産業保健師とは
産業保健師が働く場所は企業です。保健師は国家資格である看護師資格に加えて、保健師資格の取得が必要です。保健師の資格だけでも産業保健師の仕事は可能ですが、なかには産業保健に特化した資格として、第一種(第二種)衛生管理者、労働衛生コンサルタント、社会保険労務士などの国家資格を保有している産業保健師もいます。
日本の産業保健師の雇用状況は、令和2(2020)年度の労働者健康安全機構の調査によると事業場の規模により採用状況は異なるものの、社員500人以上の規模の大手企業では47%程度、100~299人規模の企業では14.2%程度という結果でした。
また雇用形態は事業場の保健師は正社員・正職員が最も多く、その他臨時や契約職員、派遣・出向、請負等の雇用形態もあることがこの調査でわかりました。
▼参考資料はコチラ
独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS):令和2年度 事業場における保健師・看護師の活動実態に関する調査報告書,2021.
健康診断の実施・特定保健指導
健康診断は労働安全衛生法により実施が義務付けられています。また、業種によって対象者や種類、実施時期などが決められています。産業保健師がいれば、健康診断の内容や日程調整、必要な受診者の抽出などについて相談が可能です。また健康診断結果によって、必要な保健指導や健康相談、産業医面談などにつなげることができます。
たとえば、40〜74歳の被保険者を対象として行われる特定健康診査(特定健診)で生活習慣病の発症リスクが高いと判定された場合、「積極的支援」、「動機付け支援」、「情報提供」の3つの区分の保健指導を行うことができます。40代というと企業では管理職や重要なポストで仕事をしている年齢層かと思いますが、忙しくて保健指導を受ける時間がないという人もいます。社内に産業保健師がいれば社内で実施することも可能で、忙しい人の健康管理を行うことができるのです。
従業員の健康相談
健康診断後の相談や、一般的な健康相談も対応してもらえます。とくに健康診断の結果を受けての健康相談は、タイムリーに行うことで病気の予防や早期発見にも役立ちます。単に健康診断を受けるだけではなく、その結果を従業員の健康管理へと発展させることが可能です。
健康診断後の面談や健康相談は、産業医も可能ですが、なかには医師との面談はハードルが高いと感じてしまう人もいます。そのような人に対しても産業保健師が相談者と産業医の架け橋になることができます。企業に産業保健師がいることで、健診後の継続的なフォローアップができるのもメリットの一つです。
従業員への健康教育・研修の実施
従業員向けに病気の予防や知識、労働災害などについて研修を計画し実施することもあります。産業保健に特化している保健師のため、働くうえで問題になる病気や、衛生管理、禁煙など幅広く専門知識を伝えることができるでしょう。
ストレスチェックの実施・分析
昨今、産業保健師や産業医に期待する点として、メンタルヘルス対策やその強化をあげる企業が増えています。また、労働者が50人以上の事業場では2015年からストレスチェックが企業に義務づけられるようになりました。ストレスチェックとはストレスに関する質問票に従業員が回答し、その結果を集計・分析することで、職場におけるストレス要因や個人のストレス反応などを調べる検査です。1年に1回定期的に実施することが義務付けられています。このストレスチェックですが、産業医が実施者になることが多いですが、産業保健師も研修を受ければ実施者になることができます。また個人的な分析だけではなく集団分析や高ストレス者の産業医面談までの架け橋や面談後のサポートなどあらゆるポイントで産業保健師が活躍します。