産業保健師とは?産業医との違い・企業が導入するメリットを詳しく解説

2021年08月18日

産業保健師の仕事風景 企業の保健師として社員への保健指導や健康管理、産業医のサポート業務を担当するのが産業保健師です。特に設置義務がないため設置している企業もまだ少なく、産業医よりも知名度が低いのが実情です。しかし今、企業の健康経営を支える担い手として産業保健師に注目が集まっています。

そこでこの記事では、産業保健師の仕事内容から産業医との違い、企業が産業保健師を設置するメリットまで幅広くご紹介します。

産業保健師とは?

企業で保健師として働く人を産業保健師と呼びます。そもそも保健師は、保健師助産師看護師法において「厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう」と定められています。

つまり、産業保健師は、主に企業で社員に保健指導行う立場にあります。同じ保健師である「学校保健師」が学校の保健室の先生を指すと言えばイメージしやすいかもしれません。

産業保健師は企業で保健室の先生的な役割を務めます。もちろん、誰でもなれるわけではなく、国家試験である看護師と保健師の資格を有している人でないと産業保健師として活躍できません。社員が心身の健康を害した後のケアだけではなく、害す前の「予防」に取り組むのが産業保健師の大きな特徴となっています。

産業保健師と産業医の違い

産業医のサポートも産業保健師の仕事のひとつなので業務内容的には産業医と似通っている部分もありますが、立場的にはまったく異なります。

設置する法的義務が無い

産業医は、従業員50人以上の企業では「必ず」設置しなければいけないと法律で定められています。これに違反すると企業は法的に罰せられます。

一方、産業保健師は、設置が法的には義務付けられてはいません。そのため、産業保健師を設置していない企業は多いのが実情です。

行える業務範囲が異なる

産業医は、医師免許を所持している「医師」であるため、医療の専門的な知識を元に労働者に指導や助言を行います。企業内での診断や治療は行わず、必要と判断した時は病院の紹介等も行います。

一方で産業保健師は、あくまでも社員への健康指導や保健指導、産業医のサポートに留まります。

資格が異なる

産業医は医師の資格(医師免許)に加えて、日本医師会が交付する産業医認定証が必要です。そのほかにも、厚生労働大臣が指定する機関(日本医師会や産業医科大学)が行う研修の修了、労働衛生コンサルタントの資格など、厚生労働省令で定める要件を満たしている必要があります。

一方で産業保健師は、看護師資格と保健師資格の両方を保有している必要があります。

産業保健師の仕事内容

産業保健師と企業の従業員がコミュニケーションを取る様子

ここでは産業保健師の主な仕事内容についてご紹介します。

定期健康診断に関する業務

企業では労働者の健康管理と病気の早期発見を目的に定期的に健康診断を実施します。産業保健師はその企画・準備・実施・結果の判定・従業員へのフィードバックまで担当します。

健康観察・相談

社員の健康状態を日々観察し、不調に気付いたら声がけをします。また、多忙な産業医に代わり、企業の健康相談窓口としての機能も有します。

産業医のサポート

これまで産業医がひとりで担っていた業務のうち、医師資格が必要ではない業務については産業保健師がその役割を担うことができます。例えば、社員のストレスチェックや健康診断、就労判断などが挙げられます。

応急処置

業務内で社員が怪我をした時は、緊急時のマニュアルに基づいて応急処置を行います。産業医が不在の場合は、病院の受診が必要か判断することも産業保健師の仕事となります。

復職者支援

心の病などで休職した社員が企業に復職した際に、継続的な観察と支援を行います。また、復職者が病を再び引き起こさないよう、企業に職場環境の改善などを提案することも産業保健師の役割です。

メンタルヘルス支援

社員の身体の健康だけではなく、心の健康をケアするのも産業保健師の重要な仕事のひとつです。メンタルの不調者が発生しないようその予防などに努めます。

労働・食事など生活習慣の改善指導など

社員の健康改善に向けた指導を多方面からアプローチします。その一環として、社員への啓発を目的とした健康イベントやセミナーを企画・開催することもあります。

企業が産業保健師を導入するメリット

企業の経営者イメージ

企業が産業保健師を設置するメリットには具体的に何が挙げられるのでしょうか。詳しく解説します。

従業員の健康管理が徹底される

産業医のサポートも産業保健師の仕事のひとつであると前述しました。つまり、産業保健師は産業医の仕事内容も熟知しています。特に月に1回しか訪問できない産業医であれば、一人ひとりの従業員の健康状態を把握することは難しいこともあります。その代役を常勤の産業保健師がある程度務められるので、従業員の健康管理がさらに徹底される結果となります。

健康経営を推進できる

健康経営とは、従業員の健康管理を経営の課題とし、企業の持続可能な成長へと結びつけるという考え方です。従業員が健康であれば企業が支払う医療費も削減できますし、従業員は業務に集中できて生産性も上がるというメリットもあります。

同時に、社会からは「従業員を大切にしている企業」と思われ、イメージアップにもつながります。健康経営を推進している企業の証となる「健康経営優良法人」は、今や社会も企業を見極める判断材料にしています。従業員の身体や心の病を未然に防ぎ、健康を「守る」役割がある企業において、産業保健師の存在は、健康経営の促進にもつながります。

人事労務担当者の負担が軽減される

従業員が少ない企業では、健康診断の手続き、ストレスチェックの実施などを人事労務担当者が兼務することが多いようです。当然ですが人事労務担当者は健康管理のプロではないので、正しい知識を持っているとは限りません。自分の業務もある中で、こうした業務を兼務するのは負担になることでしょう。産業保健師がいることで、人事労務担当者の負担も削減できます。

産業医の負担が軽減される

産業医の業務を産業保健師がサポートすることで、産業医は自分の業務により集中できます。特に産業医は訪問回数が少ない上、面談の時間も人数も限られているので、社員の健康状態の把握に限界があります。そこを日頃から社員を見ている産業保健師が事前にヒアリングした内容を報告することで、産業医の現場での実務もスムーズになります。

産業保健師を設置する際の注意点

従業員のカウンセリングを行う産業保健師

新たに産業保健師を設置するにあたり、企業担当者は何に注意すべきなのでしょうか。事前に把握してリスク回避につなげましょう。

信頼できる人物かどうか見極める必要がある

社員の健康情報はプライベートなことなので、当然産業保健師には守秘義務があります。設置の際は、守秘義務をしっかりと遂行できる、任せられる人物を選ぶ必要があります。

設置にコストが発生する

産業保健師を設置するには自社で募集するか、産業保健師紹介サービスを利用する手段があります。前者の場合、採用担当者に産業保健師のスキルを見極めることはきわめて困難と思われるため、紹介サービスの利用がおすすめです。

紹介サービスでは、質の高いプロの産業保健師をそろえているほか、コーディネーターが継続的にサポートしてくれます。1日単位から雇用することが可能で、例えばある紹介サービスでは、1日(6時間)5万円からの費用となっています。

なお、労働者健康安全機構では、従業員50人未満の企業が保健師を選任した場合、「小規模事業場産業医活動助成金」として、企業に「1事業場当たり6カ月あたり10万円を上限とし、2回まで」助成金を支給するとしています。こうした制度の利用も検討しましょう。

まとめ

産業保健師は、単に社員の健康を管理するだけではなく、産業医と企業、社員との架け橋という重要な役割を持ちます。さらに、設置することで、企業にとっては健康経営の促進、ブランドイメージの向上にもつながります。

設置に法的義務こそありませんが、企業や社員にとってプラスの存在であることは事実でしょう。ぜひ貴社も産業保健師の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

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