コラボヘルスとは

コラボヘルスとは、健康保険組合などの保険者と企業が協働し、社員の健康増進対策や生活習慣病予防対策などに取り組むことを指します。
具体的には、健康診断結果のデータをもとに、保険者は対象企業の健康リスクを分析します。リスクデータを活用することで、企業側では特定リスクに焦点をあてた生活習慣病改善プログラムの導入が可能です。
企業と保険者の立場と強みを生かした連携により、社員に最適なアプローチを効率よく実行できることからコラボヘルスが注目されています。
なぜ健康経営推進にはコラボヘルスが不可欠?

「健康経営」は人的資源を「企業の貴重な財産」ととらえ、社員の健康に対し積極的に取り組む経営手法です。
社員の健康支援はコストではなく投資と捉えることで、企業は生産性や企業価値の上昇、医療費の負担軽減、離職防止などのメリットを享受できます。
企業が健康経営を推進する理由
2014年の日本再興戦略文書内で取り上げられたのをきっかけに、健康経営の導入が推進されてきました。健康経営の手法は少子高齢化と人口減少がすすむ日本において、企業が直面する課題を解決する有効な方法として期待されています。
企業が健康経営を推進するには、社員一人ひとりの健康状態を正確に把握することが不可欠です。また、企業は保険者の持つ健康診断やレセプト情報を活用することで、社員の健康をより効率的にサポートできます。
参考:内閣府「「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦- 」
参考:健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)「ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度) 」
健康経営を支えるデータヘルス計画
「データヘルス計画」とは、厚生労働省が策定した指針に基づき、保険者がレセプト情報などの健康・医療データを活用して加入者の健康づくりを支援する保健事業を計画的に展開することです。
健康経営推進とデータヘルス計画は、社員の健康づくりにおいて「車の両輪」として連携が求められます。とくに、企業が働き盛り世代の健康を維持・向上させるためには、保険者と協働してコラボヘルスを実践していくことが重要です。
このように企業の健康経営推進において「コラボヘルス」と「データヘルス計画」は欠かせない基盤であるといえるでしょう。
参考:厚生労働省「データヘルス計画作成の手引き」
コラボヘルスのメリット
保険者の「健康・医療データ」と企業の「職場環境調整力」をかけあわせると、健康経営の成果が飛躍的に向上します。
企業におけるコラボヘルス導入の主なメリットは以下の点です。
- ・一人ひとりの健康状態に合わせたオーダーメイド型保健指導が可能
- ・生活習慣病予防や早期発見がしやすい
- ・企業の健康経営推進を後押しする
- ・医療費など社会保険料の削減につながる
- ・社員の生産性と企業利益の両方が向上する
米国での研究によると、健康関連コストのなかで最も大きな割合を占めているのが「プレゼンティーイズム」です。プレゼンティーイズムとは心身の不調を抱えて出勤し、本来のパフォーマンスが発揮できない状態を指し、労働人口が減る日本ではとくに深刻な課題です。
コラボヘルスによる効果的・効率的な健康支援の提供は社員の健康改善のみならず、プレゼンティーズムの軽減にも貢献します。健康で活力ある社員が働く企業では、健康関連コストが減少し企業利益の向上が期待できるでしょう。
参考:厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
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コラボヘルス導入の手順

企業がコラボヘルスを導入する場合、以下の5つのステップに沿って段階的に進めます。
- ・STEP1:コラボヘルス推進体制の構築
- ・STEP2:健康・医療データの整理と共有
- ・STEP3:現状把握と健康課題の抽出
- ・STEP4:保健事業の目標設定と施策の実行
- ・STEP5:継続的な評価と改善
参考:厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
STEP1:コラボヘルス推進体制の構築
連携する企業と保険者、それぞれの状況に合わせた推進体制の構築を行います。企業の組織体制は事業主や経営者層を中心とし、人事や総務、そして、産業医など産業保健の専門家を加えましょう。
組織体制構築後は社員の健康意識が高まりコラボヘルスが効果的に実現できるよう、事業主は健康宣言を行います。
「社員の健康を重視し積極的に健康づくりに取り組む」ことを社内外に表明することで社員の健康行動への意識が高まります。
STEP2:健康・医療データの整理と共有
企業と保険者はそれぞれが持つデータの整理を行います。両者間で整理すべき情報としては、以下のようなものが挙げられます。
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企業 |
保険者 |
情報 |
- ・ストレスチェック結果
- ・喫煙率
- ・メンタルヘルス不調者数
- ・長時間労働者数
- ・生活習慣
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- ・40歳以上の特定健康診査結果
- ・被扶養者(社員)の健康診断結果
- ・病院や薬局のレセプト
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推奨される企業側の共有先は、健康経営推進部門や人事・総務部門、事業主、産業保健スタッフ、従業員、労働組合などです。
企業と保険者間でのデータを共同利⽤をする場合は法令に則った取扱いが望まれるため、事前にルール化しておく必要があります。
STEP3:現状把握と健康課題の抽出
企業と保険者は会議などの場を設け情報交換や意見交換、議論を行います。
健康診断結果やストレスチェック結果、喫煙率、メンタルヘルス不調者数などのデータから現状把握を行います。集めたデータを見える化するために作成するのが「健康白書」です。
健康白書から社員の健康状態を把握し、組織全体の健康課題を抽出します。現状把握をする場合は社員の健康状態や職場環境、各職場の業務特性などを踏まえることが大切です。抽出された健康課題に対しては、企業にとって解決すべき優先順位を明確にしましょう。
【健康白書の例】

引用:厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
STEP4:保健事業の目標設定と施策の実行
社員の健康状態や業務内容を踏まえ、企業と保険者で協働し生活習慣病予防や健康増進にかかわる保健事業を立案します。
具体的な健康支援プランとともに目標や評価指標、数値目標を設定してから施策の実行にうつりましょう。
コラボヘルスをより効果的な取り組みにするためには、事業主の理解と企業の担当部門すべての積極的な参画が重要です。
STEP5:継続的な評価と改善
保健事業を実施した後は、PDCAサイクルを活用した評価・改善が有効です。 まず、社員の健康状態を把握し抽出された健康課題に応じた保健事業を立案(Plan)します。
次に、計画に基づき健康支援を実施(Do)し、目標達成度や効果を評価(Check)します。
最後に、評価結果をもとに次年度の保健事業へ向けた改善策を検討・実行(Act)し、施策の実効性を高めていきます。 この一連の流れがPDCAサイクルです。
参考:厚生労働省「PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう 」
コラボヘルスを成功させる3つのポイント

コラボヘルスの実効性を高めるためには、次の3つのポイントが重要です。
- ①経営層の積極的参画
- ②企業と保険者の密接なコミュニケーション
- ③社員のヘルスリテラシー向上
①経営層の積極的参画
健康経営は現場担当者にすべてを任せるのではなく、事業主など経営層が積極的にコラボヘルスを後押しする姿勢が大切です。
「社員の健康を守るために、積極的に健康増進に取り組む」などと健康宣言を行い、企業としての方針を社内外に明確に示します。
経営層が介入するトップダウン式のコラボヘルス推進は、社員の健康意識向上に効果的です。
②企業と保険者の密接なコミュニケーション
コラボヘルスの実効性を高めるために、企業と保険者間のコミュニケーションは重要です。
企業と保険者が定期的に情報共有や意見交換、議論の場を設け、現状把握や健康課題の共通認識を持ちましょう。
保健事業の内容が決定したら、企業と保険者の役割分担を明確にします。企業は主に職場環境を整え、保険者は保健事業を実施するのが理想です。たとえば、禁煙サポート事業を行う場合、以下のように役割分担すると取り組みの実効性が高まるでしょう。
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企業側 |
保険者側 |
役割 |
- ・世界禁煙デーイベントの開催
- ・社内報の発行
- ・敷地内禁煙推進
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- ・禁煙イベントの計画、立案
- ・禁煙外来受診の補助
- ・禁煙達成のインセンティブ
- ・禁煙後の健康効果測定
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③社員のヘルスリテラシー向上
コラボヘルスを推進するには、健康支援施策への参加を通して、社員が自らの健康に関する正しい知識と判断力を高めることが欠かせません。健康診断など健康施策の意義を十分に理解し、生活習慣病などの早期発見や予防につなげるためには適切な健康行動が重要です。
企業が取り組みやすい方法に、健康イベントの開催があげられます。健康状態を数値化することで社員が自身の健康課題に気づき、健康への関心が自然と高まるでしょう。具体的には、体成分分析や体力測定、骨密度測定、血管年齢測定などです。
社員のヘルスリテラシーを高めることは、コラボヘルス成功の重要ポイントです。
コラボヘルス推進の企業事例

コラボヘルスを実践し、社員の健康づくりを行っている企業の事例を紹介します。自社でも取り組めそうな事例があれば、ぜひ参考にしてみてください。
参考:厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」
①花王グループ
花王グループにおける健康経営推進の基盤は、コラボヘルスによる密な連携体制と役割分担です。企業と保険者が月1回の連絡会を開催し、情報共有を行う仕組みを構築し、企業は健診や保健指導を、保険者は医療データの分析や施策費用補助などを一貫して実施します。
健康施策の効果向上に不可欠なのが「健康白書」を活用したPDCAサイクルの確立です。全国16事業所の健康相談室がそれぞれ保健事業計画を立案・実行しています。現場レベルでの連携強化のため、健康白書を用いた勉強会や保健スタッフ会議も定期的に開催しています。
従業員参加型の健康イベントである「健康マイレージ」事業では、健康づくりの取り組みを後押ししており、喫煙率の低下や男性従業員の有所見者減少・生活習慣病関連の医療費削減などの大きな成果を上げています。
花王グループはコラボヘルスや独自のPDCAサイクル、健康イベントにより、効率的に健康経営を推進しています。
②SCSK株式会社
SCSK株式会社は平成27年度からコラボヘルス体制を強化しました。企業が健康経営に取り組む一方で、保険者は保健事業として「喫煙対策」と「疾病予防」に注力しました。喫煙対策では、禁煙プログラムの提供や費用支援、疾病予防として予防接種の費用補助などを実施しています。
また、働き方改革の施策として、残業時間削減や有給取得率向上を目指した「スマートワークチャレンジ」では、業務の効率化で削減できた残業代をインセンティブとして還元する仕組みを導入しています。
そして、健康増進施策として導入した「健康わくわくマイレージ」では、生活習慣や健診結果の改善状況をポイント化して、ポイントに応じたインセンティブを支給しています。100%近い参加率とともに、生活習慣の改善や健診受診率の向上、禁煙率低下の成果を上げています。
SCSK株式会社ではコラボヘルスの強化に加え、健康インセンティブ制度の導入により、社員の良い行動習慣の定着を図っています。
コラボヘルス推進は信頼できる産業医とのコラボが鍵
コラボヘルスを行うためには企業と保険者の緊密な連携が不可欠です。また両者の相乗効果を最大化するためには、保険者が有する健康・医療データの分析力と、企業による職場環境の調整・改善力を組み合わせて戦略的に取り組む必要があります。
コラボヘルスの推進により「社員一人ひとりの健康状態に応じたオーダーメイド型健康支援」が可能になります。健康経営の理念のもとに社員の健康へ投資することが、医療費負担の削減や生産性の向上、ひいては企業価値の向上につながります。
コラボヘルスを効果的に推進するためには「信頼できる産業医」との連携が鍵です。産業医は、企業と保険者の橋渡し役として、健康課題の可視化や分析、改善施策の立案・提言を担う戦略的パートナーです。
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