職場巡視は従業員の安全衛生を守る観点、あるいはコンプライアンスの観点での必要な業務です。
衛生管理者は週1回以上、産業医は原則月1回以上の実施が義務付けられています。かといって義務による実施ではなく、有意義な内容にするのが望ましいです。そのため、「どういったポイントで巡視するか」というチェックリストの作成が推奨されます。
当記事では、産業医・衛生管理者による職場巡視にあたってのチェック項目について解説します。
職場巡視は従業員の安全衛生を守る観点、あるいはコンプライアンスの観点での必要な業務です。
衛生管理者は週1回以上、産業医は原則月1回以上の実施が義務付けられています。かといって義務による実施ではなく、有意義な内容にするのが望ましいです。そのため、「どういったポイントで巡視するか」というチェックリストの作成が推奨されます。
当記事では、産業医・衛生管理者による職場巡視にあたってのチェック項目について解説します。
職場巡視は、従業員が働くオフィスや現場を見て回り、安全面や衛生面、働きやすさなどに配慮しているかどうかをチェックする業務です。
主に担当するのは「衛生管理者」と「産業医」となります。
職場に潜むリスクや問題を特定し、労働災害や健康問題の発生を予防するために重要なプロセスと言えます。
職場巡視は法令で義務化されているため、コンプライアンスの観点でも実施は不可欠です。
詳しい内容については関連記事をご覧ください。
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職場巡視とは?目的や流れについて解説
法令で定められる巡視の頻度は、衛生管理者は週1回以上、産業医は1ヵ月に1回以上となります。
ただし、産業医のみ例外があり、事業者と合意のもと、事業者から月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合に限り、職場巡視を2ヵ月に1回としても良い規定があります。
衛生管理者の行う巡視の方が高頻度のため、平常的に行う重要な業務と言えるでしょう。
担当者 | 巡視の頻度 |
衛生管理者 | 週1回以上 |
産業医 | 1ヵ月に1回以上 ※条件を満たす場合2ヵ月に1回以上 |
職場巡視において重要なのは、「どこを注視するか」です。
衛生管理者の職場巡視は週1回以上のため、事前にチェックリストを作成しておき、限られた機会で効率良く巡視する必要があります。
チェックリストは、確認観点を安全面・衛生面・環境面の3つに分け、次のようにチェック項目を挙げておきましょう。
安全面の観点では、従業員が怪我をしたり、健康被害に遭ったりするリスクを見つけ出すため、次のようなチェック項目を用意しましょう。
・機械や装置の適切な保護装置が設置されているかどうか
・歩行路や通路が整備されており、障害物がないか
・高所作業時の手すりや安全フェンスの設置状況
・電気配線やコンセントの安全性と適切な保護措置が確保されているか
・作業員が適切な個人保護具(安全靴、ヘルメットなど)を着用しているか
・重量物が落ちやすい場所やぶつかりやすい場所に置かれていないか
・コードが絡まったり汚れが溜まったりしているなど発火の危険はないか
・通路にコードなどの障害物はないか
危険な作業を行わない職場であっても、防災設備の点検状況はチェックを怠らないようにしましょう。
とりわけ製造・建設現場の職場巡視では、従業員が立ち入る場所は原則としてすべて巡視対象とすべきです。
衛生面の観点では、従業員が健康状態を悪くしたり、気分を害したりする不衛生なポイントがないかどうかを見つけるため、次のようなチェック項目で確認を行います。
・作業場が清潔で十分に整頓されているか
・トイレや洗面所が清潔で手洗い施設が利用できるか
・ハンドソープやアルコール消毒液の在庫切れがないか
・有害物質の適切な取り扱いと保管方法が担保されているか
・作業場内の換気状況と通風設備の機能は十分か
上記だけでなく、主にオフィスの衛生基準について規定した「事務所衛生基準規則」の内容も確認するようにしましょう。
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事務所衛生基準規則とは?改正への対応も解説
環境面の観点では、従業員の作業に支障をきたさず、気持ちよく働いてもらえるような環境が整備されているかを確認するため、次のようなチェック項目で確認を行います。
・オフィス内の温湿や冷・暖房などの温度環境が適切かどうか
・採光・照明の明るさや照明設備の配備が適切かどうか
・従業員が休憩をとれる設備が用意されているか
・騒音箇所はないか
衛生管理者の職場巡視の結果、産業医の見解が求められる内容も出てくる可能性があります。
産業医へ連携する事項はすべて洗い出し、産業医による職場巡視に備えておきましょう。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省「安全衛生巡回チェックポイント(例)」
産業医による職場巡視のチェック対象はある程度決まっています。
現場の代表者である衛生管理者が集めた課題や作業内容を産業医へ連携し、その職場環境に応じた巡視が行われるのが望ましいでしょう。
ここでは、産業医による職場巡視について、とくに重要とされるポイントについて解説します。
作業環境は、事業所(オフィスや現場)の室温、湿度、照度などを総合したものです。
空気環境(CO2濃度や温度、浮遊粉じん量など)や採光・照明などに関する数値について、事業所衛生基準規則に定められた水準を保っている必要があります。
たとえば、職場巡視でチェックされる水準は以下の内容が挙げられます。
室温 | 18度以上28度以下 | |
湿度 | 40~70% | |
作業に必要な照度 | 一般的な事務作業 | 300ルクス以上 |
付随的な事務作業 | 150ルクス以上 |
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省「快適職場[安全衛生キーワード]」
厚生労働省「事務所における労働衛生対策」
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました」
労働者を休ませるための休息施設の設営状況もチェック対象となります。
たとえば、業務の性質上長時間または夜間の拘束(夜勤)が生じる事業所には、男女別に睡眠・仮眠が可能なベッドや布団などの設備が必須です。
また、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者がいる場合、横になって休める休憩室を男女別に設置しなければなりません。
一度設置すればチェックを通過できる要素は多いですが、休憩施設の衛生面の維持は怠らないようにしましょう。
4Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔」の頭文字を連ねた略称であり、職場巡視のチェック対象となります。
4Sを満たす職場は、「設備や物品などが常に清潔な状態であり、必要な分だけ決められた場所に存在する」と定義できるでしょう。
産業医の職場巡視では、給排水や清掃実施状況などの基本的な清潔に関する法定事項だけでなく、働きやすさが確保されるだけの4Sが実施されているかどうかもチェックします。
▼参考サイトはコチラ
厚生労働省「4S(整理、整頓、清掃、清潔)[安全衛生キーワード]」
VDT(Visual Display Terminals)とは、液晶ディスプレイやキーボード、マウスといった情報端末の総称です。
現代では業種にかかわらず、パソコンを中心としたVDT作業はほぼ必須と言えます。
不適切なVDT作業は、目の疲れや首や肩の凝り、精神の疲労などさまざまな健康被害を引き起こす原因となるため、職場巡視では注視されるポイントです。
職業巡視では、VDT作業を行う時の適切な姿勢、周辺環境、連続作業時間といった観点から問題点がないかをチェックします。
▼参考サイトはコチラ
労働者健康安全機構「VDT作業とその対策」
安全衛生のチェックでは、平常時の観点だけでなく、緊急事態の際に労働者を危険から保護・救出するための備えがあるかどうかの観点も欠かせません。
職場巡視では、具体的に以下のような救急用具や緊急事態への備えの有無をチェックします。
・AED
・消火器
・避難経路や非常口
もちろん、こうした設備の有無だけでなく、場所や使用方法を講習などで周知できているか確認するのも重要です。
避難経路や非常口については、導線に障害物が置かれていないかも確認対象となります。
ここまで解説した事業場の安全衛生に加え、従業員の心身の健康管理も重要です。
具体的には、過重労働やメンタルヘルス不調への対策、健康診断の実施に関する内容がチェックされます。
たとえば、以下のようなポイントが挙げられるでしょう。
・休憩、有給休暇が適切にとれているか
・勤務時間が長すぎないか
・長時間労働がある場合に改善のための計画があるか
・雇い入れ時もしくは定期健康診断を実施しているか
・健康診断の結果に基づく保健指導は行われているか
職場巡視のチェックポイントは以下のリンク先の内容も参考にしてみてください。
職場巡視は従業員が毎日働く環境をメンテナンスする大切な業務です。
衛生管理者による日ごろの巡視から産業医による巡視まで、チェックリストを事前に用意することで有意義な内容にしましょう。
また、当コラムでも職場巡視チェックシートがダウンロードできますので、是非ご活用ください。
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すぐ使える!職場巡視チェックシート