労働者が健康に仕事をできるようサポートする産業医。しかし、労力をかけて産業医を選任しても、「自社に合わなかった」というケースは珍しくありません。そのような時は速やかに、産業医の変更を検討するといいでしょう。
本記事では、産業医を変更したほうが良いケースや変更に伴う手続き、産業医を選任する時のポイントなど、詳しく解説していきます。
経営者や人事労務担当者の方々が産業医についてより良い判断を行い、自社の健康経営の改善の参考になれば幸いです。
労働者が健康に仕事をできるようサポートする産業医。しかし、労力をかけて産業医を選任しても、「自社に合わなかった」というケースは珍しくありません。そのような時は速やかに、産業医の変更を検討するといいでしょう。
本記事では、産業医を変更したほうが良いケースや変更に伴う手続き、産業医を選任する時のポイントなど、詳しく解説していきます。
経営者や人事労務担当者の方々が産業医についてより良い判断を行い、自社の健康経営の改善の参考になれば幸いです。
産業医の変更を検討した方がいいケース
まずは、産業医の変更を検討した方が良いケースをご紹介します。自社に当てはまるものがないか、確認をしてみてください。
産業医としての業務を行なわない
産業医としての業務は、「労働安全衛生規則第14条第1項」で定められています。主な業務内容としては下記の通りです。
引用:厚生労働省 産業医について
- (1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措 置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。
- (2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
- (3)労働衛生教育に関すること。
- (4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
つまりストレスチェックや労働者との面談、職場巡視などを行う事を法律で定められています。これは、産業医の最低限の業務とも言えます。
しかしながら、「ストレスチェックの実施者を務めようとしない」「月に1度の職場巡視に来ない」「理由をつけて面談を行なってくれない」…など、当てはまれば要注意です。
労働基準監督署への届け出だけ済ませて実働がほとんどないケースも稀にあります。つまり、名ばかりの産業医となってしまっていないか、改めて違法となっていないか今一度チェックしてみてください。
従業員との面談で産業医としての的確なアドバイス・改善策を提案できない
さらに、産業医としてのスキルが乏しいケースもあります。定められた業務の中でも重要となる「従業員との面談」において、産業医として的確なアドバイスや改善策を提案できない、提案できるだけの知識を持っていない、などが挙げられます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、精神面での不調が多くなるなど、最近は特に、メンタル面でのサポートが重要視されています。産業医にメンタルヘルスの知識が必要な義務はありませんが、労働者から求められた相談に応じられなくては、産業医としての職務を果たしているとは言えません。
最悪の場合、不適切なアドバイス・対応により労働者の健康状態を悪化させてしまうことも考えられます。改善の姿勢が見られなければ、解任・変更の検討が望ましいと言えます。
人事・労務部門と並走して健康経営を促進しようする姿勢が見られない
産業医は、人事・労務部や経営者と並走する姿勢が重要です。労働者のヘルスケアを行う事は、企業全体の健康経営の促進に繋がります。しかし、産業医が本質的な役割を理解しておらず、経営の面から適切なアドバイスが出来ていないケースもあります。
また、労働者の健康状態に問題が起きた際、産業医は中立的な立場で人事労務部・主治医・労働者の上司と連携する必要があります。産業医が労働者のことを考えたコミュニケーションを取れているかどうかも、チェックポイントのひとつです。
産業医の変更手続き方法
次に、産業医の変更手続きについてご説明します。基本的に、産業医の選任と同じような手順を踏めば問題ありません。ただし、現在の産業医を解任してから14日以内に新たな産業医を選任する必要があります。
変更手続きは、選任の際に使用した「産業医選任報告」を用意し、医籍番号のわかる「医師免許証のコピー」を添付して労働基準監督署へ提出します。「産業医選任報告」は、厚生労働省の公式HPから入手可能です。
実際の「産業医選任報告」の書類はこちらです。
■ 引用:厚生労働省 産業医選任報告様式
報告書類の主な記入内容は下記の通りです。
加えて、前任の産業医を解任する際は、書類下部の
辞任・解任の年月日は新たな産業医の選任日と同一である必要はなく、過去14日以内であれば問題ありません。補足として、解任のみを報告する書類や手続きはなく、新たな産業医を選任した際に併せて解任した旨を報告する形となります。
産業医を早急に変更できない場合2名体制を検討しても良い
産業医を早急に解任・変更したい場合でも、すぐに手続きができないケースもあります。 産業医との相互の承諾や契約上の理由、経営者・企業との付き合い等により、解任までに時間がかかってしまうこともあります。
そのような場合、一時的に産業医を2名体制にすることもひとつの手です。通常、産業医を2名体制で置いているのは労働人数が3,000人以上の大企業が中心です。しかしその条件に達していなくても、義務を果たしていれば複数の産業医との契約は可能です。
特例で2人体制にしている間、2名分の費用が発生するデメリットもありますが、労働者の健康状態・職場環境を優先するのであれば、産業医に相談できない期間をなくし早急に意思決定することも重要です。
失敗しない産業医の選び方のポイント
「次こそ失敗したくない」と産業医選びに慎重になっている人事労務担当者・経営者に向け、産業医選びで失敗しないために見るべきポイントや、新しい産業医のスムーズな見つけ方をご紹介します。
前任の解任理由をもとに会社の求めている産業医像を明確化する
まず、会社のヘルスケアを安心して任せられる産業医かどうかの見極めが大切です。採用の際も、産業医という特別な枠組みで考えず、一般社員と同様に「会社の求めている人材かどうか」を判断します。その際に判断材料となるのが、「なぜ前任の産業医は自社に合わなかったのか」という点です。
冒頭で「産業医の変更を検討した方がいいケース」をご紹介しましたが、その上でなぜ今回は合わなかったのか、自社は産業医に何を求めているのかを明確にしておくと良いです。採用前に明確化することで、より良い産業医選任へ繋がります。
産業医紹介サービスの活用もおすすめ
また、産業医を見つけるには、経営層からの紹介、医師会等の紹介も多く見受けられます。しかし、経営層の紹介や医師会等の紹介は付き合い上の理由などで、自社に合う産業医を見極めることが難しいです。より良い産業医を見つける最善の方法として、産業医の紹介サービスの活用がおすすめです。
紹介サービスは、産業医に関して熟知しているスタッフが企業と産業医の間に入り、中立的にサポートしてくれることがメリットです。また、前任で何が問題だったのかを伝えることで、問題点を改善してくれるような産業医をスムーズに見つけ出してくれます。また、精神科や婦人科など担当の産業医が専門領域でなくてもバックアップする専門医がいる、これが産業医紹介サービス会社の強みです。さらにWORKERS DOCTORSでは業界、業種ごとに異なる産業保健活動の課題に対して的確な指導ができる産業医をそろえております。
まとめ
今回は、産業医の変更について解説してきました。
産業医の存在は、労働者の心身の安全・企業の健康経営を促進するために欠かせない存在です。そのため、「自社に合わないな」と感じた場合は躊躇なく、解任・変更の検討をおすすめします。
また、次の産業医選びに失敗しないためにも、中立的な立場でサポートしてくれる「産業医紹介サービス」を活用してみてはいかがでしょうか。産業医の選任でお困りの場合は、いつでもWORKERS DOCTORSへご相談ください。