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カスハラ対策義務化で何をする?指針の10項目と実務の進め方を解説

  • 産業保健
更新日: 2026.10.16
カスハラ対策義務化で何をする?指針の10項目と実務の進め方を解説
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

「カスハラ対策の義務化で、結局どこまでやればいいのか」。調べると、方針の明確化、相談窓口の設置、発生時の対応といった項目が並びます。ただ、項目を眺めるだけでは、自社に何が足りないかは見えてきません。

厚生労働省は、事業主が講ずべき措置を5つの柱・計10項目として整理しました。

本記事では、10項目の点検から現場の動き方までを実務の順に説明します。条文や行政対応など、法的な確認事項をまとめました。

  • ● 最初に決めるのは、相談を受ける人と、現場に代わって判断する人です。
  • ● 危険があるときは安全確保を優先し、事実確認の完了を待ちません。
  • ● 進め方は選べますが、必要な措置は10項目すべてに対応します。

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10月29日(木)11:00~12:00に、オンラインセミナー「10月義務化!これからのカスハラ対策~現場をすり減らさない解決志向と5つのステップ~」を開催します。

産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)の平野井啓一先生が、カスハラの定義から、現場で使える対応5ステップまでを解説します。申込締切は10月28日(水)12:00です。

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「10月義務化!これからのカスハラ対策 ~現場をすり減らさない解決志向と5つのステップ~」

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カスハラ対策義務化の対象と施行日

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※AI生成画像

施行日は2026年(令和8年)10月1日です。対象は労働者を雇用する事業主で、民間企業には企業規模や業種による猶予がありません。中小企業だから後回しでよい、という扱いは設けられていません。

保護されるのは、事業主が雇用する労働者の全員です。パーチタイム労働者や契約社員などの費正規雇用労働者、派遣労働者も含まれます。派遣先も、自社が雇用する労働者と同じように配慮と措置を講じます。

注意点:顧客対応がない部署も対象になる

指針でいう「顧客等」は、店頭で応対する顧客だけではありません。取引の相手方や取引先の担当者、施設の利用者とその家族、施設の近隣住民、これから利用する可能性がある人も含まれます。電話やSNS上の言動も対象です。

厚労省Q&Aでは、顧客対応が発生しない部署の労働者にも、方針と対処の内容を周知する必要があるとしています。所属部署や雇用形態は問いません。周知の範囲を接客担当に限ると、それだけで措置が足りないと評価される余地があります。

参考:厚生労働省:カスタマーハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)

参考:厚生労働省:ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(解釈Q&A)

何から始めるか。10項目で自社の不足を確かめる

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※AI生成画像

運用通達は、指針が挙げる10項目について、企業の規模や職場の状況を問わず必ず講じなければならないとしています。次の表は、必要な措置の一覧です。実施方法の例を並べたものではありません。方法は自社の業種や体制に合わせて選べますが、どれかを選べばよいというものではなく、10項目すべてに対応します。

必要な措置(要約) 自社で確かめること
①保護方針の明確かと周知・啓発 従業員を守る方針を、誰がどの方法で伝えたか
②カスハラの内容と対処内容の周知 報告・交代・通報などの手順が、自社の現場に合うか
③相談窓口を定めて周知 担当者と連絡方法を、従業員が知っているか
④担当者が適切に対応できる体制 判断が難しい相談も受け、必要な部署へつなげるか
⑤迅速かつ適切に対応できる体制 聞き取りの担当、確認する記録、共有先が決まっているか
⑥被害者への配慮のための措置 担当交代・勤務調整・健康面の支援を、誰が検討するか
⑦再発防止の措置 事実を確認できない場合も含め、方針や手順を見直すか
⑧特に悪質な事案への対処 対処方針を定めて周知し、実行する体制があるか
⑨プライバシー保護と周知 記録の保管先・閲覧者・共有範囲を定めているか
⑩不利益取扱いをしない旨の定めと周知 相談や確認への協力を理由に不利益に扱わないと伝わるか

進め方の例:着手の順序を決める

  • 1.棚卸し:今ある方針・規定・窓口を10項目に照らし、足りない対応を洗い出す
  • 2.整備:不足する項目ごとに担当者を決め、現場が使える連絡先と対応手順を整える
  • 3.周知と確認:従業員へ伝え、想定事案を使って連絡・判断・支援がつながるかを確認

1から3は準備の進め方の例で、法令が定める工程ではありません。未対応の項目は必要に応じて並行して整えます。段階的に進めることが、未対応の項目を先送りしてよいという意味にはなりません。

参考:厚生労働省:運用通達(雇均発0424第2号)

方針と相談先を、現場が使える形にする(①~④)

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※AI生成画像

最初に作るのは、カスハラには毅然と対応し従業員を保護するという方針と、何がカスハラに当たり、起きたときにどう動くかという対処の内容です。いずれも管理監督者を含むすべての従業員に周知します。

方針は、現場の行動まで書く

「困ったら責任者へ報告する」「可能な限り一人で対応させない」「必要に応じて担当者を交代する」といった行動につなげます。配属直後の人でも、次に誰へ連絡するか分かる内容にします。

運用通達は、カスハラについて、発生したその場で直ちに対応が求められる場面も多いとしています。相談を受けてから検討するのでは間に合わないため、現場が迷わず動ける状態を先に作っておきます。

なお、方針を顧客等へ周知することは義務ではありません。ただし被害の防止には効果があるとされており、店頭の掲示やウェブサイトでの表明は取り組む価値があります。

正当な申入れと、カスハラを分ける

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※AI生成画像

指針上のカスハラは、次の3つをすべて満たすものです。

  • ①:職場で行われる顧客等の言動であること
  • ②:業務の性質その他の事情に照らして、社会通年上許容される範囲を超えていること
  • ③:①③により従業員の就業環境が害されること

苦情があるだけではカスハラといえません。一方、要求内容に理由があっても、暴力や脅迫など伝え方が許容範囲を超えれば該当し得ます。障害を理由とする不当な差別をしないよう求めることや、配慮の必要性を伝えること自体は、カスハラではありません。

窓口は、名前ではなく対応できる人を決める

相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が内容や状況に応じて対応できるようにします。既存のハラスメント窓口と共通にしても、別に設けても構いません。上司や店長を担当者にする方法も認められています。

ただし、店長が一人で抱え込む状態では組織的な対応につながりません。実務上は店長から本社へ相談するなど、判断に迷ったときの相談先も決めておくと役立ちます。別窓口の設置が一律の義務という意味ではありません。

窓口では、カスハラと断定できる段階や、発生のおそれがある段階も含めて広く相談を受けます。本人だけでなく、状況を見聞きした同僚からの相談も想定します。

参考:厚生労働省:カスタマーハラスメント防止指針 2・4

参考:厚生労働省:解釈Q&A(周知の対象・相談窓口の設計)

事案が起きたときの動き方(⑤~⑦)

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※AI生成画像

相談を受けたら、事実関係を速やかに確認し、確認できた場合は被害者への配慮措置を行い、再発防止の措置を講じます。事実を確認できなかった場合も、再発防止の措置は同じ用に講じます。

危険があるときは、事実の確定を待たない

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※AI生成画像

暴力や脅迫などで危険があるときは、安全確保を優先します。従業員をその場から離す、応援を呼ぶ、必要に応じて警察へ通報するなどの対応を取りましょう。カスハラに当たるかの最終判断や、詳しい聞き取りが終わるまで待つ必要はありません。

心身の不調が見られる場合も同じです。本人の状態に応じて、産業保健スタッフ等への相談や医療機関の受診につなげます。一人勤務の店舗では、その場で上司に交代できないこともあるため、緊急連絡先や退避の方法を先に決めておきます。

事実確認では、外から見える応対だけで判断しない

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※AI生成画像

日時・場所・具体的な言動・その後の対応を整理し、必要に応じて周囲の従業員の話や記録も確認します。相手が立ち去って連絡先もわからない場合も、無理な聴取まで求められるわけではありません。

運用通達は、相談者が行為者に迎合的な言動をしていたとしても、その事実だけで被害を否定しないよう求めています。その場を収めるために笑顔を見せたり謝罪したりしていた可能性があるためです。本人の受け止めと、その後の状態を確認します。

同じ説明を何度も求めてると負担が大きくなります。聞き取りの担当者と記録の旧友範囲を整理し、本人の状態に応じて進めます。

配慮には、働き続けるための支援まで含まれる

指針は、被害者への配慮として、管理監督者等が代わって対応すること、被害者と行為者を引き離すこと、担当者の変更や配置転換、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等によるメンタルヘルス不調への相談対応を挙げています。犯罪に当たり得る言動については警察への通報も示されています。

場面 配慮の例
その場 管理監督者等が代わって対応する、行為者と引き離す、必要に応じて警察へ通報する
その後 担当者の変更・複数人での対応、配置転換、産業保健スタッフ等による相談対応
働き続けるために 継続就業が困難にならないよ環境を整える
休業した場合 本人の希望と状態に応じて、原職・原職相当職への筆記を支援する

※「場面」の分け方は読みやすさのための整理で、指針がこの区分で定めているわけではありません。

運用通達は、この配慮に継続就業が困難にならないための環境整備と、休業した場合に本人が希望するときの原職または原職相当職への復帰支援まで含めています。事実確認で対応を終えず、働き続けるために何が必要かを検討します。

その後は、方針の再周知や、原因となった商品・サービス・接客の改善など、再発防止の措置を講じます。過度に顧客を優先する慣行が残っていないかも見直しの対象です。

参考:厚生労働省:運用通達(事実確認・被害者への配慮・再発防止)

参考:厚生労働省・労働者健康安全機構:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

▼ウェビナーのご案内

現場での対応の進め方は、10月29日(木)開催のウェビナーで産業医が具体的に解説します。

▼セミナーの詳細・お申し込みはこちら

「10月義務化!これからのカスハラ対策 ~現場をすり減らさない解決志向と5つのステップ~」

悪質な事案への備えと、相談者の保護(⑧~⑩)

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※AI生成画像

⑧は、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの指針には対応する項目がない、今回の新設業務です。既存のハラスメント対応の枠組みは、そのまま当てはまる項目がありません。

既存のハラスメント対策を活用する場合も、⑧の対処方針と、判断・実行できる体制が整っているかを確認してください。

決めるのは、方針と、判断できる体制の2つ

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※AI生成画像

過度な要求を繰り返すなど、特に悪質と考えられる事案への対処方針をあらかじめ定め、従業員へ周知します。指針は、警察への通報、警告文の送付、法令の範囲内での販売やサービス提供の停止、出入り禁止、仮処分命令の申立てを例として挙げています。

求められているのは方針だけではありません。運用通達は、人事・カスタマーサービス・法務などの関係部門が速やかに連携し、取るべき対処を判断できる体制を整えることを挙げています。誰が本社へ報告を上げ、誰が最終的に判断し、誰が実行するかを決めておきます。

緊急時に警察へ通報する場面まで、社内の承認を待たせる手順にはしません。また、産業保健スタッフは健康面の支援を担う立場であり、顧客対応の法的な判断を任せる先とは分けて考えます。

「悪質だから、直ちにサービス停止」とはしない

方針に出入り禁止を定めても、悪質な事案のたびに必ず実行しなければならないわけではありません。整えた体制の下で、その事案について講じるかどうかを判断します。

厚労省Q&Aでは、今回の改正は事業主に新たな法的権利や権限を設けるものではないとしています。出入り禁止や販売拒否を方針に盛り込む際は、指針に例示されていることだけで実行できると判断せず、法令上の制限や個別の契約関係を確認します。

医療のように中断が生命や健康へ影響するサービスでは、業法上の義務との関係にも注意が必要です。従業員の安全確保と、必要なサービスの維持を両立できる方法を検討します。

相談者を守る定めを置く(⑨⑩)

⑨と⑩は、①から⑧までを機能させるための条件です。相談したら不利益を受けるかもしれない、相談内容が職場に広まるかもしれないという状態では、窓口に相談が上がってきません。

⑩には、労働局への相談、紛争解決の援助の求め、調停の申請や出頭への対応を理由とする不利益取扱いをしないことも含めます。なおここでいう労働局の援助と調停は、労働者と事業主の間の紛争を対象とする制度であり、顧客との紛争を直接解決するものではありません。

顧客側の個人情報や録音・録画データも、個人情報保護法にもとづいて適切に取り扱います。録音・録画は、全企業に一律に義務付けられた方法ではありません。

参考:厚生労働省:カスタマーハラスメント防止指針 4

参考:厚生労働省:解釈Q&A(悪質な事案への対処・法改正の効果)

整えた10項目を回し続ける

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文書があるかどうかではなく、現場で使えたかを振り返ります。相談先を従業員が知っているか、担当者だけに負担が集中していないか、被害後の支援につながったかを点検します。

指針は、アンケートや意見交換などで運用状況を把握し、必要な見直しを検討することに努めるよう求めています。従業員や労働組合の参画を得る方法として、既存の衛生委員会の活用も挙げられています。

衛生委員会を議題の場にする

労働安全衛生規則は、衛生委員会の付議事項として労使者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立を定めています。カスハラ対策の運用状況、相談件数の推移、被害を受けた従業員のケア体制は、この付議事項として取り上げられます。

新しい会議体を作る必要はありません。すでに開いている衛生委員会に議題を加える形で組み込めます。衛生委員会の設置義務は常時50人以上の事業場に限られますが、50人未満の事業場でも、安全や衛生についての意見を聴く機会を活用できます。

産業医・産業保健師との連携を決めておく

指針は、被害者への配慮を担う者として、管理監督者または事業場内産業保健スタッフ等を挙げています。運用通達は、kの事業場内産業保健スタッフ等に、産業保健スタッフ、心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等が含まれるとしています。産業保健スタッフだけが担うわけではありません。

産業医や産業保健師との連携は、事業主が配慮措置を実施するための実務上の選択肢です。相談対応、継続就業に向けた環境整備への助言、復職支援への関与などを、自社の体制に応じて検討します。

措置を講ずる主体は事業主です。産業医等は医学的な意見を述べる立場であり、就業上の措置や復職の判断は事業主が行います。外部の産業保健サービスを使う場合も、委託によって会社の責任が移るわけではありません。

厚生労働省の令和5年度の実態調査では、顧客等からの著しい迷惑行為への取組が進んでいる業種ほど、従業員の精神邸なケアが難しいという課題が多く挙がっています。窓口を整えた後に残るのは、この部分です。

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参考:厚生労働省:カスタマーハラスメント防止指針 6

参考:厚生労働省:令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)

もう一歩詳しく:会社が外せない法的な点

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ここからは、実務の判断を誤らないための法的な確認事項です。10項目の措置義務、努力義務、望ましい取組を分けて確認し、それぞれの位置づけに応じて対応を検討します。

義務・努力義務・望ましい取組を分ける

区分 何が当てはまるか
義務 指針4の10項目。規模や職場の状況を問わず講じる
努力義務
  • ●従業員の理解を深める研修などの配慮
  • ●他社から事実確認等の協力を求められた場合の対応
望ましい取組
  • ●自社の行為者への懲戒
  • ●対応力向上の研修
  • ●運用状況の把握と見直し など

見分け方は章の番号ではなく、規定の文言です。努力義務であることは「応じなくてよい」という意味ではありません。厚労省Q&Aでは、他社からの協力の求めに応じない場合、都道府県労働局に相談でき、労働局が強力に応ずるよう助言するなど対応を行うとしています。

一方で、望ましい取組を義務の代わりにはできません。厚労省Q&Aでは、業界団体が作ったマニュアルをそのまま配るだけでは措置を果たしたことにならず、自社の実情に応じて調整して定め、周知した場合に果たしたことになるとしています。

行政の関与と、企業名の公表

措置義務に違反したこと自体に罰則はありません。ただし行政の助言・指導・勧告の対象となり、厚生労働大臣が自ら勧告し、事業主がそれに従わなかった場合に、企業名を公表できると定められています。違反があれば直ちに公表される仕組みではありません。

報告義務違反の過料は、別の系統

行政から求められた報告をしない場合や虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料があります。手続きは地方裁判所で行われます。

過料の要件は、報告をしなかったことと虚偽の報告をしたことです。措置義務違反があったかどうか、勧告や公表を経たかどうかは要件に含まれません。措置義務への対応と、報告への対応は分けて確認します。

適用が異なる場合

  • ● 公務部門:地方公務員には措置義務が適用されますが、ここで説明した労働局の援助・調停、助言・指導・勧告、公表、報告の請求は適用されません。一般職の国家公務員(行政執行法人の職員は除く)、裁判所職員、国会職員、自衛隊員には措置義務の適用除外があります。公立病院のように運営主体が分かれる施設では、名称ではなく運営主体と職員の身分で確認します。
  • ● 船員:行政機関の読み替えなどの特例があります。
  • ● 自治体の条例:カスハラに関する条例がある地域では、国の法令と併せて確認します。東京都には中小企業向けの奨励金もありますが、募集要件の確認と、義務となっている対策を進めることは分けて考えます。

参考:e-Gov法令検索:労働施策総合推進法(施行後の条文)

参考:厚生労働省:解釈Q&A(努力義務・望ましい取組の範囲)

カスハラ対策義務化に関するよくある質問

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実務で質問が集まる論点を、指針と厚労省Q&Aに沿って整理します。

Q.カスハラ対策のために就業規則を改定する必要はありますか。

A.論点によって分かれます。相談したことなどを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知することは必要ですが、就業規則への記載は実施方法の一例です。社内報などによる周知も認められています。

一方、自社の従業員が取引先等にカスハラを行った場合の懲戒については、厚労省Q&Aが、信用失墜行為や服務規律違反の懲戒規定など既存の規定で対応できるなら、カスハラ専用の規定を新たに設ける必要はないとしています。2つを同じはなしとして扱うと、相談者を守る定めが抜けます。

Q.指針に載っている例のとおりにしないと、違反になりますか。

A.そうとは限りません。運用通達は、措置の方法について、企業の規模や職場の状況に応じて事業主が選べるよう具体例を示したものであり、限定列挙ではないとしています。

ただし、例を1つ形式的に満たせば足りるわけでもありません。10項目それぞれについて自社に合う方法を選び、担当者と手順を決めて、相談の受付から被害者への配慮まで実際に対応できる状態にします。

Q.カスハラの相談窓口は、パワハラの窓口と一緒でもよいですか。

A.一緒でも、分けても構いません。厚労省Q&Aでは、カスハラについては他のハラスメントの窓口との一体化は必須ではないとしています。事案が起きたその場ですぐ相談することや、現場に精通した上司へ相談することが適切な場合もあるためです。

相談に対応する担当者として、上司にあたる管理監督者等を定めることも認められています。その場合、運用通達は、当該管理監督者等が相談できる窓口を別に設けることも考えられるとしています。

参考:厚生労働省:解釈Q&A(就業規則・相談窓口)

まとめ:困った従業員を、一人にしない

カスハラ対策で確かめたいのは、「困ったときに誰へ相談するか」「誰が対応を決めるか」「被害の後に誰が支えるか」が、現場でつながっているかです。

  • ● 規模を問わず対応する:民間企業に猶予はなく、パートタイム労働者や派遣労働者、顧客対応がない部署の従業員も対象です。
  • ● 既存の体制を点検して補う:10項目に照らして不足を洗い出します。新設された⑧は、既存のハラスメント対応に対応する項目がありません。
  • ● 危険があれば安全確保を優先する:事実確認の完了を待ちません。
  • ● 被害の後の支援まで決める:継続就業のための環境整備と、本人の希望と状態に応じた復職支援まで含めて検討します。

文書をそろえて終わりにせず、従業員が相談でき、担当者が動ける状態になっているかを確かめてください。

「窓口はあるが、不調が出た後の支援を誰に頼めばよいか分からない」という場合は、産業医・産業保健師との連携を確認する段階です。ワーカーズドクターズでは、産業医紹介と産業保健師紹介を行っています。相談したい場面を伝え、必要な支援内容と契約範囲をご確認ください。

産業医紹介と選任後の支援について(ワーカーズドクターズ)

産業保健師紹介サービス(ワーカーズドクターズ)

公開日: 2026.10.16
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