【2026年施行予定】改正労働施策総合推進法とは?改正ポイントと具体的な取り組みについて解説
- 産業保健
【2026年施行予定】改正労働施策総合推進法とは?改正ポイントと具体的な取り組みについて解説
改正労働施策総合推進法は、働き方改革の一環として、職場におけるハラスメント防止や中途採用の促進、若者の雇用機会の確保などを目的とした法律です。この記事では改正の背景や主なポイント、企業が求められる具体的な取り組みについて分かりやすく解説していきます。
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1. 改正労働施策総合推進法とは?

1-1 労働施策総合推進法の概要
労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)は、労働者が生きがいを持って働ける社会の実現を目的に、2020年に施行されました。この法律は、雇用の安定や職業生活の充実を支援するための枠組みを定めており、働き方改革の一環として位置づけられています。
多様な労働者が活躍できる就業環境の整備をはかるため、「ハラスメント対策の強化」、「女性活躍推進法の有効期限の延長を含む女性活躍の推進」、「治療と仕事の両立支援の推進」等の対策をとることとしています。特に注目すべきは、2019年5月の改正により、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止措置が企業に義務づけられた点です。これにより、大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から対応が求められており、この法律は通称「パワハラ防止法」とも呼ばれています。
1-2 【2026年施行予定】労働施策総合推進法の改正の目的
今回の改正法は2025年6月4日に成立し、同年6月11日に交付されました。施行時期は「交付後1年6か月以内に政令で定める日」とされており2026年中の施行が予定されています。一部の規定に関しては先行して2026年4月1日に施行されます。今回の改正の目的は、職場におけるハラスメント対策やさらなる女性活躍の推進等の対策を講じることによって、多様な労働者が活躍することができる職場環境を整備することです。2.【2026年施行予定】労働施策総合推進法の改正ポイントと施策内容

今回の法改正の大きな柱となるのは、①ハラスメント対策の強化、②女性活躍推進法の有効期限の延長を含む女性活躍の推進、③治療と仕事の両立支援の推進の3つです。
以下で、それぞれの施策について詳しく解説していきましょう。
2-1 ハラスメント対策の強化(義務化)
今回の法改正では職場外からのハラスメント(カスタマーハラスメント) と、 採用段階でのハラスメントが初めて法的義務の対象に加えられました。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害することを指します。カスタマーハラスメントへの対策は交付日から1年6か月以内に施行され、カスタマーハラスメントを防止するために事業主には雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されます。
また、これまでハラスメント(特にセクシュアルハラスメント)対策の対象は、主に在職中の労働者を対象としていました。しかし改正後は、採用選考過程にある求職者・内定者・インターンシップ参加者 も対象となります。採用面接時やインターンシップなどでの求職者や内定者に対するセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主に対して雇用管理上必要な措置(面接時のルール作成や相談窓口の設置等の対応)を講じることが義務化されます。
参考:厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等 の一部を改正する法律の概要」
参考:厚生労働省「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内」
2-2. 女性活躍の推進(義務化)
女性活躍推進法とその関連規定との連携がなされ、労働施策総合推進法の枠組みにおいても、女性活躍分野の強化がはかられます。それに伴い、2025年度末(2026年3月)で期限を迎える女性活躍推進法の有効期限を10年延長し、2036年3月31日まで有効となります。
改正後は、従業員数101人以上の企業に対し、男女間賃金差異と女性管理職の比率の情報を毎年公表することが義務化され(2026年4月1日施行)、情報公開義務を通じて性別による待遇差や昇進・管理職登用の格差を “見える化” し、企業・社会における格差是正を促します。
また、女性活躍の推進に関する取り組みが特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)の認定要件に、求職者等に対するセクシャルハラスメント防止に対する措置の内容を公表していることが追加されます(交付日から1年6か月以内に施行)。この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として社内外にアピールすることが可能となり、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあります
参考:厚生労働省「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内」
2-3. 治療と仕事の両立支援の推進(努力義務)
事業主に対して、これまで任意対応だった職場における治療と就業を両立するために必要な措置を講じることが努力義務となります(2026年4月1日 施行)。両立支援のために適切かつ有効な実施をはかるための 指針制定の根拠規定 が改正法により整備されることとなり、事業主に対して両立支援の視点を促すことで、柔軟な勤務制度(時短勤務制度、勤務時間の調整、休暇制度の弾力化等)や環境整備(配置換え、在宅勤務対応など)が進むことが期待されます。3. 企業が「今から」取り組むべき対策

3-1. カスハラ・就活セクハラ防止に向け、基本方針・基本姿勢を定める
企業として「ハラスメントを絶対に容認しない」という姿勢を明確に打ち出し、従業員、顧客、取引先、求職者など社内外に周知することが第一歩となります。主な取り組みとして、以下のような対策があげられます。
(例)
・代表取締役名で対外公表する「ゼロトレランス方針」(顧客等も対象)を策定し、社外発信する
・定めた方針を就業規則や社内規定に反映し、定期的に見直しを行う
・方針策定後も定期的に見直し、実態に即した改善を行う
・社員アンケートや相談実績、苦情対応の状況を踏まえて改善サイクル(PDCA)を回す
参考:厚生労働省「ハラスメント対策の総合情報サイト あかるい職場応援団」
3-2. 採用プロセスの見直し
採用段階でのセクシュアルハラスメント(いわゆる「就活セクハラ」)を未然に防ぎ、求職者やインターン生が安心して応募できる環境を整備することが大切です。
(例)
・面接官ガイドラインを作成する(NG質問:結婚・出産の予定、家族構成、「女性は残業できないよね?」など性別を前提とした発言など)
・複数面接を原則化する
・候補者向けの相談窓口を設置する
・リクルーターへの研修を行う など
3-3. 社内制度の見直し
改正法に対応すべく、ハラスメント防止、女性活躍推進、治療と仕事の両立支援ができる制度基盤を整えましょう。
(例)
・ハラスメント防止のため、相談窓口の設置や対応マニュアルを策定する
・女性活躍推進法への対策として、賃金差・管理職比率の測定方法を確率する
・両立支援のための制度(時差出勤・時短勤務・休暇制度など)を見直す など
3-4 社内研修及び周知
制度を形だけで終わらせるのではなく、「職場の文化」として定着させるために意識啓発を促しましょう。
(例)
・ハラスメント対策や両立支援等に関する社内研修を定期的に実施し、意識を定着させる
・新入社員・中途採用研修にもハラスメント対策や両立支援、ダイバーシティーに関する研修内容を盛り込む
・基本方針や社内制度について、社内掲示等を通じて的確に周知する など
4. まとめ:2026年の改正法施行に向け、今からできる社内環境の見直しを!
2026年施行予定の改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメントや就活セクハラ防止、女性活躍推進、治療と仕事の両立支援が強化されます。企業は今のうちから、ハラスメント「ゼロ」を宣言する基本方針の策定や採用時の面接ルールの整備、相談窓口の設置など社内制度の見直しが必要となります。また、全社員を対象とした研修や社内周知を行い、安心して働ける環境づくりを推進することが重要です。全社員が働きやすい社内環境を目指し、対策を進めていきましょう。
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