労働安全衛生法の企業が押さえておくべき条項や罰則を解説

2021年12月20日

労働安全衛生法について

厚生労働省が2019年に発表した「働き方改革」や、2020年以降から続く新型コロナウイルス感染症などを受け、近年はとりわけ労働環境を大きく見直す取り組みが続いています。

つまり、現代社会ではそれだけ労働者の安全衛生や健康、働きやすさが重要と認識されているのです。

そこで、関連する法律として「労働安全衛生法」に注目してみましょう。

この記事では、労働安全衛生法の概要や企業の経営層や人事労務担当者が最低限認識しておくべき条項、違反した場合の罰則について解説していきます。

労働安全衛生法とは?制定の目的と背景についても

労働安全衛生法制定の目的と背景

労働安全衛生法(安衛法)は「職場における労働者の安全と健康を確保」し、そのうえで「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。

もともと労働安全衛生に関する法律は労働基準法で定められていましたが、1960年代の高度成長期に労働災害が急増しました。

そこで集中的に労働安全についての決まりごとを整備する必要があると協議された結果、1972年に可決成立した背景があります。

同法内では事業者に様々なことを義務づけており、怠った場合には罰則が科される可能性があります。関連する新制度の創設や法改正といった動きもあるため、最新の情報を確認することが重要です。

法律が掲げる目的を果たす手段としては、管理体制の敷設や危険や健康被害の防止、継続的な労働者の健康への配慮など、多角的かつ計画的な措置となります。

措置を講じなければいけない領域は危険物・有害物から、職場環境やメンタルヘルスに関するものまで相当な広範囲にわたるため、一部の代表的な条項について以下に解説していきます。

管理者の配置(第三章:安全衛生管理体制より)

管理者の配置(第三章:安全衛生管理体制より)

労働安全衛生法の第三章(安全衛生管理体制)では、業種や事業場(店舗や営業所など一定程度独立して業務が行われている場所の単位)の規模に応じて、労働者の安全と健康を守る管理者を配置すべき旨が規定されています。

同法が定める管理者は次の4種類です。

労働安全衛生法が定める「管理者」の種類

  • ・総括安全衛生管理者
  • ・安全管理者
  • ・衛生管理者
  • ・産業医

とりわけ仕事における危険や健康リスクが高い業種(建設業、製造業、電気業など)では、「総括安全衛生管理者」が管轄トップに立ち、労働安全コンサルタントや産業安全業務経験のある人材が「安全管理者」として置かれる構成がよくみられます。

業種にかかわらず、常時50人以上の労働者を使用する事業場では「衛生管理者」と「産業医」を必ず選任する必要がある点には注意が必要です。

危険や健康被害の防止(第四章:労働者の危険又は健康障害を防止するための措置より)

危険や健康被害の防止

労働安全衛生法の第四章(労働者の危険又は健康障害を防止するための措置)では、労働者の作業中の危険や健康被害に対して防止措置をとるべき旨を規定しています。

「危険」は、作業場の機械や器具によるもの、火や電気、その他エネルギーに関するもの、墜落や崩落のおそれのある場所での事故に関するものなど様々です。

「健康被害」は、有害物質が発生する場所や高温・低温、異常気圧となる場所、騒音や振動の激しい場所などの過酷な環境で被るものを指します。

措置のとり方については、労働安全衛生法を具体的に落とし込んだ省令「労働安全衛生規則」に記載があります。

具体的には、高所作業で安全帯を着用する義務、物体が落下するおそれのある場所でのヘルメット着用義務、特定の条件下における悪天候時の作業禁止などです。

そのほか、実際の労働環境に合った措置を効果的に取り入れるため、各事業者はリスクアセスメントを実施する努力義務があります。

リスクアセスメントは自社事業における危険や健康被害の特定、そのリスクの見積り・評価、リスクを低減する措置の策定などを一連の流れで行うため、努力義務とはいえ実質必須と考えた方が良いでしょう。

労働者の健康への配慮(第七章:健康の保持増進のための措置より)

労働者の健康への配慮

労働安全衛生法の第七章(健康の保持増進のための措置)では、労働者の健康を持続的に守るためにとるべき措置について規定しています。

現在、同法上で健康を害するものとして考えられているのが、主に有害な作業環境や深夜労働、長時間労働です。

そのため、事業者には作業環境測定や作業時間の把握・制限、健康診断やストレスチェック(※)の実施などが義務付けられています。

※2014年6月の改正より義務化

測定や診断の結果から健康リスクが認められた場合は、医師による保健指導や面接指導、就業場所の変更、労働時間の短縮といった措置をとらなくてはなりません。

労働者側にも健康を保持する努力義務はありますが、基本的に事業者が労働者の健康に関する調査・記録・管理・措置を一貫して行う必要があるのです。

また2019年4月の法改正では、とりわけ長時間労働を要因とする健康リスクへの対応を強化しているため、詳細は後述します。

快適な職番環境への取り組み(第七章の二:快適な職場環境の形成のための措置より)

快適な職番環境への取り組み

労働安全衛生法の第七章の二(快適な職場環境の形成のための措置)は、快適に働ける職場環境づくりについて規定しています。

「快適な職場環境」というのは、一般的に人が過ごしやすいと感じられる環境や、作業にともなう心身の負担が少ない環境のことです。

これを実現することで労災や健康被害の防止だけでなく、職場モラルや生産性の向上が期待できます。

具体的な措置については関連省令である「事務所衛生基準規則」などに記載があります。

たとえば、職場の日常的な清掃や換気、肉体的負荷のかかる作業の自動化、夜間勤務が発生する場合に必要な仮眠用設備の設置、作業に必要な照度(照明設備の明るさ)の確保など様々です。

こうした取り組みは継続的かつ計画的に、個人差への配慮も意識することが望ましいでしょう。

罰則の対象となる代表的なケース(第十二章:罰則より)

罰則の対象となる代表的なケース

労働安全衛生法の第十二章(罰則)では、同法が規定する義務に応じない場合、違反行為として懲役または罰金が科されることを明記しています。

以下は一部ケースとなりますが、主な罰則内容について量刑の重い順にご紹介します。

3年以下の懲役または300万円以下の罰金

  • ・労働者に重度の健康障害を生ずる危険物や有害物を無許可で製造・輸入・使用した場合(第百十六条)

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

  • ・各種免許試験における指定試験機関の役員や免許試験員などが、試験事務に関して知り得た秘密を漏洩した場合(第百十七条)
  • ・労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントがその業務において知り得た秘密を漏洩・盗用した場合(第百十七条)

6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金

  • ・高圧室内作業、その他労働災害を防止するための管理を必要とする作業にあたり、作業主任者を選任しなかった場合(第百十九条)
  • ・労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じなかった場合(第百十九条)
  • ・伝染性の疾病で厚生労働省令に定められている疾病に罹患した従業員の就業を禁止しなかった場合(第百十九条一号)

50万円以下の罰金

  • ・事業場に配置すべき管理者を事業者が選任をしていなかった場合(第百二十条一号)
  • ・厚生労働省令の定めに沿って安全衛生教育を実施しなかった場合(第百二十条一号)

悪質なものから軽微なものまで区別なく違法行為となるため、罰則事項は必ず把握しておきましょう。

労働安全衛生法の直近における改正ポイント

労働安全衛生法の直近における改正ポイント

労働安全衛生法は、時代とともに移り変わる社会のあり方や働き方に合わせ、過去に何度も見直し改正が行われています。

直近で重要となるのは2019年4月の改正でしょう。本改正は、いまでも社会問題となっている「長時間労働」を是正する一貫で行われました。

東京労働局によれば、改正ポイントは以下の5つとされます。

2019年4月改正労働安全衛生法の改正ポイント

  • ・労働時間の状況把握
  • ・医師による面接指導
  • ・産業医産業保健機能の強化
  • ・法令等の周知の方法等
  • ・心身の状態に関する情報の取り扱い

総括すると、前提として超過労働が起きないよう管理しつつ、万が一起きた場合に必要となる面接・保健指導や産業医との連携体制を強化し、その内容について正しく労働者へ周知するところまでを事業者に要請しているのです。

▼参考資料はコチラ
改正労働安全衛生法のポイント 東京労働局 労働基準部 健康課

まとめ

労働安全衛生法は義務と違反時の罰則について定めた法律ですが、その本質は労働者の安全と健康、そして働きやすさのためにあります。

罰則があるから安衛法を守るのではなく、大切な労働力となる従業員のために守るのです。それが結果的に企業の生産性や、企業に対する対外的・対内的な信用維持につながります。

法律の内容とともにストレスチェック制度や2019年の法改正などの更新情報もよく理解した上で、必要な措置を講じ、より安全な職場環境を目指しましょう。

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