロー、認定のメリットや近年の傾向について解説します。
健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省によって創設された、健康経営®に取り組む企業を評価・認定する制度です。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点のもと戦略的に実施する取り組みの総称です。
認定制度は「その企業が健康経営に取り組んでいるかどうか」という客観的な尺度になるため、認定取得企業は社内外からの社会的信頼を得ることが可能です。
制度の目的は、各企業の積極的な取り組みを促し、従業員の健康促進や生産性向上などによる社会全体の活性化に繋げることにあります。
健康経営優良法人の認定基準には、以下の5つの大項目があります。
上記の各大項目に細かく評価項目(※)が設けられており、認定を受けるために必須の要件を満たさなければなりません。
また当制度は、組織の規模によって「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つに分かれています。
一般的な企業を例にすると、部門の区分は以下の通りです。
業種 |
大規模法人部門 |
中小規模法人部門(いずれかを満たすと該当) |
|
従業員数 |
従業員数 |
資本金または出資金額 |
|
卸売業 |
101人以上 |
1~100人 |
1億円以下 |
小売業 |
51人以上 |
1~50人 |
5,000万円以下 |
サービス業 |
101人以上 |
1~100人 |
5,000万円以下 |
製造業その他 |
301人以上 |
1~300人 |
3億円以下 |
2つの部門では認定要件や申請から認定までのプロセスが若干異なるため、それぞれの違いついて以下に解説していきます。
※評価項目は年度によって異なる場合があります。
▼参考資料はコチラ
ACTION!健康経営|ポータルサイト「申請について」
大規模法人部門の認定要件には、自社の垣根を超えた健康経営普及への取り組みや、産業医・保健師との関与、保険者(健保組合など)との協議・連携といった独自の内容があります。
認定を受けるうえで、CSR(企業の社会的責任)の観点と、それを担保する組織体制が前提となるでしょう。
申請から認定までのプロセスは下記の通りです。
認定された企業のうち、上位500社は「ホワイト500」の称号が与えられます。
中小法人部門の認定要件は、経営者自身の健診受診や求めに応じた40歳以上の従業員の健診データ提供などの独自要件に加え、大規模法人部門よりも必須となる認定要件数が緩和されているのが特徴です。
申請から認定までのプロセスは下記の通りです。
上記プロセス1の前提として、加入している保険者(全国健康保険協会および健康保険組合)が健康宣言しているかどうかを事前に確認しておきましょう。
もし、保険者が健康経営宣言事業を実施していない場合は、自治体が実施するものへ参加することで代替が可能で、保険者・自治体のどちらも実施していない場合は、企業独自の健康宣言で代替可能とされています。
認定された企業のうち、上位500社は「ブライト500」の称号が与えられます。
健康経営優良法人の認定を受けることは、社内外から「健康経営に取り組む組織」という評価を得るのと同義です。
健康経営への取り組みそのものや、それに対する評価を受けることでさまざまなメリットがあります。
大きく4つの観点に分けられるため、それぞれ見ていきましょう。
健康経営の推進は、従業員の健康増進や労働環境の改善、福祉を重視する企業文化の醸成などさまざまなメリットを生み出します。
これによって、従業員は心身ともに健康で、かつ安心して働けるようになり、モチベーションや満足度が向上する「ホワイトな」環境が整備されます。
結果として、健康問題や労働環境への不満などを原因とした離職を防止でき、離職率の低下を期待できるのです。
先ほどの「離職率が低くなる」メリットは、健康経営の社内向けの側面です。
一方で、同様の効果が社外向けにも存在します。
自社が健康経営優良法人の認定を受けると、上述した「ホワイトな」環境が整備された組織であると社外へアピールできるようになります。
したがって求職者が増えやすくなり、優秀な人材の確保・採用につながるでしょう。
心身ともに健康な従業員は、業務に対する集中力や生産性が高まる傾向があると言われています。
そのため、健康経営の推進は、優秀な人材の定着だけでなく、従業員全体のパフォーマンスの底上げにもつながります。
健康経営優良法人は公的な認定制度であるため、認定マークや称号を持っていると企業イメージや社会的信頼性が高まります。
そのため、ブランド価値の向上による競争力の強化や顧客に対する信頼感の向上が期待できるでしょう。
投資家や株主からの評価にもつながるため、株価との相関があれば、資金調達の面でもメリットがあるかもしれません。
ひとつ補足として、認定への取り組みには時間がかかる点について留意しておかなければなりません。
健康経営に取り組むためには、従来の企業文化や風土を変革していく必要が生じる場合もあり、経営陣の一声ですぐに組織が変わるとは限りません。
計画の策定と実行、そしてフィードバックを繰り返していくため、持続的な努力と時間は不可欠です。
時間がかかるという理由で頓挫せず、長期的な視野で認定取得に向けた取り組みを行うのが望ましいでしょう。
▼参考資料はコチラ
健康経営の推進について(経済産業省)
健康経営優良法人に設定される認定要件は多岐に渡り、かつ年度ごとに少しずつ変化していきます。
そのため、年度ごとの傾向をある程度掴んでおくのが重要になってくるでしょう。
2024年6月現在では、健康経営優良法人2025の認定要件は発表されていません。
そこで、昨年2024年度の傾向と、現時点で予想される2025年度の傾向について解説します。
2024年度では、大規模法人部門と中小規模法人部門の双方で申請社数と認定数が前年比で増加しています。
制度が始まって以降は毎年増加し続けているため、例年通りであれば来年度はさらに増加するでしょう。
引用:健康・医療新産業協議会 第11回健康投資WG 事務局説明資料
大規模法人部門で実施する健康経営度調査については、2024年度の申請から以下のような変更がありました。
2024年度からは育児・介護への両立支援、女性の健康課題への対応、または花粉症や眼精疲労といった社会課題への対応についての項目が追加されています。
また、特定健診や特定保健指導の実施率や、業務パフォーマンス指標と測定方法を開示しているかどうかの調査も行われています。
これらの項目についても、今年度も引き続き取り組むことが求められると思われます。
2025年度以降の認定制度については、すでに経産省から公表されている事務局説明資料から傾向を読むことができます。
当資料では次年度の健康経営の目指すべき姿について言及があり、具体的には以下の3点が示されました。
健康経営の目指すべき姿を実現するために、以下のような内容が検討されています。
健康経営の可視化のために、PHR(Personal Health Record)を活用した取組みを支持し、健診情報等の電子閲覧環境整備を問うQ44が拡充される可能性があります。さらに、PHRを実際に活用するための具体的な取り組みについても別途アンケートで深堀することが検討されています。
健康経営を実践する企業が、自社が抱える健康課題に対し、エビデンスに基づいたコンサルティングなどのサービスを受けられるような環境整備が検討されていることが言及されています。
海外労働者への対応について、今までは自由記述による取組調査を行っていましたが、取組内容をより具体的に調査するために選択肢化し、アンケート形式で調査することが検討されています。
小規模法人への健康経営優良法人制度の申請実態を調査した結果、リソース不足、健康法人優良法人申請書の解釈が障壁となり、普及が進まない現状がわかりました。
そのため、健康経営への理解を深めてもらうための広報活動を強化したうえで、項目条件の見直しが検討されています。
常時使用しない非正規社員等については、健康経営度調査範囲に含めることが任意でしたが、非正社員も対象範囲に含め、熱心に健康経営に取り組む企業がみられました。
そのことを踏まえ、健康経営度調査において、対象範囲に非正規社員を含めている法人を評価することが検討されています。
健康経営優良法人に認定されると、社内外に対して豊富なメリットがあります。
認定までの過程で健康経営へ取り組むこと自体にも大きな価値があるため、是非とも認定取得を目指しましょう。
ただし中小法人部門での申請は、調査票の回答などを行う担当者(人事総務の担当者や衛生管理担当者など)へ負荷がかかる可能性があります。
認定申請に不安がある担当者の方は、コンサルティングなどの健康経営サポートサービスを利用しましょう。