産業医を探す5つの方法

産業医の見つけ方は以下の5通りで、各都道府県の医師会や健診機関への問い合わせ、産業医の紹介サービスの利用、地域産業保健センターの利用、現地の産業医業務委託を行う会社への相談などが主な方法です。
- ● 各都道府県の医師会で探す
- ● 健診機関へ問い合わせて探す
- ● 産業医の紹介サービスを利用する
- ● 地域産業保健センターで探す
- ● 現地で産業医業務委託を担う会社へ相談する
それぞれメリット・デメリットがあるため、事業場の特徴に合ったサービスを選ぶことが大切です。
以降では、それぞれの団体の特徴とメリット・デメリットについて解説します。
参考:厚生労働省「中小企業事業者のために産業医ができること」
各都道府県の医師会で探す
医師会は各都道府県や市区郡ごとにある民間の学術専門団体です。
医師会に「嘱託産業医紹介依頼票」を提出すると、会員の中から該当者を選任してもらうことが可能です。
各都道府県や市区郡の医師会のHPを検索すると、詳細な紹介方法を確認できます。
- メリット
- ● 無料で紹介してもらえるため初期費用を抑えられる
- ● 地域性を踏まえた医療サービスの提供が可能
- ● 産業医の紹介サービスが不足している地方でも探しやすい
- デメリット
- ● 医師会によっては途中キャンセルできないため、ほかの方法を併用し産業医を探すことは難しい
- ● 詳細な契約内容は事業者が医師と直接交渉して決めなければならない
- ● 複数の事業場を持つ企業は、一括で産業医を選任することができない
地方でも産業医が探しやすく、地域性を踏まえたサービスが期待でき、費用の負担も軽いことがメリットです。
一方で途中キャンセルが難しく、日時や曜日、報酬などは医師と直接交渉で決めなければなりません。
また、事業場が複数ある事業者は各医師会に問い合わせが必要なため手続きの負担は大きいです。
参考:日本医師会「日本医師会について」
健診機関へ問い合わせて探す
健診機関は企業の従業員や一般の人の健康診断を担う専門機関です。大学病院の中に設置されている健診センターも含まれます。
企業が既に定期的な健康診断を依頼している健診機関があれば、問い合わせてみることで産業医を探すことができます。
- メリット
- ● 健康診断の実施と産業医の選任を一括で委託できる
- ● 健診とセットで契約すると費用を抑えやすい
- ● 健診の実施から産業員の介入までスムーズに行うことが可能
- デメリット
- ● 所属する産業医の数が限られるため選択肢の幅が狭まる
- ● メンタルヘルスの知識のある医師を紹介してもらえるとは限らない
- ● 健診の繁忙期には迅速な対応が難しくなることがある
健診機関で探すメリットは、健診と産業医選任が一括で委託できる点です。万が一従業員の異常が見つかった場合もスムーズに介入につなげられます。
一方で、デメリットとして医師のメインの仕事は健診業務のため、繁忙期は対応が遅くなる場合があります。
また、産業医の数が限られるため、専門知識のある医師を選任できるとは限りません。
産業医の紹介サービスを利用する
産業医紹介サービスは企業のニーズを踏まえ、産業医を選任し紹介してくれる民間機関です。
企業の規模や予算と、産業医の専門や経験を考慮して、最適な産業医をマッチングしてくれます。インターネットの検索でキーワードを入力することで探すことが可能です。
- メリット
- ● 産業医の数が多いため企業の規模やニーズに合った選任が可能
- ● 産業医との業務内容や報酬の交渉を任せることができる
- ● 企業の安全衛生委員会の運営支援など、選任後のサポートも充実
- デメリット
- ● 紹介手数料がかかる分、コストが割高となる
- ● 会社により含まれるサービスに違いがあるため比較検討が必要
- ● 経歴の浅い産業医もいる
産業医紹介サービスを活用するメリットは、産業医を探し交渉する時間的コストを削減できる点です。企業のニーズに合った産業医を見つけやすいです。
一方で、デメリットとしては料金が割高になりやすいことや事業場のニーズに応えられる産業医ではない可能性があげられます。
地域産業保健センターで探す
地域産業保健センターは労働者50名未満の小規模事業場の事業者や労働者に対する健康管理を支援する公的機関です。
独立行政法人労働者健康安全機構が運営しており、無料で健康相談や面接指導、産業保健情報の提供などを行っています。
産業医の選任義務はないものの、産業保健支援を受けたい場合に活用できます。
- メリット
- ● 産業医を選任する義務のない企業でも利用できる
- ● 無料で産業保健に関する相談や面接指導、情報提供を受けることができる
- ● 地方であっても利用が可能
- デメリット
- ● 従業員50名未満の小規模事業場でなければ利用ができない
- ● 利用可能な回数や時間が決まっている
- ● 同じ産業医の継続担当は難しい
地域産業保健センターは公的機関のため、従業員50名未満の小規模事業場であれば利用でき、相談サービスも無料で受けられる点がメリットです。
一方で、上記企業以外は利用は難しく、利用時間や回数が決められているところはデメリットといえます。同じ産業医に継続的にフォローしてもらうことは難しいです。
参考:独立行政法人 労働者健康安全機構「地域産業保健センター」
現地で産業医業務委託を担う会社へ相談する
現地の産業医業務委託を担う会社とは、仲介業者を介さずとも契約を結べる人材を紹介するサービスです。
労働衛生コンサルタントを有し、実務経験のある産業医を紹介してもらえる可能性が高いことが最も大きなメリットです。
- メリット
- ● 産業医として経験豊富な人材を確保できる可能性が高い
- ● 経験をもとにした具体的なアドバイスを得られる
- ● 仲介業者を介さないため融通が利きやすい
- デメリット
- ● 現地の産業医提供会社と契約のやり取りを直接行うため手間である
- ● 産業医を変更したい場合は手間がかかる
- ● 契約内容により費用が高額となる可能性がある
仲介業者を介さないため融通が利きやすく、連携がスムーズであればより良い産業保健体制の構築が期待できる点がメリットといえます。
一方で、現地の産業医提供会社と直接契約のやり取りを行う手間がかかることがデメリットとして上げられます。
産業医の選任義務と形態

産業医の選任義務の有無や必要な産業医の勤務形態、人数は事業場の規模により異なります。
各契約形態の特徴を把握し、自社に合ったサービスを選択することが求められます。
以下、選任義務と契約形態に分けて解説をしていますので、早速みていきましょう。
従業員の人数に応じて選任義務が生じる
産業医の選任義務とは、常時使用する従業員が50人以上の企業へ産業医の選任義務があるという労働安全衛生法第13条に定められた法的義務をいいます。
50人以上1,000人未満の事業場であれば、嘱託産業医(非常勤)の選任も認められています。1,000人以上となると、専属産業医(常勤)の選任が必要です。
産業医の人数は、事業場の従業員数により下記の通り決められています。
事業場の規模 |
産業医の人数 |
50~999人 |
1人以上の産業医 |
1,000~3,000人 |
1人以上の専属産業医 |
3,001人以上 |
2人以上の専属産業医 |
例外として、特定業務にあたる事業内容の企業では、従業員500人以上で専属産業医の選任義務が生じます。
特定業務とは、「多量の高熱物体を取り扱う業務」「寒冷な場所における業務」など、労働者の健康に重大な影響を及ぼす可能性のある業務です。
3つの選任形態がある
産業医の選任形態は、嘱託や専属、スポットの3種類です。
50人以上1,000人未満では嘱託産業医が、1,000人以上では専属産業医の選任が義務付けられています。
以降では、産業医の選任形態や訪問頻度について解説します。
- 嘱託産業医
- ● 企業に非常勤もしくは委託として勤務する産業医
- ● 2ヶ月に1回以上の頻度で企業に訪問する産業医
- ● 仲介業者を介さないため融通が利きやすい
- 専業産業医
- ● 企業に専属で常勤勤務する産業医
- ● 週4~5日で3時間からフルタイムで勤務するのが一般的
- ● 原則、ほかの企業との兼任はできない
- スポット契約
- ● 従業員50人未満などの企業で必要時のみスポット勤務をする産業医
- ● 日時や回数を決めて、メンタル不調者との面談や健診後対応を行う
- ● 1回の訪問ごとに報酬が設定される
産業医を探す際のポイント

産業医を探す際には、選定基準や選任後の対応として、次の3つに注意しましょう。
- ① 産業医に期待する業務を明確にしておく
- ② 産業医の経験と費用を確認する
- ③ 産業医選任報告書の提出を速やかに行う
産業医に期待する業務を明確にしておく
自社の業務や職場環境に特有の産業保健に関する課題を把握しておき、産業医に期待する業務を明確化しておくことが大切です。
たとえば、デスクワークが中心のIT企業であれば、作業環境の改善が可能な産業医を探すとよいでしょう。眼精疲労を軽減するための机と椅子の位置、照明の明るさなどの環境改善の助言ができる産業医を選びます。
自動車運転業であれば、長時間労働や運転の緊張などの要因を踏まえ、業務調整やリラックス法などの助言ができる産業医が望ましいです。
参考:厚生労働省「事業場におけるメンタルヘルス対策の取り組み事例集」
産業医の経験と費用を確認する
産業医の経験年数を加味した上で、事業場の規模や選任形態によって報酬を決めることをおすすめします。そのためには、大体の相場を把握しておけると良いです。
それぞれの選任形態ごとの特色は次の通りです。
- 嘱託産業医
- ● 従業員数が多いほど報酬は高くなる傾向がある
- ● 50人未満で月7万5,000円、50~199人で月10万円の報酬が目安
- 嘱託産業医
- ● 従業員数が多いほど報酬は高くなる傾向がある
- ● 50人未満で月7万5,000円、50~199人で月10万円の報酬が目安
- 専属産業医
- ● 医師の経験年数が長いほど報酬も高くなる
- ● 週4日勤務で年1,200~1,500万円程度が目安
- スポット契約
- ● スポット契約の報酬は地域により異なり、時間により決まる
- ● 地域産業保健センターを介せば無料、ただし回数制限あり
参考:公益財団法人 日本橋医師会「産業医報酬基準額について」
▼関連記事はコチラ
産業医の年収や報酬の相場はどれくらい?嘱託産業医・専属産業医別に解説
産業医選任報告書の提出を速やかに行う
産業医を選任する際は、産業医を選任すべき事由(常時使用する従業員数が50人以上となる)が発生した日から14日以内に「産業医選任報告書」を提出する必要があります。
提出先は所轄の労働基準監督署です。上記へ反すると罰金が科される場合がありますので、速やかに提出しましょう。
産業医選任のポイントをつかんで企業の健康意識を高めよう
産業医を探す方法は5通りあり、地域性や企業のニーズ、予算感に応じて最も適した方法を見つけることが可能です。
自社が抱える課題に応じて、産業医に期待する役割を明確化した上で、適切な人材を探すことが大切です。
各事業場の必要事項について想定しつつ、ニーズに合った産業医の選任を検討してみてください。
ワーカーズドクターズでは、嘱託産業医はもちろん、従業員50人未満の事業場向けの顧問医紹介サービスをご提供しています。専任のスタッフが選任時の手続きから選任後の業務調整まで対応可能なため、初めての選任でも安心してご利用いただけます。
今後、ストレスチェックが義務化した場合に、各種面談や事後措置の対応が可能な産業医が多数在籍していますので、ぜひご活用ください。
嘱託産業医サービス | 産業医の紹介ならワーカーズドクターズ
顧問産業医紹介サービス | 産業医の紹介ならワーカーズドクターズ
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ストレスチェック実施義務対象を50人未満の事業ばにも拡大するよう提言」