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デジタルメンタルヘルスとは?~デジタル技術を活用した心の健康維持~

  • メンタルヘルス
更新日: 2026.10.06
デジタルメンタルヘルスとは?~デジタル技術を活用した心の健康維持~
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】新井久美子(産業医) 研修終了後10年以上救急医として従事、自身のライフスタイルの変化があり産業医資格を取得。現在は嘱託産業医として複数社契約し、産業保健分野を中心に活動している。オンライン面談などを活用しつつ、メンタルヘルス対策や健康相談を重視している。

【監修】新井久美子(産業医) 研修終了後10年以上救急医として従事、自身のライフスタイルの変化があり産業医資格を取得。現在は嘱託産業医として複数社契約し、産業保健分野を中心に活動している。オンライン面談などを活用しつつ、メンタルヘルス対策や健康相談を重視している。

デジタルメンタルヘルスとは?~デジタル技術を活用した心の健康維持~

私たちは日々さまざまなストレスにさらされています。心の健康を維持するためには、ストレスに気づき、早めに対処することが大切です。近年は、スマートフォンやウェアラブル端末、オンラインサービスなどのデジタル技術を活用して、心の状態を把握したり、セルフケアを支援したりするデジタルメンタルヘルスが注目されています。

本コラムで、デジタルメンタルヘルスの基本的な考え方や、職場での活用方法について解説します。

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1.なぜデジタルメンタルヘルスが注目されているのか?

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1-1 デジタルメンタルヘルスとは?

デジタルメンタルヘルスとは、AIやチャットボット、スマートフォン、ウェアラブル端末などのデジタル技術を活用し、心の健康維持やメンタルヘルス不調の予防・早期対応を支援する取り組みです。例えば、スマートフォンのアプリを通じて心の悩みを相談したりする方法があります。また、ウェアラブル端末で睡眠時間や心拍数などのデータを記録し、自身の心身の状態を振り返ることもデジタルメンタルヘルスの一例です。

1-2 デジタルメンタルヘルスが必要とされる理由

デジタルメンタルヘルスが注目されている背景には、近年のメンタルヘルス不調社の増加、専門機関への相談の難しさ、産業保健スタッフの人員不足などがあります。

職場でストレスや心の不調を感じても、「どこに相談すればよいかわからない」「忙しくて医療機関を受診する時間がない」「周囲に知られるのが心配」といった理由から、相談をためらう人も少なくありません。その結果、不調に気づきながらも適切な支援に繋がらず、症状が悪化してしますケースも考えられます。また、企業側にとっても、産業医や保健師などの産業保健スタッフだけで、すべての従業員のメンタルヘルスを継続的に支援することには限界があります。特に、従業員数の多い企業や産業スタッフが十分に配置されていない企業では、支援体制の充実が課題となっています。

そこで期待されているのが、デジタル技術を活用したメンタルヘルス支援です。スマートフォンやパソコンなどを通じて、いつでも・どこでも心の状態をチェックしたり、メンタルヘルスに関する情報を得たり、相談窓口につながったりできる環境を整えることで、従業員が気軽にセルフケアや相談を始めるきっかけをつくれます。デジタルメンタルヘルスは、産業医や産業保健スタッフに代わるものではありませんが、専門家による支援を補完し、不調の予防や早期対応につなげる手段として、企業での導入が進み始めています。

1-3 世界・日本で進むデジタルメンタルヘルス

デジタル技術を活用したメンタルヘルス対策は、世界的にも重要性が高まっています。世界保健機関(WHO)は、メンタルヘルスに関する支援へのアクセス格差を解消するため、デジタル技術を含むさまざまな手段を活用した支援の普及を進めています。2022年に出された「職場のメンタルヘルスガイドライン(Guidelines on mental health at work)」によると、職場におけるメンタルヘルスの促進やメンタルヘルス不調の予防、メンタルヘルス不調を抱える人の就労支援などについて、科学的根拠に基づく推奨事項が示されています。デジタル技術には、場所や時間の制約を超えて情報や支援につながりやすくするメリットがある一方、利用に伴うリスクもあります。そのため、デジタル技術を導入すること自体を目的とするのではなく、科学的根拠や安全性を踏まえて適切に活用することが重要だと位置づけています。

日本でも、メンタルヘルス対策におけるデジタル技術の活用が進んでいます。スマートフォンやパソコンを使ったセルフチェック、オンライン相談、心理支援サービスなど、時間や場所を問わず支援につなげるための選択肢が広がっています。今後は、こうしたデジタルサービスについて、有効性や安全性、個人情報の保護などを考慮しながら、既存の産業保健活動とどの用に組み合わせていくかが重要になるでしょう。

参考:世界保健機関(WHO)「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」

2.メンタルヘルスサポートにデジタル技術を取り入れるメリット

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2-1 客観データによる初期サインの可視化と重症化予防

メンタルヘルス不調の予防では、本院が感じているストレスや心身の状態を把握することが重要ですが、従来のアンケートやストレスチェックでは、本人の主観的な回答をもとに状態を確認する方法が中心でした。デジタルメンタルヘルスでは、ウェアラブル端末やスマートフォンなどを活用し、睡眠時間や睡眠リズム、脈拍、活動量、行動ログなどのデータを継続的に記録・分析します。こうした客観的なデータを主観的な回答と組み合わせることで、普段とは異なる生活リズムや睡眠の変化など、本人がまだ気づいていない初期のストレスサインや体調のゆらぎを早期に捉えられるようになります。

例えば、睡眠時間が徐々に短くなっている、活動量が低下しているといった変化が続いている場合、自身の生活習慣を見直すきっかけになります。早い段階で変化に気づき、休養やセルフケア、産業医などへの相談につなげることで、メンタルヘルス不調が深刻化する前に対策を講じることができます。

ただし、睡眠や脈拍などのデータは、必ずしもメンタルヘルス不調だけを示すものではありません。個人差や生活環境などの影響も受けるため、データだけでうつ病などの疾患を判断することはできません。あくまで自身の状態を振り返るための補助的な情報として活用し、必要に応じて専門家による評価や支援につなげることが大切です。

2-2 時間・場所を選ばない「24時間即時アクセス」と心理的ハードルの低下

デジタルメンタルヘルスでは、スマートフォンやパソコンを利用して、時間や場所を問わずセルフケアに取り組むことができるのがメリットの一つです。ストレスを感じた際に、その場で呼吸法やリラクゼーションなどのセルフケアを行うことで、不調を抱え込まずに対処できるようになります。

また、メンタルヘルスに関する悩みを他人には相談しづらいと感じる人にとって、アプリなどを介した支援は、対面で相談するよりも心理的なハードルが低いこともメリットの一つとして考えられます。

2-3 組織全体の「メンタルヘルス傾向の可視化」と適切な職場環境改善

デジタルメンタルヘルスの活用は、従業員一人ひとりのセルフケアを支援するだけでなく、組織全体のメンタルヘルスの傾向を把握することにもつながります。個人を徳的できないようプライバシーに十分配慮したうえで、従業員の回答や利用データなどを集計・分析することで、部署や職種ごとのストレス傾向、不調につながりやすい要因などを把握しやすくなります。

例えば、特定の部署でストレススコアが高い状態が続いている場合、こうしたデータを活用することで、長時間労働や業務量、職場の人間関係、管理職とのコミュニケーションなど、背景にある要因を確認するきっかけとなり「もしかすると、この部署はメンタルヘルス上の問題を抱えているのではないか」といった感覚値だけに頼らず、データを根拠とした職場環境の見直しを進めることができます。

さらに、把握した課題に応じて、業務負担の調整、管理職向けの研修、セルフケア研修など、必要な対策をより具体的に検討できます。すべての部署に一律の施策を行うのではなく、データから見えてきた課題に合わせて、必要な職場に必要な対策を講じられることが大きなメリットです。

ただし、メンタルヘルスに関するデータは非常にセンシティブな情報です。分析や活用にあたっては、個人が特定されないようにすることや、利用目的を明確にして従業員に説明することなど、プライバシーへの十分な配慮が求められます。

2-4 産業保健スタッフの業務効率化と「面談の質の深化」

デジタルメンタルヘルスは、従業員のセルフケアを支援するだけでなく、産業医や保健師などの産業保健スタッフの業務を効率化する手段としても期待されています。従来の面談では、限られた時間の中で、従業員から生活状況や睡眠、ストレスの状態などを聞き取り、現在の状況を整理する必要がありました。日々のログデータやストレス傾向などがあらかじめ可視化・集約されていれば、面談前から従業員の状態や変化を継続的に把握することも可能になります。面談後のセルフケアや職場環境の調整によって状態がどのように変化したのかを確認し、必要に応じて支援方法を見直すといったフォローにも役立ちます。

このように、デジタル技術によって情報収集や記録にかかる負担を軽減できれば、産業医や保健師が限られた時間の中でより具体的かつ本質的なアドバイスや指導に集中できるようになります。

3.デジタルメンタルヘルス利用における課題と運用のポイント

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3-1 医療行為との境界線とAI・判定精度の限界の把握

多くのデジタルメンタルヘルスツールは、心の状態をチェックしたり、セルフケアの方法を提示したり、相談のきっかけを提供したりするものであり、医師による診断や治療そのものを代替するものではありません。特にAIを活用したサービスでは、入力された情報に対して自動的に回答したり、ストレス状態などをスコア化したりすることがあります。しかし、AIの回答やスコアだけで病気の有無を判断することはできません。メンタルヘルスの状態には、本人の自覚症状だけでなく、生活環境や職場での状況、身体的な健康状態など、さまざまな要因が関係しています。また、AIの判定や自動応答にも精度上の限界があります。そのため、企業や従業員には、デジタルツールは病気を診断するものではなく、必要な支援につなげるためのツールとして正しく理解してもらうことが求められます。

さらに重要なのが、リスクが高いと判定された場合の次の相談先の確保です。例えば、リスクが一定の基準を超えた場合には、産業医や保健師、相談窓口、医療機関などの人による支援に繋がる仕組みをあらかじめ整えておく必要があります。AIによる児童判定の結果をそのまま放置するのでなく、必要に応じて専門家が状況を確認し、適切な対応につなげることが大切です。

3-2 「デジタル疲れ(デジタルファティグ)」とツール離脱(継続性)への対策

毎日のデータ入力やアプリからの通知が増えたりすると、それ自体が新たな負担やストレスにつながる恐れがあるため、デジタル疲れ(デジタルファティグ)への配慮が必要です。デジタルツールを用いた従業員の健康管理を行う場合、簡単に回答できる設計にする、アプリからの通知の頻度を調整できるようにする、必要な情報だけを表示するといった工夫を行い、メンタルケアのためにデジタルツールを使うことが、かえって従業員の負担にならないようにすることが重要です。

また、デジタルメンタルヘルスを実施するにあたり、導入直後は新しさから利用頻度が高くても時間が経つにつれて利用されなくなるツール離脱といった課題もあります。特に、毎日の手入力による記録など利用者の能動的な操作を必要とするサービスでは、忙しさや関心の低下によって継続が難しくなることがあります。継続性を高めるためには、できるだけ利用者の負担を減らす仕組みを取り入れることがポイントです。従業員が自分のペースで無理なく利用できることを基本とし、必要なときに自然と使いたくなるサービス設計を目指すことが、長期的な活用につながります。

3-3 デジタルと人の連携フローの設計

Aiやスマートフォンアプリは、日常的な不調への気づきを支援することはできますが、重度のストレスや緊急性が高いケースでは、産業医や保健師など、人による支援が不可欠です。そのため、デジタルツールによって高いストレス状態などのアラートが検知された場合に、「誰が」「どの基準で」「どのように対応するのか」を導入時にあらかじめ決めておく必要があります。一定の基準を超えた場合には産業医や保健師による確認につなげ、就業上の配慮が必要な場合には本人の同意やプライバシーに配慮しながら、適切に連携する必要があります。

また、メンタルヘルスに関する情報はプライバシー性が高いため、一律に上司へ共有するのではなく、情報の取り扱いと共有範囲を明確にすることも重要です。本人の意志や緊急性を考慮しながら、産業保健スタッフと管理職それぞれの役割を整理しておく必要があります。

デジタルメンタルヘルスは、人による支援の置き換えではありません。日常的なデータ収集やセルフケア、不調の早期発見をデジタルが担い、必要な場面では産業医・保健師・上司・医療機関などが支援する連携フローをあらかじめ設計しておくことが、企業で安全かつ効果的にデジタルメンタルヘルスを活用するためのポイントです。

まとめ:デジタルをうまく組み合わせた、ハイブリッド型のケア体制の構築を

デジタルメンタルヘルスは、従業員の心身の変化への気づきやセルフケアを支援し、産業保健活動を補完する有効な手段です。一方で、AIやデジタルツールだけですべての不調に対応できるわけではありません。デジタルと人、それぞれの強みを生かしたハイブリット型のケア体制を構築することが、従業員のメンタルヘルス向上につながります。

公開日: 2026.10.06
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