5月病と適応障害

2021年04月06日【監修】ワーカーズドクターズ 産業医/精神科医 清水杏里 先生

“5月病”という名前を聞いたことがある方は多いと思います。しかしどのような症状が「5月病」で、どこからが精神疾患なのか、病院には行った方がいいのか、ということを詳しくご存じの方は少ないと思います。

5月病とは

 4月から職場環境が新しくなり、心機一転意気
込んでいた方が、5月になると「やる気が出な
い」「気分が落ち込む」「考えがまとまらない」
「職場に行きたくない」など、様々な症状を訴
えることがあります。
 「5月病」という医学用語はなく、医療機関
では「適応障害」という診断名がつくことが多
いです。

適応障害とは


 ある特定のストレスがあって、それに反応して症状が出現する事が特徴です。
 ストレスに対して予期される反応を超えて症状を呈する場合に「適応障害」と診断されます。
 有病率は2 – 8%で、女性が男性の2倍多く、中でも独身女性が最もリスクが高いと言われています。
 ストレスの原因として挙げられるのは、新たな環境への転居や夫婦間の問題や離婚、経済問題が多いです。
 職場では昇進などの環境変化も原因となりうるため注意が必要です。
 また、同程度のストレスに対しても症状が現れる人と現れない人がいることから、個人のストレスに対する脆弱性が大きく関わっていると言われています。

症状


 落ち込みや不安、心配が多いですが、倦怠感や集中力の低下も認めます。
 まれに、過剰飲酒や突発的な攻撃的行動を行う方もいます。
 遅刻や欠勤、引きこもりなどの症状も挙げられます。


 診断基準の特徴を抜粋すると


 ストレスが出現してから1カ月以内に感情や
 行動の症状が現れる
 ストレスに不釣り合いな程の著しい苦痛
 社会的、職業的な機能に重大な障害が出現する
 ストレスがなくなると速やかに改善する
 (通常6カ月以内)

 ストレスがない状態では元気に過ごすことが出来るので、
休日は遊びに行ったり、休職中に旅行に出かけてしまったり
します。
 そのため、「嘘をついてずる休みをしている」「“甘え”
ではないのか」などと思われてしまいます。

治療法


 ストレスから離れて休養することが重要です。
 産業医と面談し、可能であれば人事異動や配置転換の考慮が必要です。
 ストレスが取り除けないか、もしくは時間経過で解決されないものであれば、精神療法によってストレスへの耐性をあげることが予防的にも重要になります。

受診の目安


 気分の落ち込みや不安が強く、夜眠れない、急に涙が出るなどの症状があれば産業医に相談したり精神科を受診することが望ましいです。
 精神科ではご本人と相談のうえで産業医と連携して、休職や異動、配置転換を考慮したり、ストレスに適応できるようになるために精神療法を行います。
 内服薬は不安などの症状に対して一時的に使うことがあります。

5月病・適応障害を防ぐために


 職場環境のストレスの強弱に加え、それ以上にご本人の「ストレスに対する脆弱性」が関与しているといわれています。
 ストレスへの対処法(ストレスコーピング)を考えることで、発症を防ぐことが出来ます。

 ストレスコーピングの方法は、大きく以下の2つに分けられます。

問題焦点コーピング:ストレス自体を変化させて解決を図ろうとする。
 (例:状況に直接働きかけて問題を解決する、異動や配置転換等)
情動焦点コーピング:ストレスに対する考え方や感じ方を変えようとする。
 (例:考え方や感じ方を変える、職場の人や友人に相談する、リラックスする、
 ストレスに対する気晴らしをリストアップして自分に合った方法を見つける)

 <参考文献>
カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5 診断基準の臨床への展開(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
ICD-10 精神および行動の障害DCR研究用診断基準(医学書院)
e-ヘルスネット ストレスコーピング
  https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-068.html(厚生労働省)