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2026年健康診断の項目見直し!企業が対応すべき義務と変更点

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更新日: 2026.05.12
2026年健康診断の項目見直し!企業が対応すべき義務と変更点
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

この記事のポイント
  • ● 2026年4月中の省令公布が進められており、2027年4月施行予定の「一般健康診断の項目見直し」の全容を整理しました。
  • ● 血清クレアチニン検査の追加や女性特有の問診導入など、企業が負う法的義務とコストの増加を明示します。
  • ● 人事担当者が陥りやすい「違法な検査省略」や「プライバシーの侵害」といった落とし穴を回避できます。

企業の健康管理において、定期的なルールの見直しへの対応は避けて通れません。

労働安全衛生法にもとづく一般健康診断の検査項目が、数年ぶりに大きく変更される予定です。

本記事では、制度変更の全容と、現場で直面する生々しい課題の解決策を具体的に整理しました。

表面的な法改正の知識だけでなく、自社の健康管理体制の整備に役立ててみてはいかがでしょうか。

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2026年(2027年施行)一般健康診断の項目見直しとは

2026年4月省令公布から2027年4月施行までの健康診断見直しスケジュール.jpg

労働政策審議会の検討会での内容を踏まえ、2026年4月中に省令改正が進められており、2027年4月の施行を目指す見通しです。

2027年4月施行予定の一般健康診断項目の見直しに関して、以下の基本内容を解説します。

  • ● 施行時期:省令公布は2026年4月、実運用(項目変更)は2027年4月
  • ● 先行施行:産業医関連の報告義務など一部は2026年8月に前倒し
  • ● 企業の課題:健康状態の早期把握、コスト増加への対応、新ルールの社内通知

厚生労働省による関連省令の公布と施行スケジュール

労働安全衛生法に基づく健康診断の項目見直しについて、厚生労働省は段階的なスケジュールを提示しています。

具体的には、関連する省令が2026年4月に公布されました。

そして、実際の検査項目の変更が現場で施行されるのは2027年4月1日です。

ここで注意すべきは、すべてのルールが一律で2027年に施行されるわけではないという事実です。

例えば、産業医を解任した際の報告義務などは、2026年8月1日より先行して施行される予定です。

全体のタイムラインを正確に把握し、前倒しで対応計画を進めてみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案の概要について(諮問)(産業医関係)」

労働安全衛生法にもとづく改正の背景と企業の課題

法改正の背景には、労働人口の高齢化や疾病構造の複雑な変化が存在しています。

国全体で人的資本経営が推進される中、従業員の健康状態を早期に把握する重要性が極めて高まっています。

企業側の課題として、変更に伴う深刻なコスト増加や運用ルールの見直しが挙げられます。

  • ● 検査項目の増加に伴う健診機関への支払い費用の増大
  • ● 新たな検索項目に対する従業員への丁寧な周知活動
  • ● プライバシーに配慮したセンシティブなデータ管理体制の構築

項目が増えれば健診機関に支払う費用も上がり、予算超過のリスクが高まります。

さらに、新たな検査に対する従業員への周知や、厳密なデータ管理体制の再構築も急務となります。

自社の課題を早期に洗い出し、次年度に向けた予算編成に組み込むことを検討してみてください。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

【2027年4月施行】労働安全衛生法の改正による健康診断項目の変更点

血清クレアチニン検査追加と喀痰検査廃止などの変更点まとめ.jpg

慢性腎臓病対策の血清クレアチニン検査追加、喀痰検査の廃止、女性特有の健康課題に関する問診導入が主な変更点です。

ただし、厚生労働省のガイドライン通りに項目を追加するだけでは、現場での不満噴出や運用破綻を招くケースが後を絶ちません。

2027年4月から施行される一般健康診断項目の変更点は、以下の3つです。

  • ● 血清クレアチニン検査(慢性腎臓病の早期発見)の追加
  • ● 喀痰検査の廃止
  • ● 肝機能検査の名称変更

「2027年までに準備すればよい」と認識していると、準備が間に合わない可能性があります。

改正点はいち早く理解して、社内の制度や体制整備に努めることが重要です。

参考:厚生労働省「労働 安全衛生規則等の一部を改正する省令案等の概要について(諮問及び報告)(一般健康診断の検査項目等関係)」

血清クレアチニン検査の追加

最も大きな変更点の一つが、血清クレアチニン検査の一般健康診断への追加です。

この検査は、自覚症状に乏しい慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)の早期発見を主目的として導入されます。

尿蛋白や血圧に異常がなくても、腎機能の低下を早期に把握し、重症化を防ぐことが確実な狙いです。

血清クレアチニン検査はこれまではオプション扱いでしたが、労働安全衛生法にもとづく法定項目として標準化されます。

ただし、40歳未満の労働者については例外規定が設けられている点を押さえておきましょう。

産業医などの医師が必要でないと認めた場合に限り、本検査を省略できるというルールがあります。

参考:Uchida D, Kawarazaki H, Shibagaki Y, et al. Underestimating chronic kidney disease by urine dipstick without serum creatinine as a screening tool in the general Japanese population. Clin Exp Nephrol. 2015;19(3):474-480.

【注意点】項目追加だけでなく事後措置フローの構築も不可欠

新たに追加される血清クレアチニン検査で「異常(CKD疑い)」と判定された従業員がでた場合、人事担当者は産業医の意見を聴取し、速やかに就業上の配慮(残業禁止、深夜業免除など)を行う必要があります。

例えば、血清クレアチニン検査値が異常高値の場合、二次検診や精密検査で腎機能の指標であるeGFR(推算糸球体ろ過量)を検査します。

その上で、数値が45mL/min/1.73m2未満まで低下しているケースでは、主治医への受診勧奨に加え、産業医の判断で以下の具体的な措置指示が出される事例が増加する可能性があります。

  • ● 月45時間以上の時間外労働の制限
  • ● 深夜業務の免除

ただ項目を追加して終わりではなく、こうした事後措置の具体的な運用フローをあらかじめ設計しておくことが、現場の混乱を防ぐ鍵となります。

参考:Isoda A, Saeki S, Katagiri D, et al. Kidney Function Tests in Health Checkups for Specified Skilled Workers: A Case-based Suggestion. JMA J. 2025;8(4):1392-1395.

喀痰検査の廃止

追加項目がある一方で、喀痰(かくたん)検査は、今回の見直しで廃止されます。

これは最新の医学的知見と、実施による費用対効果の観点から方針が大きく転換されたためです。

肺がん検診においては、重喫煙者を対象とした低線量CT検査の導入へとシフトしつつあります。

肝機能検査の名称変更

肝機能検査の名称も時代に合わせて変更される予定です。

従来の日本独自の名称から国際基準に沿った表記へと統一することが目的とされており、変更前後の名称は以下の通りです。

  • ● GOT→AST
  • ● GPT→ALT
  • ● γ-GTP→γ-GT

なお、事業者や労働者に名称変更による混乱が生じないよう、必要に応じて健康診断個人票に新名称と旧名称を併記しても構わない旨が、健診機関に周知される予定です。

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2026年から先行導入が進む「女性特有の健康課題に関する問診」とは

女性特有の健康課題に関する問診票にタブレットで記入する女性従業員.jpg

2027年施行の法定項目見直しとは別軸で、2026年から先行して任意の「女性特有の健康課題に関する問診」を導入する企業が急増しています。

しかし、配慮のつもりが「プライバシー侵害」や「ハラスメント」に発展するリスクがあり、慎重な運用が不可欠です。

教科書通りの対応では、かえって従業員の反発を招くおそれがあります。

2025年12月の「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」において、月経困難症や更年期障害といった女性特有の健康課題を「任意の問診項目」として盛り込むことが適当とされました。

これを受け、2026年1月に厚生労働省から実施マニュアルが公開され、健康管理の一環としていち早く対応を進める企業が増加しています。

この問診は、特定の疾病を医学的に確定診断するものではなく、労働者自身の「気づき」を促すものです。産業保健スタッフへの相談や職場環境の整備(就業上の配慮)へつなげるきっかけとして機能します。

産業医が関与した事例でも、問診結果を直属の上司が不用意に閲覧し、ハラスメント問題に発展したケースがあります。

本問診の導入は、すべての企業に対して「機微情報の厳格な取り扱いルール」の策定を迫るものです。

従業員が不安なく回答できる心理的安全性と、専門職のみがデータにアクセスできる強固な運用環境作りを進めてみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル」及び「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」を公表します」

健康診断における企業の義務と人事担当者が陥る実務上の落とし穴・対応

健康診断の追加費用や法的リスクに直面し悩んでいる様子の人事労務担当者.jpg

企業には追加項目費用の全額負担と産業医連携にもとづく適法な運用、厳密な情報管理が法的に義務付けられます。

コスト削減のために「40歳未満の検査を一律で省略する」といった安易な判断は、労働基準監督署の是正勧告を招くリスクがあります。

費用負担や適法な運用策、情報管理の方法について詳しく解説します。

重要ポイント(要約)
費用負担:法定項目のため、追加検査費用は全額会社(事業者)が負担する義務
検査省略の罠:40歳未満の検査省略は、「産業医の意見聴取」が法的に必須
情報管理:女性の問診データは人事や上司の閲覧厳禁。回答は完全任意

追加検査費用の会社負担と予算管理のポイント

血清クレアチニン検査が法定項目に追加されることで、企業側の健診費用の増加は避けられません。

労働安全衛生法にもとづく法定項目であるため、追加費用は全額会社(事業者)が負担する義務があります。

健診機関の契約内容により、基本コースに組み込まれるかオプション扱いになるかで費用変動が生じます。

2026年度中に契約中の健診機関から事前見積を取得し、次年度予算へ組み込んでおきましょう。

かつて存在した「ストレスチェック助成金」のような都合のよい資金援助制度はすでに廃止されています。

外部からの補助金に頼らず、全額自社負担を前提とした現実的な資金計画を立ててみてはいかがでしょうか。

従業員の検査省略に関する産業医との連携義務

40歳未満の従業員に対する血清クレアチニン検査は、一定条件を満たせば省略が可能です。

しかし、コスト削減のみを目的として、人事部や経営陣が独断で省略してはいけません。

省略可能となるのは、「医師(自社の産業医など)が総合的に判断して必要でないと認めた場合」のみです。

産業医の意見聴取を経ない独断は安全配慮義務違反に問われるリスクがあります。

省略を選択する際は、必ず産業医との面談や意見聴取プロセスを実直に実施してください。

また、その判断根拠を衛生委員会の議事録などに記録しておき、いつでも提示できるよう明確に残しておくべきです。

プライバシー保護とセンシティブな健康情報の管理

女性特有の健康課題に関する問診結果は、個人の尊厳に関わるセンシティブな個人情報です。

このデータは労働者本人の明確な同意なしに、人事部や直属の上司が閲覧することは制限されています。

不用意な情報共有は、職場内でのハラスメント設定や解決困難な労働争議に発展するおそれがあります。

取得した問診データは、産業医や保健師などの医療専門職のみがアクセスできる体制を構築しなければなりません。

そのためには、自社で利用している労務管理システムや健康管理SaaSの閲覧権限設定の見直しが急務です。

先行してベンダーに閲覧権限の分離・改善見積もりを依頼した企業のケースでは、要件定義から実装完了までに約3~4ヶ月の期間と数十万円規模の追加コストが発生した事例も存在します。

遅くとも施行の半年前までには、ベンダーとの交渉やシステム改修要件の定義を完了させておくべきでしょう。

また、本問診への回答は完全な任意であり、強制力を持たないことを忘れないでください。

会社側は回答を強要せず、未回答を理由とした不利益な取り扱いを絶対にしないよう社内周知を徹底しましょう。

参考:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」

自社はどう動くべきか?従業員構成で変わる実務対応と予算確保の説得術

経営層への予算説明と健康経営の重要性を説明する人事担当者.jpg

従業員の年齢層や性別比率に合わせて優先課題を見極め、健康経営の文脈で経営層へ予算増額を打診する必要があります。

現場の産業医の視点では、他社の成功事例をそのまま自社に当てはめようとする企業ほど、運用に行き詰まるデータがあります。

業種別の対策や経営層への説得術を紹介します。

重要ポイント(要約)
業種別の対策:ITは検査省略フロー構築、製造業は事後措置、アパレルはデータ保護
予算確保の壁:単なる「法改正対応」という理由だけでは経営層は動かない
説得ロジック:「健康経営優良法人」の認定基準を活用し、戦略的投資として提示

IT・製造・アパレル業における項目見直しへの具体的アクション

従業員構成や実態に応じて、優先的に取り組むべき実務上の課題を正確に見極めましょう。

自社の組織特性を冷静に把握し、健診システムベンダーなどとも早期に連携を図ることが重要です。

業種・特徴 実務上の優先課題とアクション
若年層が多いIT企業 産業医と連携した40歳未満の検査省略フローの構築がコスト削減の鍵。産業医が未選任の場合は、地域産業保健センターを活用して医師の意見を仰ぐ手順を整える。
高齢化が進む製造業
(有害業務あり)
異常所見者の増加に備え、産業医と連携した事後措置のフロー構築が急務。
女性比率が高いアパレル業など 問診データの厳格なアクセス権限設定と社内システムの改修に注力する必要がある。

自社の組織特性を冷静に把握し、健診システムベンダーなどとも早期に連携を図りましょう。

健診のコスト増を経営層に承認させる「健康経営」を活用した説得術

項目見直しによる予算増加を経営層に承認させるには、単なる義務感に訴えない伝え方の工夫が必要です。

「法律が変わるから費用が上がる」という受け身の説明では、厳しい経営環境下で理解を得にくいのが現実です。

そこで、「健康経営優良法人2026」の認定基準改訂などの前向きな文脈を活用してみてはいかがでしょうか。

健康経営優良法人の認定基準では、若年層の健康データ提供や女性の健康保持が企業評価の要件として重視される傾向にあります。

システムのセキュリティ投資や体制整備は、企業価値を高め、優秀な人材定着に繋がる「戦略的投資」です。

投資家からの評価向上や中長期的な離職率の低下といった、経営直結のメリットを提示することが効果的です。

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まとめ:2026年の健康診断見直しは産業医と連携した確実な対応を

2026年の省令改正に伴う健康診断の項目見直しは、企業にとって事業継続に関わる課題の一つです。

血清クレアチニン検査の追加や女性の問診導入による変更点を正確に把握し、自社に最適な計画を立案してください。

人事担当者が独断で対応を進めると、違法な検査省略やプライバシー侵害といった深刻な落とし穴に直面します。

スケジュールを早期に把握し、自社の産業医と密に連携しながら、適切な予算確保と社内体制のアップデートを進めていきましょう。

もし、自社に産業医がいない場合や、選任していても実質的な相談体制が十分に機能していない場合は、外部の専門サービスを活用するのも一つの方法です。

ワーカーズドクターズでは、自社の課題に応じた最適な産業医をご紹介し、法改正への対応から事後措置のフロー構築まで手厚くサポートします。健診体制の見直しでお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。

ワーカーズドクターズ|産業医サービスのご紹介

公開日: 2026.05.12
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