産業医の選任方法について詳しく!義務や罰則についてもご紹介

2021年08月20日

産業医の専任について相談している様子

会社で働く従業員の健康管理において、産業医の存在は非常に重要です。産業医を置くことで職場環境も良好になり、健康障害を未然に防げるメリットもあります。

今回は、産業医の選任を検討している経営者や人事・労務担当者に向け、産業医選任の義務が生じる人数規模や法律、罰則等について詳しく解説していきます。

産業医の選任義務

産業医の設置に関する法令は、厚生労働省の「労働安全衛生規則」で定められています。事業場の規模・事業内容によって、産業医の種別や選任義務が異なりますので、最初に以下の内容をチェックしましょう。

産業医の選任ついて

厚生労働省の「労働安全衛生規則」をもとに、産業医の選任ポイントをまとめると以下の通りです。

  • ①常時50人以上の労働者がいる場合、産業医の選任義務が生じる
  • ②常時1000人以上の労働者がいる場合、または下記に掲げる業務(※1)に常時500人以上の 労働者を従事させる事業場は、専属産業医の選任が義務となる
  • ③常時3000人以上の労働者がいる場合、2人以上の産業医の選任が必要
  • ④法人や事業の代表者は、産業医として選任できない

事業場の労働者が50人に達すると産業医選任の義務が発生し、専属産業医は労働者1000人で1名・3000人以上で2名以上の選任が必要となります。

また、労働者500人以上で専属産業医の選任が義務となる(※1)の業務は以下の通りです。

〜引用〜

  • イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • ホ 異常気圧下における業務
  • ヘ さく岩機、鋲(びよう)機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  • ト 重量物の取扱い等重激な業務
  • チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • リ 坑内における業務
  • ヌ 深夜業を含む業務
  • ル 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • ヲ 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
  • カ その他厚生労働大臣が定める業務

引用:e-Gov法令検索 昭和四十七年労働省令第三十二号 労働安全衛生規則 第十三条 三 〜引用〜

産業医の選任について覚えておくべきは、まず、どの企業でも労働人数が50人になった時点で産業医の設置が義務となる点と1000人以上で専属産業医の選任が義務になる点です。

加えて「労働者」とは、正社員はもちろんのこと、派遣・パート・アルバイトの方々も含まれますので注意しましょう。

嘱託産業医と専属産業医の違い

産業医に相談をしている従業員

前項では、産業医に加えて「専属産業医」というワードが出てきました。実は、産業医は 一般的に呼ばれる「産業医(嘱託産業医)」と「専属産業医」の2種類に分られます。

ここでは、嘱託産業医と専属産業医それぞれの特徴を解説していきます。

嘱託産業医とは

嘱託産業医は、常時50人から999人の労働者がいる事業場で選任が義務づけられている 産業医です。後述する専属産業医との違いは、主に会社との関わり方や働き方にあります。

嘱託(しょくたく)とは、大まかに言えば「非常勤」の形態のことです。あらかじめ業務内容や契約期間を定めておくのが特徴です。そのため正社員ではなく、非正規雇用契約・委任契約・請負契約・業務委託契約といった関わり方や働き方が当てはまります。

また補足すると、嘱託産業医は、普段、病院に勤務している臨床医の場合や大学の研究室で勤務していることがあります。事業場とは月に数回の関わりとなるため、専属産業医と比べると費用が抑えられます。

また、普段は医師として多くの患者さまに関わっているため多角的な視点を持っており、従業員や職場環境の様々な問題点にも気づいてもらいやすいというメリットもあります。

専属産業医とは

専属産業医とは、労働者が1000人以上いる一般企業や、一定の有害業務に常時500人以上が従事している事業場で選任が義務づけられている産業医を指します。

大きな特徴は、事業場専属の産業医として勤務する点です。週4日から5日のフルタイムで契約されることが多く、事業場で働く従業員と共に勤務します。

そのため、問題があればいつでも相談ができ、従業員の変化に気づいてもらいやすいというメリットがあります。嘱託産業医より報酬額は上がりますが、より良い健康管理を徹底するには必要不可欠です。

なお、労働者1000人以上で専属産業医1名の選任が必須ですが、労働者3000人を超えた場合には2名以上選任する義務がありますので注意が必要です。

産業医選任のための届け出と選任しなかった場合の罰則

ここまで産業医選任の義務や、種別についてご説明してきました。最後に、実際に選任する際の届出や、罰則について解説します。

産業医選任のための届出

産業医選任の届出は、選任義務の条件に達した日から14日以内に提出する必要があります。厚生労働省で定められた「産業医選任報告」の書類を記入し、各地域の労働基準監督署へ提出しましょう。

産業医選任報告様式 ■ 引用:厚生労働省 産業医選任報告様式

報告書類の主な記入内容は下記の通りです。

  • ・事業場の基本情報
  • ・労働保険番号
  • ・労働者数
  • ・産業医の基本情報
  • ・産業医の医籍番号

他にも細かな項目がありますので、よく確認しながら記入しましょう。

こちらの届出は、厚生労働省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」でも便利に作成できます。

産業医を選任しない場合、罰則がある

注意のサイン

届出に関して「選任義務の条件に達した日から14日以内に提出」と前述しましたが、産業医選任の期限についても同様です。書類の作成・提出だけでも時間を要しますので、14日以内に提出するためには、条件に達してから選任するのでは間に合いません。やはり前もって産業医の検討や書類準備を進めておく必要があります。

条件に達しているのにもかかわらず、産業医を適切に選任していない・報告書を提出していない場合は法律違反となります。労働安全衛生法の第120条により、50万円以下の罰金が課せられます。このように産業医の選任は、従業員の健康維持や事業のリスクヘッジはもちろんのこと、会社の信用にも大きく関わる重要な手続きです。

現状、条件に達していなくても、事業が急成長し人員拡大する可能性もあるでしょう。余裕のあるうちに産業医について知識を深め、いざという時にスムーズに選任できるよう徹底した準備をおすすめします。

まとめ

本記事では、産業医の選任方法について詳しくご紹介しました。

中でも重要なポイントは3つです。

  • ①労働者が50人を超えると、産業医の選任が義務となる。
  • ②産業医選任の義務を果たさないと法律違反となり、罰則が課される。
  • ③事業場の労働者が50人を超える前に、早めに産業医を見つけておく。

大切な従業員を守り、会社の環境をさらに良くしていくためにも、産業医の選任を早めに検討してみてください。

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