36協定とは?長時間労働について法的な観点から解説

2022年04月20日

政府によって各業界の働き方改革が推進され、長時間労働の削減が企業に求められています。脳・心臓疾患の発症にも影響を及ぼす長時間労働の予防は、従業員の健康を守り労働状況を改善するだけでなく、企業の社会的信用を守ることにもつながるものです。企業として正しい対策ができるよう、国が定める規定についても十分に把握する必要があります。

長時間労働に関する法律や規定の中でも、今回の記事では36協定について解説していきます。

36協定とは?

36(サブロク)協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定を指します。正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」と呼ばれています。

労働基準法により定められている法定労働時間は、1日8時間・1週間40時間以内です。これを超えて従業員に時間外労働をさせる場合、従業員との36協定締結と所轄労働基準監督署長へ36協定届の提出が必要になります。

企業が届出をしないまま従業員に時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるため注意が必要です。

36協定と長時間労働の重要ポイント

法定労働時間を超えた時間外労働をさせる場合に重要な36協定について、締結前にルールや特例なども把握しておくとスムーズです。

以下で36協定に関する重要ポイントを詳しく解説していきます。

36協定で定める残業時間の上限

36協定の締結の際、1日・1か月・1年あたりの時間外労働の上限時間の設定を行います。ここで設定できる残業時間の上限は月45時間・年360時間です。また、働き方改革関連法案が改正されて以降、この上限には法的強制力があります。上限を超えて残業をさせた場合には罰則が課せられるため注意が必要です。

過去の業務量や残業時間を参考にしつつ、上限を超えないための対策が必要です。

残業時間の延長をしたい場合

36協定で定められている残業時間の上限以上の労働がどうしても必要な場合、特別条項付きの36協定の締結も可能です。

しかし、「特別条項」を付けた36協定にもいくつか規定があります。

残業時間の延長は突発的な業務が生じた場合のみ可能で、延長できる回数は1年で最大6か月です。時間についても1か月で100時間未満(休日労働含む)、2~6か月平均80時間以内(休日労働含む)、1年720時間以内(休日労働除く)など制限があります。

延長のための手続きや、健康・福祉確保措置についても定める必要があるほか、割増賃金率についても法定割増賃金率25%を上回るよう努めなければいけません。

また、1か月60時間を超える時間外労働について、50%以上の割増賃金率の設定か労使協定の締結による代替休暇の付与、いずれかの対応が必要です。

現在中小企業は適用が猶予されていますが、2023年4月以降は適用対象となる点も注意しましょう。

36協定届の新様式、何が変わった?

所轄労働基準監督署長への提出が求められている36協定届について、2021年4月から新様式となりました。

従来の36協定届との主な違いは3つです。以下で確認しましょう。

押印・署名の廃止

今回の新様式の一つ目の変更点は、36協定届の押印・署名の廃止です。これにより、手続きが簡易化されます。

しかし、協定届が協定書を兼ねている場合は押印・署名が必要となります。多くの企業では協定届と協定書を兼用しているため、注意しましょう。

協定当事者のチェックボックス新設

36協定の適正な締結のため、労働代表者についてのチェックボックスが新設されました。今回チェックボックスがついた労働代表者の要件は3つです。

  1. 1.管理監督者ではない
  2. 2.民主的な方法で選出された者である
  3. 3.36協定使用者の意向で選出された者ではない

この要件を満たしていない労働代表者と締結した36協定は無効となります。

電子申請も変化

今回の変更により、事業所ごとに労働代表者が異なる場合でもe-Gov電子申請により本社一括の提出が可能になりました。e-Gov電子申請により本社一括届出を行う場合は、電子署名や電子証明書の添付も不要になるため便利です。

ただし郵送・窓口による手続きでは、事業所ごとに労働者が異なる場合は本社一括届出ができません。一括で届出を行いたい場合は電子申請に切り替えると良いでしょう。

長時間労働削減のためのポイント

各業界で働き方改革が進んでおり、決められた労働時間内で効率よく業務を進めることが求められています。

そのためには、企業全体で業務効率化に取り組む必要があるでしょう。ここでは、労働時間削減のために企業が意識すべきポイントを解説します。

労働時間の管理方法の見直し

長時間労働の予防のためには、労働時間の適正管理が非常に重要になります。正確な労働時間を把握して自社に適した施策を講じるため、労働時間の管理の徹底が効果的です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けてテレワークが普及して以降、従業員の労働状況の把握が難しくなっています。

テレワーク下の労働時間の計算のため、ログイン状況が記録されるチャットアプリの活用による始業時間・終業時間の把握、ネットワーク機能付きのタイムレコーダーの導入による労働時間の計算などが多くの企業で採用されているようです。自社に合った方法で従業員の労働状況を確認し、長時間労働を減らしていきましょう。

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職場環境の改善

労働時間を管理する制度が整っていたとしても、サービス残業が文化として残っている、人事評価に影響を及ぼす企業も多くあるのが現実です。労働時間管理の方法だけでなく、働く環境の改善も長時間労働の削減につながります。

人事評価制度の見直しや、職場の雰囲気の改善などを率先して行い、長時間労働の予防に努めると良いでしょう。

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過酷な労働環境改善のために役立つ産業医

長時間労働の予防・改善のため、産業医の活用を進めている企業もあります。以下では、長時間労働に関する産業医の役割について確認しましょう。

産業医による面接指導

月80時間以上の時間外労働を行い、疲労が蓄積している長時間労働者が面接指導を申し出た場合、医師の面接指導は義務となります。

研究開発業務従事者の場合は月100時間を超えて時間外・休日労働を行った者、高度プロフェッショナル制度適用者の場合は事業所にいた時間と事業所外で業務を行った時間の合計(健康管理時間)が1週間あたり40時間超えた時間が月100時間超えると、申し出がない場合でも面接指導の対象となります。

面接指導で勤務状況や疲労・ストレスの蓄積状況、メンタルヘルス面でのチェックを行い、必要な指導を行うことが産業医の役割です。

また、対象とならない場合でも脳・心臓疾患などの健康障害発症リスクが高いと考えられる労働者には面接指導を行い、労働環境の改善に努めます。

長時間労働者への面接指導では、主に以下の項目について確認します。

  1. 1.勤務の状況:労働時間、出張回数、深夜勤務、作業環境など
  2. 2.疲労の蓄積状況:仕事の負担度、自覚症状、睡眠、休養の状況など
  3. 3.その他心身の状況:現病歴、生活状況、検査所見(血圧等)など

この情報をもとに、総合的に評価・判断し、労働者への指導を行い、企業へ事後措置に関する意見を述べます。面接指導を実施した医師から必要な措置についての意見を聴取した企業は、面接指導の結果を踏まえて、就業場所の変更や作業の転換など必要な事後措置を行います。

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まとめ

今回は、36協定の概要や長時間労働削減のためのポイントについて解説しました。労働時間が長くなると、従業員の心身の健康に悪影響が及ぶ可能性が高まります。残業が多くなりがちな企業では、労働時間削減のための策を講じると良いでしょう。

また、長時間労働の改善には産業医の役割も重要となります。産業医の面接指導で適切な措置をとり、労働者が健康に働ける職場づくりの実践につなげましょう。

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