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【産業医監修】年度末のメンタル不調:原因と離職を防ぐ3つの対策

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更新日: 2026.03.27
【産業医監修】年度末のメンタル不調:原因と離職を防ぐ3つの対策
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この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

【監修】佐藤将人 ワーカーズドクターズ提携産業医、合同会社SUGAR代表医師、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、臨床心理士、中小企業診断士、両立支援コーディネーター、健康経営アドバイザー、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

この記事のポイント
  • ● 年度末の不調は、業務量の増加や環境変化、気温・気圧等の要因が重なることで生じます。
  • ● リモート特有の孤立感や、Z瀬田値の突発的な離職には、現場で見落としがちなサインがあります。
  • ● 表面的な声かけではなく、ストレスチェックの運用と専門家との連携が必要です。

AI検索などで「年度末メンタル不調」と調べると、「繁忙期による疲れや寒暖差が原因なので、しっかり休息を取りましょう」などの内容が出てきます。

しかし、現場の管理職や人事担当者が直面する課題は、もっと複雑ではないでしょうか。

「調子を崩した従業員を休養させると現場の負担が増大するのではいか?」

「フルリモートの部下が発するSOSにどう気づけばいいのか?」

「評価面談後に突然辞めてしまう若手を、どうすれば引き留められたのか?」

こうした悩みは、一般的な正論や単なる休息だけでは決して解決しません。

本記事では、産業医の実務経験にもとづき、年度末に起こるメンタル不調の原因と、リモートワーク・Z世代等の状況別の注意点、企業が行うべきメンタルヘルス対策を解説します。

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年度末に起こるメンタル不調の原因は?

3月に重なる物理的・心理的・生理的負荷のメカニズム.jpg

年度末の不調は個人の問題ではなく、2~3月の業務過多・環境変化・気象変動が重なることで生じます。

統計上も3月は年間を通じて自殺のリスクが高まる時期として警戒されています。

しかし、「業務量を減らして休ませる」という教科書通りの対応だけでは現場で失敗します。

なぜなら、3月には「気分は落ち込んでいても、先に行動力だけでが回復する」という特徴があるからです。

年度末に起こるメンタル不調の3つの原因と、起こりうるリスクを解説します。

原因 具体的なストレス要因 現場で起きやすい現象
1.物理的ストレス 決算や納期集中による業務量増大 長時間労働による慢性的な疲労・睡眠不足
2.環境変化への不安 人事異動や評価による環境変化 先行きへの不安とプレッシャーの増大
3.自律神経の乱れ 気温や気圧の激しい変動 「春バテ」や花粉症による体調不良・不眠

参考:厚生労働省・警視庁「令和6年中における自殺の状況」

原因①:繁忙期の業務増大による物理的ストレス

年度末は、決算や納期の集中により、従業員の業務負担が増大する繁忙期です。

業務量の急激な増加は、長時間労働と深刻な睡眠不足を引き起こします。

令和6年の労働安全衛生調査によると、強いストレスを感じる事柄のトップクラスに「仕事の量(43.2%)」が挙げられています。

特に年度末は、納期の集中や決算対応などより年間で最も労働密度が高まる時期であり、建設業や輸送業、情報通信業などで長時間労働が状態化します。厚生労働省の基準でも月80時間は過労死ラインとされ、重大なリスク指標の一つです。

しかし、産業医の経験からいうと、月45時間程度の残業であっても、春先の深刻な睡眠不足や人事評価のプレッシャーが重なれば、脳・心臓疾患や適応障害のリスクは過労死ラインと同等に跳ね上がります。

「まだ80時間に達してないから大丈夫」という過信は禁物です。脳の疲労が回復しないまま働き続けると、判断力や感情のコントロール機能が低下し、うつ病や適応障害を発症する可能性が高まります。

特定の個人への業務偏重を防ぎ、労働時間を客観的に把握する仕組みづくりが急務です。

参考:厚生労働省「令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」

参考:厚生労働省「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」

原因②:異動や人事評価など環境変化に伴う不安

春先の人事異動や組織再編は、従業員に強い心理的負荷をかける要因となります。

新たな人間関係の構築や、未経験の業務に対するプレッシャーが重くのしかかるためです。

また、令和6年の労働安全衛生調査では、「仕事の失敗、責任の発生等」により強いストレスを感じる労働者は36.2%に上ります。特に、納得のいかない人事評価を受けた直後は、モチベーションが一気に低下する可能性が高まります。

また、年度末の3月は、「新しい環境でやっていけるか」「上司やメンバーが変わることへの不安」といった、未来に対する強い予期不安も高まる時期です。

契約社員などの非正規雇用者にとっては、「来年度も契約が継続するのか」という不安も大きなストレスです。

個人の適応力に依存するのではなく、組織全体でのフォローアップ体制が必要です。

参考:厚生労働省「令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」

参考:Rudolph CW, Shoss MK, Zacher H. Dynamic and reciprocal relations between job insecurity and physical and mental health. J Appl Psychol. 2025;110(7):948-962.

原因③:寒暖差や気圧変動による自律神経の乱れ

季節の変わり目特有の気象変動は、私たちが自覚する以上に体調を崩す大きな原因です。

寒暖差や気圧の変動に身体を適応させようと、自律神経が過剰に働き疲弊してしまうのです。その結果、2月の停滞期から3月にかけて気温が上がり、行動エネルギーだけが回復する状態は注意が必要です。

気分が落ち込んだまま行動力だけが上がる時期は、精神医学的に自殺リスクが高まります。どん底のうつ状態では行動する気力すらありませんが、春先に身体的なエネルギーだけが先に戻ると、抑うつ的な思考を「実行」に移す活力が生じてしまうためです。

令和6年の統計でも、3~5月にかけて自殺者が増える傾向が見られます。年度末から新年度にかけては、メンタル不調を早期に発見し、重症化を予防する取り組みが必要です。

これら3つの要因が複雑に絡み合う年度末は、全社的な警戒態勢をとることが不可欠と言えます。

参考:Mittal V, Brown WA, Shorter E. Are patients with depression at heightened risk of suicide as they begin to recover?. Psychiatr Serv. 2009;60(3):384-386.

参考:Yu J, Yang D, Kim Y, et al. Seasonality of suicide: a multi-country multi-community observational study. Epidemiol Psychiatr Sci. 2020;29:e163. Published 2020 Aug 24.

参考:厚生労働省・警視庁「令和6年中における自殺の状況」

年度末のメンタル不調や離職に気づくには?リモート・若手社員など状況別のサイン

会議中にうなだれている若手社員.jpg

年度末のメンタル不調に周囲が気づくには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

リモート環境での「見えない孤独感」や、Z世代特有の「キャリアへの不安」には注意が必要です。

これらは従来のマネジメントでは察知しにくいメンタル不調や突発的離職の引き金となります。

以下の3つの対象について、主な不調や離職の原因と注意すべきサインを解説します。

対象 主な不調・離職の要因 注意すべきサイン
全般 業務と体調のバランス崩壊
  • ●遅刻の増加
  • ●ミス発生時の反応の変化
リモート環境 孤独感とコミュニケーション
  • ●チャットの返信遅延
  • ●カメラオフの常態化
若手社員 成長への焦りとキャリア不安
  • ●会議での発言減少
  • ●急な有給取得

【全般】勤怠やコミュニケーションに表れる変化

メンタル不調のサインは、日々の勤怠や些細なコミュニケーションの変化に表れます。

心身のエネルギー枯渇すると、今まで当たり前にできていた業務処理や配慮ができなくなるからです。

例えば、以下のような変化が挙げられます。

  • ●これまで無遅刻だったのが急に遅刻が増えた
  • ●ミスをした際の反応が鈍くなった
  • ●会議での発言が極端に減った
  • ●服装や身だしなみが乱れている

これらのサインを「やる気の問題」と片付けないことが重要です。

遅刻の増加やミスと言った客観的な事実がみられた時点で、感情に踏み込まず業務ベースで介入することが、メンタル不調を防ぐ確実な第一歩となります。

【リモートワーク】孤独感が招くうつ症状

リモート環境では、雑談の減少による孤立感が「テレワークうつ」を引き起こす可能性があります。

オフィスであれば気軽に相談できる悩みも、1人で抱え込みやすくなってしまうからです。

また、通勤という運動機会が失われることで、睡眠障害や慢性的な疲労感も併発しやすくなります。

産業医の現場では、「普段温厚な従業員のチャット文面が攻撃的になった」といった相談が増加しています。オンライン会議で常にカメラをオフにする行動も、表情を見せたくないというSOSのサインかもしれません。

【産業医が推奨する実践的アプローチ】

「意識的に雑談の時間を設ける」といった漠然とした対策は、業務型の現場では形骸化しがちです。

そのため、心理的ハードルを下げる「非同期コミュニケーション」の仕組み化が効果的なアプローチです。非同期コミュニケーションとは、メールやチャットなど、各自の都合のよいタイミングでやり取りすることで、具体的には以下の例が挙げられます。

  • ● 分報チャットの導入:業務進捗だけでなく「今〇〇の作業で行き詰まっている」「今日は少し頭が痛い」といった個人的なつぶやきを許容する専用チャンネルを作成し、周囲が早期にSOSを拾える環境を作ります。
  • ● 感情スタンプの利用とルール化:テキストコミュニケーション特有の「冷たさ」や「冷遇されているという誤解」を防ぐため、管理職やマネージャーから率先して承認や感謝のスタンプを活用し、リアクションの心理的安全性を担保してください。

参考:Nowrouzi-Kia B, Haritos AM, Long BS, et al. Remote work transition amidst COVID-19: Impacts on presenteeism, absenteeism, and worker well-being-A scoping review. PLoS One. 2024;19(7):e0307087. Published 2024 Jul 18.

【若手】評価後に急増する突発的な離職

若手社員は、年度末の人事評価をきっかけに突発的に離職する傾向がみられます。「成長できる環境がない」と見切りをつけるスピードが、他の世代よりも早いからです。

不満があっても直接上司にはぶつけず、水面下で転職活動を進めるのが最近の若手社員の特徴です。そして、次の働き口を決めたうえで、ある日突然退職を申し出て周囲を驚かせます。

これを防ぐためには、過去の業績を評価するだけでなく、未来のキャリアビジョンをともに描く視点が不可欠です。会社が求める役割と個人の方向性に生じたズレを放置しないことが、若手社員の定着率を高めます。

【実践的な施策:キャリアビジョンすり合わせ面談】

評価のフィードバックとは別に、未来志向の1on1を実施することが離職防止に直結します。以下の構成を参考に、評価への納得感と今後の期待を言語化しましょう。

  • STEP1(現在地の確認):「今回の評価で、〇〇という点はどう感じた?」と率直な疑問を聞き出し、まずは否定せずに傾聴します。
  • STEP2(未来の希望):「今の業務の延長線上で、1年後や3年後に挑戦してみたい役割はある?」と、本人が身につけたいスキルをヒアリングします。
  • STEP3(期待値のすり合わせ):「会社としては次期に〇〇を期待している。あなたの希望するスキルアップにもつながると思うけれど、この業務から挑戦してみないか?」と、両者のベクトルが交わる意味付けを行います。

年度末の休職を防ぐ!企業が実践すべきメンタルヘルス対策

部下に優しく声をかけてコミュニケーションを取る男性上司.jpg

年度末のメンタル不調による休職を防ぐには、以下の3つの対策が有効です。

対策のステップ 実施主体 具体的なアクション
1.ラインケア 現場の管理職 勤怠や行動の変化を観察し、業務ベースで声をかける
2.ストレスチェック 人事・労務部門 検査の実施と、集団分析による職場環境の改善
3.面談とマネジメント 管理職・人事 心理的安全性を高める継続的なフォロー

3つの対策について、「誰が行うのか」「具体的に何をするのか」を解説します。

1.現場の管理職による業務ベースのラインケア

管理職が日常的に部下の様子を観察し、小さな変化にいち早く気づくラインケアが予防の基本です。

声をかける際は、感情や体調に直接踏み込むのではなく、仕事の話題から入るのが鉄則です。

「最近疲れていないか?」と直接的に尋ねると、相手は弱みを見せたくない防衛本能から心を閉ざしてしまう可能性があります。これは、メンタル不調の初期サインは、しばしば「単なる能力不足」や「モチベーションの低下」と誤認されがちであり、素直にしんどさを表明することが難しいためです。

例えば、「最近、会議での発言が減っているようだけれど、業務の進捗で困っていることはない?」と尋ねてみましょう。

そこから徐々に対話の糸口をつかみ、業務量の調整など具体的な負担軽減策を図ることが効果的です。

【実務で使える】年度末の不調サインに対するOK/NG声かけ例

年度末は「繁忙期の業務過多」と「評価面談による心理的負荷」が重なる時期です。この時期にチャットの返信が遅い、ミスが増えたなどの変化に気づいた際、以下のスクリプトを参考に、あくまで「業務の調整」を入り口として対話の糸口を掴みましょう。

× NGな声かけ(感情や体調に直接踏み込む)

  • ● 「最近疲れているみたいだけど、メンタル大丈夫?」
  • ● 「3月は忙しいから大変だよね、よく眠れてる?」

【産業医の解説】年度末の多忙な時期にこう聞かれると、部下は「これ以上迷惑をかけられない」「評価が下がるかもしれない」と警戒し、条件反射で「大丈夫です」と答えてしまいます。

○ OKな声かけ(事実と業務ベースでアプローチする)

  • ● 「年度末で〇〇の案件が立て込んでいるけれど、スケジュールのボトルネックになっている作業はある?」
  • ● 「今週、〇〇さんのチャットの返信が普段より夜遅い時間になっているようだけど、いま一番工数がかかっている業務は何かな?」

【産業医の解説】「夜遅い時間のチャット」という客観的な事実(勤怠・行動の変化)を伝えた上で、原因を「個人の体調」ではなく、「業務の偏り」に置きます。これにより、部下は「自分の不調のせいではなく、業務量が原因だ」と心理的安全性を保ちながらSOSを出しやすくなります。

2.義務であるストレスチェックの活用

ストレスチェックは、個人の不調発見にとどまらず、職場環境の改善ツールとして活用すべきです。

部署や役職、在籍年数などの属性をかけ合わせて集団分析を行うことで、「入社3年目の若手」や「特定の課のミドル歴」に潜む特有のボトルネックを可視化できます。

「あの部署は残業が少ないのに健康リスクが高い。上司のマネジメント手法に課題があるのではないか」といった仮説を立て、人員配置や業務フローの根本的な見直しに繋がることが重要です。

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ストレスチェックの効果的な活用方法とは?集団分析のやり方や事例について解説

参考:Imamura K, Asai Y, Watanabe K, et al. Effect of the National Stress Check Program on mental health among workers in Japan: A 1-year retrospective cohort study. J Occup Health. 2018;60(4):298-306.

3.心理的安全性を高める面談とマネジメント

部下が安心して悩みを相談できる「心理的安全性の高い職場づくり」が、すべての対策の基盤となります。

「何を言っても否定されない」という安心感がなければ、従業員はSOSを発信しにくいでしょう。

1on1面談の場では、上司が一方的に指導するのではなく、まずは部下の声に耳を傾ける姿勢を保ちましょう。

失敗を厳しく責め立てるのではなく、ともに解決策を考える伴走型のスタンスを示すことが信頼関係を築きます。

日々の円滑なコミュニケーションこそが、メンタル不調を早期に発見するために必要不可欠です。

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心理的安全性とリーダーシップの関係性とは?組織の成長を促す方法

産業保健体制の強化へ!産業医やEAPの活用

産業医や人事労務担当者、現場の管理職が連携している様子.jpg

複雑化するメンタルヘルス課題の解決には、産業医やEAPなどの外部専門家の活用が不可欠です。医学的知見に基づいた専門的な介入が、従業員の早期回復と適切な職場復帰を促すからです。

しかし、「専門家と契約したから全て丸投げで安心」という考えは大きな間違いです。

人事、管理職、専門家がそれぞれの役割を果たし、有機的に連携する体制があって初めて機能します。具体的には以下のように役割分担することで実効性が高まります。

担当者 役割 具体例
人事・労務部門 制度設計と調整
  • ● 仕組み作り
  • ● 各部門と外部機関の橋渡し役
管理職 現場のサポート
  • ● 日常的な観察
  • ● 業務量の調整
  • ● 環境改善の実行
産業医・EAP 医学的介入
  • ● 面接指導
  • ● 就業制限の判断
  • ● 専門的な助言

産業医やEAPの実効性を高める産業保健体制の構築について、3つのポイントをお伝えします。

  • ● 人事や管理職だけで抱え込まない体制構築
  • ● 産業医などの専門家による医学的な介入効果
  • ● 外部支援サービスの導入で組織課題を解決

1.人事や管理職だけで抱え込まない体制構築

メンタル不調者の対応を、現場の管理職や人事担当者だけで駆け込むことには限界があります。

専門知識がないまま不用意に対応すると、症状を悪化させたり、担当者自身がメンタル不調に陥る可能性があるからです。

例えば、部下を心配するあまり上司が熱心に話を聞きすぎ、共依存状態に陥ってしまうケースがあります。(下記の失敗事例)。

「誰がどこまで対応し、どの段階で産業医などの専門家に引き継ぐか」という明確なルールを定めておくべきです。

適切な役割分担の構築が、結果として組織全体の疲弊を防ぐことにつながります。

【事例紹介】「良かれと思った毎日の1on1」が休職を早めた失敗事例

「年度末のメンタル不調は、上司の熱心な対応が裏目に出るケースがある」という事実をご存知でしょうか。現場で実際に起きた、おけるIT企業(若手社員と、プレイングマネージャーの上司)の事例をご紹介します。

【事例】

3月に入り、決算対応で部署全体での残業が急増。入社2年のAさんは、初めての大きな表羽化面談を控えたプレッシャーと連日の寒暖差も重なり、顔色が悪く、小さなミスを連発していました。

責任感の強い上司はAさんを心配し、「何でも相談してほしい」と毎日の30分のオンライン1on1をセットしました。

しかし、業務過多で疲弊しているAさんにとって、毎日の1on1は「上司の時間を奪っている申し訳なさ」と「毎日進捗を詰められているようなプレッシャー」という新たなストレス要因になってしまいました。

結果としてAさんは「自分の能力不足で上司に迷惑をかけている」とさらに追い詰められ、上司も「これだけフォローしているのになぜ改善しないのか」と疲弊。両者が共依存のまま視野狭窄に陥り、Aさんは4月を待たずに突発的な適応障害で休職してしまいました。

【産業医からの教訓】

このケースにおける不調の根本原因は「年度末の業務過多」という物理的ストレスです。

上司が取るべきだった行動は、カウンセラーのように毎日話しを聞くことではなく、「Aさんの業務を他へ分散させること」と、「早急に産業医やEAPなどの専門家へつなぐこと」でした。

管理職が医療者の領域まで踏み込もうとすると、チーム全体が共倒れするリスクがあります。異変を感じたら「業務から切り離す」「専門家に任せる」という明確な境界線を引くことが、会社と従業員双方を守るために不可欠です。

2.産業医などの専門家による医学的な介入効果

心身の不調を疑う従業員に対しては、産業医による面接指導を積極的に活用することをおすすめします。

会社とは異なる第三者の医師という立場だからこそ、従業員もフラットに本音を打ち明けやすくなります。疲弊した状態に対し、産業医が休業の要否や就業上の配慮について客観的な判断を行うことで、メンタル不調の重症化を防げます。

また、「現在の状態では残業や深夜業務を控えるべき」といった意見書は、会社が適切な安全配慮義務を果たすための根拠としても必要です。

産業医が医学的な観点から「働ける状態かどうか」を判断することで、従業員のメンタル不調や企業の法的リスクを防止できます。

参考:Keus van de Poll M, Nybergh L, Lornudd C, et al. Preventing sickness absence among employees with common mental disorders or stress-related symptoms at work: a cluster randomised controlled trial of a problem-solving-based intervention conducted by the Occupational Health Services. Occup Environ Med. 2020;77(7):454-461.

3.外部支援サービスの導入で組織課題を解決

社内のリソースだけで対応が難しい場合は、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)の導入を検討することが有効です。

EAPは、臨床心理士や公認心理師などの外部のカウンセラーに匿名で相談可能であるため、従業員が安心して相談できる体制が整います。また、従業員個人だけでなく、管理職へのコンサルテーションやラインケア研修など、組織課題の解決にも寄与します。

自社の実情に合った体制を見直し、専門家と連携して見えない健康リスクに備えていきましょう。

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EAPとは?企業の対策、厚生労働省の定義と導入のポイントを解説

まとめ:年度末の危機を乗り越え、強い組織を作るために

年度末のメンタル不調の原因は、「忙しい」という理由だけでなく、異動に伴う役割の変化や寒暖差、気圧、意欲変動などさまざまな背景要因が関係します。

管理職は、「忙しくて疲れているようだ」と片付けるのではなく、部下のしんどさの背景に寄り添った対応が求められます。そのためには、日頃のコミュニケーションを円滑にしつつ、異変があれば従業員がすぐにSOSを出せる心理的安全性の高いチームづくりが必要です。

そして、メンタル不調の対応が必要な場合を見極め、産業医などの専門家につなぐ境界設定も不可欠です。人事担当者や現場の管理職だけで全てを解決しようと抱え込む必要はありません。

専門知識を持つ産業医をうまく活用して従業員の本音を引き出し、組織の根本的な課題解決とつなげていきましょう。

ワーカーズドクターズでは、メンタルヘルス不調者への対応経験が豊富な産業医の紹介を行っております。嘱託産業医だけでなく、選任義務のない50人未満の事業場でも活用いただける顧問産業医紹介サービスなど、自社に合わせた運用が可能です。お気軽にお問い合わせください。

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公開日: 2026.03.27
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