「生理休暇」に見直しの動き〜取得率向上のために企業ができる取り組み〜
- 産業保健
「生理休暇」に見直しの動き〜取得率向上のために企業ができる取り組み〜
生理による体調不良は、多くの働く女性が経験する問題である一方で、職場への相談のしづらさや周囲の理解不足などから、生理休暇が十分に活用されているとは言えない状況です。近年は制度そのものの見直しや、より利用しやすい仕組みづくりに取り組む企業も増えており、取得率向上に向けた環境整備に注目が集まっています。本記事では、生理休暇を取り巻く現状や見直しの背景を解説するとともに、従業員が安心して制度を利用できる職場づくりのために企業ができる取り組みについて紹介します。
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生理休暇をめぐる現状と「見直し」の背景

1-1 低迷する生理休暇の取得率とその理由
生理休暇は、労働基準法第68条で定められた制度ですが、実際の利用率は低い水準にとどまっています。厚生労働省が行なった「令和2年度雇用均等基本調査」では、生理休暇を取得した女性労働者の割合は0.9%に過ぎません。一方で、生理による不調を抱えながら「我慢している」と回答した女性は6割を超えており、症状が軽いから利用されないのではなく、利用しにくい職場環境が背景にあると考えられます。
取得率が低い主な理由としては、「生理で休みたい」と申し出る心理的ハードルの高さが挙げられます。特に男性上司への申請に抵抗を感じたり、周囲へ迷惑をかけたくないという意識から、通常の有給休暇を利用したり、無理をして出勤したりするケースは少なくありません。また、生理休暇は有給とする義務がないため、無給となる企業では収入への影響を避けて年次有給休暇を選ぶ人もいます。さらに、制度自体の周知不足や、職場内で利用者が少ないことによる「自分だけが取得しづらい」という心理も取得率を押し下げる要因となっています。
生理休暇の取得率向上には、制度を整備するだけでなく、管理職への教育や相談しやすい環境づくりなど、安心して利用できる職場文化の醸成が重要です。
参考:厚生労働省「働く女性と生理休暇について」
参考:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」
1-2なぜ今、生理休暇の「見直し」が進められているのか?
近年、生理休暇が改めて注目されている背景には、月経困難症やPMS(月経前症候群)による健康問題が、個人だけでなく企業の生産性にも影響していることが明らかになってきたからです。生理に伴う腹痛や頭痛、倦怠感、精神的不調などの症状は、欠勤だけでなく、出勤していても十分なパフォーマンスを発揮できない状態であるプレゼンティーズム(疾病就業)の要因となり、労働損失につながることが指摘されています。
また、女性の就業率向上や管理職への登用が進むなか、女性特有の健康課題に適切に対応できる職場づくりは、人材確保や定着、企業価値の向上にも直結する重要な経営課題となっています。そのため近年は、従来の「生理休暇」という制度を設けるだけではなく、有給化や時間単位での取得、テレワークやフレックスタイム制度との併用、オンライン診療や婦人科受診支援など、多様な働き方を組み合わせた支援へと制度を見直す企業が増えています。
なぜ生理休暇は利用されにくいのか?

「言い出しにくさ」という心理的ハードル
生理休暇の取得率が低い最大の要因は、制度そのものではなく、「利用したいけど言い出せない」という心理的ハードルにあります。生理はプライベートな健康問題であるため、上司や同僚に伝えることへ抵抗を感じる人は少なくありません。特に男性上司へ申請する場合は、「理解してもらえないのではないか」「評価に影響するのではないか」といった不安から、体調不良を別の理由で伝えたり、無理をして出勤したりするケースもみられます。
また、生理痛やPMSの症状は外見からは伝わりにくいため、自分だけ特別扱いされていると思われたくないといった心理も働きます。人手不足の職場では、同僚に負担をかけてしまうことへの不安や遠慮から、症状があっても休暇取得をためらう人も少なくありません。
生理に対する理解不足
生理休暇が利用されにくい背景には、職場における女性特有の健康課題への理解不足もあります。生理の症状には大きな個人差があり、ほとんど日常生活に支障がない人もいれば、月経困難症による強い腹痛や頭痛、吐き気、さらにはPMS(月経前症候群)による気分の落ち込みや集中力の低下など、就業が困難になるほどの症状に悩まされる人もいます。しかし、こうした個人差が十分に理解されていないため、「生理は誰にでもあるもの」「多少つらくても我慢するのが普通」といった固定観念が残り、必要な配慮につながりにくいのが現状です。
また、生理に関する知識を学ぶ機会は限られており、管理職や同僚が月経困難症やPMSを医学的な健康課題として認識していないケースも少なくありません。その結果、本人が不調を訴えにくくなるだけでなく、職場全体で支援しにくい環境が生まれています。生理休暇を実効性のある制度とするためには、生理を個人の問題ではなく、誰もが理解すべき健康課題として捉え、管理職教育やヘルスリテラシー向上に取り組むことが重要です。
生理休暇の取得率向上に向けて企業ができること

3-1 申請時の心理的なハードルを下げる工夫
生理休暇の取得率を高めるためには、制度を設けるだけでなく、従業員が安心して申請できる環境を整えることが重要です。特に、生理はプライベートな健康情報であるため、「生理で休みます」と申告すること自体が心理的な負担となる場合があります。そのため、企業には申請時のハードルを下げる工夫が求められます。
例えば、生理休暇の名称を「ウェルネス休暇」や「エフ(Female)休暇」などに変更し、利用目的を女性の健康全般に広げることで、従業員が利用しやすくなるケースがあります。また、勤怠システム上で休暇理由を詳細に記載する必要がない運用や、人事部門へオンラインで申請できる仕組みを導入することで、上司へ直接説明する負担を軽減できます。申請理由を必要以上に確認しない運用ルールを整備することも、安心して制度を利用できる環境づくりにつながります。
3-2 制度設計の見直し
生理休暇の利用を促進するためには、制度そのものの柔軟性を高めることも重要です。生理に伴う症状は個人差が大きく、「1日休むほどではないが数時間休息したい」「午前中だけ症状が強い」といったケースも多くあります。そのため、休暇を1日単位だけでなく、時間単位や半日単位でも取得できるようにすることで、症状に応じて利用しやすくなります。結果として、無理な出勤や欠勤を減らし、体調に合わせた働き方へとつながります。
また、生理による不調への支援は、休暇制度だけに限定する必要はありません。体調が優れない際に一時的に横になれる休憩スペースの整備や、テレワーク・時差出勤・フレックスタイム制度などを活用できる環境を整えることで、症状に応じた柔軟な働き方を選択できるようになります。さらに、婦人科受診を促す情報提供や相談窓口の設置なども、早期の受診や適切な治療につながる支援策となります。
3-3 産業保健スタッフや産業医と連携した女性の健康支援
生理休暇の取得率向上を目指すうえでは、生理休暇の背景にある健康課題に対し適切な対応を行うことが重要です。強い生理痛や過多月経、PMS(月経前症候群)などの症状が続く場合、その背景には月経困難症や子宮内膜症、子宮筋腫などの疾患が隠れていることもあります。そのため症状がある場合には、必要に応じて医療機関の受診につなげる視点が求められます。
産業医や保健師などの産業保健スタッフは、従業員が安心して相談できる窓口として重要な役割を担います。体調や就業状況を丁寧に確認し、婦人科受診の勧奨や治療と仕事の両立支援、必要に応じた就業上の配慮について助言することで、症状の重症化を防ぐ二次予防や早期対応につなげることができます。また、管理職への助言や女性の健康に関する教育を行い、職場全体の理解を深めることも産業保健スタッフの重要な役割です。
産業保健スタッフと企業が連携し、制度運用と健康支援の両面から継続的に取り組むことが、女性の健康保持と働きやすい職場づくりにつながります。
3-4 生理に対する理解不足を解消するための社内教育
生理休暇の取得促進や働きやすい職場づくりにおいて、生理に対する正しい理解の浸透は欠かせません。生理は個人差が大きく、症状も軽度の不快感から、月経困難症による強い腹痛・頭痛、PMS(月経前症候群)に伴う気分変調や集中力低下まで幅広く存在します。しかし、こうした医学的背景が十分に共有されていない職場では、「生理は誰でも我慢できるもの」という誤解や固定観念が残りやすく、適切な配慮や支援が進みにくい傾向があります。そのため企業には、管理職を含めた社内教育の実施が求められます。具体的には、産業医や保健師による研修を通じて、生理に伴う症状の個人差や疾患との関連、就業への影響について正しい知識を共有することが有効です。また、女性従業員だけでなく男性従業員も対象とすることで、職場全体の理解を底上げし、性別にかかわらず相互に配慮できる環境づくりにつながります。さらに、単発の研修にとどまらず、eラーニングの活用や定期的な情報発信、相談窓口の周知など、継続的な教育体制を整えることも重要です。
まとめ:生理休暇の見直しは、女性活躍と健康経営を推進する第一歩
生理休暇は制度として存在するものの、心理的ハードルや生理・PMSへの理解不足、運用の硬さなどから取得率は低い水準にとどまっています。一方で、月経困難症やPMSによるプレゼンティーズムが企業の生産性に影響することが注目され、健康経営の観点から見直しが進んでいます。生理休暇を安心して利用できる環境づくりを行うことが、女性活躍推進の第一歩といえます。申請方法の簡素化や柔軟な制度設計、社内教育など、産業保健スタッフとの連携を通じた支援の充実を目指しましょう。
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