医師意見書(産業医意見書)の役割とは?診断書との違い

2022年06月08日

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従業員の健康問題は管轄部署の担当者のみで決定するわけではありません。医師の意見を取り入れ、総合的に判断する必要があります。そこで用いられるのが「医師意見書」です。

当記事では、企業の人事部門の方が知っておきたい医師意見書にフォーカスし、概要について解説します。

医師意見書とは?

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医師意見書とは、病気や怪我、これらに付随する症状などについて医学的観点に基づいて医師の意見を記載した書類です。

もともと医師意見書は、障害者自立支援法に基づき障害者が適切な障害福祉サービスを受けるため必要な「障害程度区分認定」を決定する際に、主治医の意見を伝えるための必要書類として知られています。

企業の人事部門が主に取り扱う医師意見書としては、労働安全衛生法第66条で以下の3つが定められています。

  • ●健康診断結果の措置についての医師意見
  • ●長時間労働者面接指導後の医師意見
  • ●高ストレス者面接指導後の医師意見

この他、休職・復職や就業継続の可否などについての医師意見書があります。

産業医意見書の役割

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医師意見書は一般的に従業員が50名以上であり、産業医の選任義務がある企業の場合「産業医意見書」、従業員が50名未満の企業の場合は産業医の選任義務がないため、「医師意見書」と呼ばれます。

産業医とは、労働者が心身の健康を損なうことのないよう、専門的な立場から労働者と企業に対し助言や指導をする医師です。

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労働安全衛生法に「医師」による意見と記載があるため、意見を聴取するのは産業医と限定はされていません。しかし、産業医がいる場合は、産業医による意見が望ましいとされています。

産業医意見書には、前述の通り「健康診断結果の措置」、「長時間労働者・高ストレス者の面接指導」についての意見書など様々な種類がありますが、ここでは復職時を例に取り上げます。

従業員の復職を判断する際、企業の人事部門は以下の内容を鑑み、就業の可否を決定します。

  • 1. 主治医による復職可の診断書
  • 2. 産業医面談
  • 3. 産業医による就業可否についての意見書

休職中の従業員から職場復帰の希望が伝えられると、企業の担当者は、主治医による「職場復帰可能」という判断が記載された診断書の提出を休職中の従業員に依頼します。

主治医には診断書に加え、復職希望者が有する病状が業務遂行に与える影響、治療と業務遂行を両立するため医学的観点に基づく必要な配慮とその根拠を記載した主治医による意見書を提出してもらう場合もあります。

主治医による診断書が提出されたら、産業医と復職希望者との面談を実施します。産業医は実際の職場環境を考慮して、医学的見地から安全配慮義務に関する助言や職場復帰に関する意見を記載した「産業医意見書」を作成します。

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産業医意見書の記載事項

復職に関する産業医意見書には、就業区分(可・条件付き可・不可)、復職に関する意見、就業上の配慮の内容、措置期限を記載します。

就業上の配慮の内容とは、復職可もしくは条件付きの復職が可能な場合の就業条件に関する項目で、時間外勤務、休日勤務、出張、配置転換・異動など、より細かい制限を設けることが可能です。

復職における意見書のフォーマットは、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

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厚生労働省『様式例3(本文3の(4)関係) 職場復帰に関する意見書』

従業員が実際に復職するには、復職して問題ない(条件付きを含む)と主治医と産業医がともに認めている、復帰先の受け入れ体制が整っていることなどが条件で、最終的な決定権はあくまでも会社側にあります。

従業員の復職の判断は産業医の意見をもとに

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同じ医師でも産業医と主治医では立場が異なるため、労働者の休職もしくは復職に際し産業医意見書と主治医による診断書で見解が分かれる場合があります。

その場合、企業は産業医の意見をもとに判断するのが一般的です。ただし、労働者が休職に至る原因となった病気が産業医の専門外の内容だった場合には、主治医の意見を十分考慮する必要があるとされています。

主治医は労働者の病状と回復の程度を診て、労働者から聞く職場環境像をイメージしながら、復職の可能性を判断します。

対して産業医は、労働者の回復の程度と復帰後の業務遂行能力を評価し、実際の職場環境を考慮したうえで復職の可否を総合的に判断し意見としてまとめます。

また、主治医は患者である労働者の希望を汲んで、早期復職を意見してしまう可能性もあります。

つまり、主治医と産業医では意見を呈する際の判断軸が異なること、実際の職場環境を想定した環境下での業務遂行能力の回復を判定できることなどから、休職の原因となった病気の再発や増悪を防ぐために産業医意見書の記載内容を、企業は優先して判断します。

たとえ主治医が職場復帰可能と診断しても、労働者本人の状態や職場環境を考慮し産業医がすぐの復帰を認めないことがあるのは、こうした背景もあります。

まとめ

労働者が心身の不調を得て休職することは、労働者はもちろん企業にとっても不利益なことです。

長時間労働や業務内容によるストレスから、心身の健康に不調をきたすことはぜひとも避けたいところです。

産業医意見書は、労働者の抱えている問題点とそれに対する解決策、休職あるいは復職を検討する労働者の状態と必要な対応を把握するための手がかりとして不可欠な書類と言えるでしょう。