安全衛生委員会とは?設置基準や産業医の役割

2022年01月17日

安全衛生委員会とは?設置基準や産業医の役割

職場での労働者の安全と健康を確保する目的で制定された労働安全衛生法では、この目的をそれぞれの企業が達成できる仕組みについて定めています。そのうちの1つが、「安全衛生委員会」の設置です。

今回の記事では、安全衛生委員会の概要や設置基準、構成員などの決まりから、具体的な活動内容、効率よく円滑に開催するためのポイントまで広く解説します。

安全衛生委員会とは?概要と実施背景について

安全衛生委員会とは?概要と実施背景について

労働災害の防止については、労使が一体となった実施が必要です。安全衛生委員会は、事業者が実施する職場での安全衛生(危険や健康障害防止)に関する対策について十分な調査や審議を行い、労働者の意見を反映させる場として仕組み化されています。従業員数などの一定の条件を満たす職場には、労働安全衛生法第19条によって安全衛生委員会の設置が法律で義務づけられています。

労働安全衛生法が公布される前の1960年代、労働災害の発生件数が非常に多くなっていました。労働災害による死亡者は、年間6,000人を超える深刻な事態だったのです。

その要因の1つとして、危険や健康被害といった労働災害防止のための取り組みが事業者から労働者に対してー方的に行われていたことがあげられます。事業者が整備した対策は、職場の実状に適していないものも多かったと言えるでしょう。

この状況を鑑み、労災防止に関する意見交換ができる場として定められたのが安全衛生委員会です。1972年に公布された労働安全衛生法で設置が正式に定められ、企業に義務付けられるようになりました。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省|安全委員会、衛生委員会について教えてください。

安全衛生委員会には設置基準が存在する

安全衛生委員会の設置基準

安全衛生委員会は、「安全委員会」と「衛生委員会」の二つが統合されたものであり、それぞれ委員の構成や調査審議事項等は異なります。

安全委員会

安全委員会は、主に労働者の危険を防止する対策や再発防止などの安全に関わる事項を話し合う場です。

衛生委員会

一方の衛生委員会は、労働者の健康障害を防ぐ取り組みなどの事項について労使が一体となって調査や審議を行う場です。

委員会の設置基準

委員会の設置基準は、業種や働く労働者の数などで変わります。

衛生委員会の設置基業は、業種を問わず従業員数が50名以上。安全委員会は、業種によって次のように設定されています。

業種 従業員数 安全委員会の設置要否
・林業
・鉱業
・建設業
・製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)
・運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)
・自動車整備業
・機械修理業
・清掃業
50人以上 必要
・製造業(1以外)
・運送業(1以外)
・電気業
・ガス業
・熱供給業
・水道業
・通信業
・各種商品卸売業及び小売業
・家具・建具・じゅう器卸売業及び小売業
・燃料小売業
・旅館業
・ゴルフ場業

100人以上 必要
50人以上100人未満 義務なし
1と2以外の業種 50人以上 義務なし

このように、職場によって求められる措置の程度には差が出るため、安全委員会の設置基準は細かく分けられています。

両委員会を設ける必要がある場合は、それぞれの機能と要件を統合した安全衛生委員会を設置することが可能です。

いずれも設置義務がない職場については、安全や衛生に関する事項について関係する労働者の意見を聴くための機会を設ける努力義務(労働安全衛生規則第23条の2)があることを覚えておきましょう。

▼参考資料はコチラ
政府統計|日本標準産業分類(平成25年[2013年]10月改定)
厚生労働省|安全衛生委員会を設置しましょう

安全衛生委員会の構成員について

安全衛生委員会の構成員

安全衛生委員会の構成員は、労働安全衛生法によって以下のように規定されています。

安全委員会の構成員

  • ・総括安全衛生管理者、または事業を統括管理する者もしくはこれに準ずる者…1名
  • ・安全管理者…1名以上
  • ・安全に関して経験のある労働者…1名以上

衛生委員会の構成員

  • ・総括安全衛生管理者、または事業を統括管理する者もしくはこれに準ずる者…1名
  • ・衛生管理者…1名以上
  • ・産業医…1名以上
  • ・衛生に関して経験のある労働者…1名以上

総括安全衛生管理者がいる場合は、委員会で議長を担います。選任要件に資格や経験の定めはありません。しかし、事業を統括管理する者として、工場長などのマネジメント層が選任されます。

「衛生管理者」は衛生管理者免許のほか、衛生工学衛生管理者免許、医師・歯科医師、労働衛生コンサルタントなどの資格をもった人物、「安全管理者」は厚生労働大臣の定める研修を受けたなどの条件を満たす人物を選任する必要があります。なかでも専門知識があって職場の状況に詳しい方が望ましいでしょう。

「産業医」は、医療の専門家としての視点から職場環境や労働災害防止のアドバイスをします。衛生委員会の構成員には産業医が必須となるため、設置基準(従業員50名以上)を考慮すると多くの企業で産業医が必要となるでしょう。

いずれの委員会においても、議長以外の構成員の選出については、不公平を防ぐために事業者側と労働者側がそれぞれ半数ずつ担うのが決まりです。労働者側では、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数)が推薦します。

また、委員の人数には定めがないため、企業の規模により自由に決められます。

安全衛生委員会における具体的な活動内容

安全衛生委員会の活動内容

安全衛生委員会の活動内容は、安全や衛生に関わる審議です。

審議すべき内容は労働安全衛生規則に細かく定められていますが、要約すると調査と報告に基づいて改善策を規定するための話し合いです。

これを踏まえると、委員会の活動内容は大きく次の3つに分類できます。

安全衛生委員会の活動内容

  • ・安全や衛生に関連するテーマの設定
  • ・テーマについての調査・報告に基づく現状把握や課題設定
  • ・課題に対応する措置の策定

委員会の大まかな流れとしては、まず長時間労働や労災などに関する定例報告を実施。その後、各回のテーマに沿って現状抱える課題に対する審議を行います。

たとえば、「社内で新型コロナウイルス感染症を防止するためには?」というテーマに対しては、「在宅勤務の検討」や「罹患者の出勤停止期間の目安の決定」「傷病手当金の受給方法といった罹患者に周知すべき情報の洗い出し」などのアクションについてです。

実際に周知した内容などについては、フィードバックまでしっかりと行い、改善の質を向上させていくと良いでしょう。

そのほか、安全衛生委員会でよく扱われるテーマとして、次のようなものが挙げられます。

安全委員会のテーマ例

  • ・過重労働と労災の関係について
  • ・夏季作業における熱中症対策
  • ・社用車の運転中における交通安全対策

衛生委員会のテーマ例

  • ・定期健康診断の受診率向上対策
  • ・従業員の有給消化率と促進
  • ・ストレスチェックとメンタルヘルス対策
  • ・施設内の禁煙・分煙対策

委員会の開催は毎月1回以上、議事録は3年間保存する義務があるため注意しましょう。

安全衛生委員会を効果的かつ円滑に実施するためのポイント

安全衛生委員会を効果的かつ円滑に実施するためのポイント

安全衛生委員会の開催は、単に法律上の義務を果たすためではなく、労働者の安全や衛生環境を改善するために行います。この目的を達成するうえで意識すべきポイントについて、以下に4つご紹介しましょう。

年間計画を立てる

委員会は月次の定期開催となるため、各月で扱うテーマを決めておき、通年で計画を立てると効果的です。

テーマ設定はランダムに行うよりも「夏季に備えて6月に熱中症対策をテーマにする」といったように時期に応じた内容を選択することで、実施とフィードバックが迅速にできます。

委員会の独自規定を用意する

委員会の運営に関する規定については、各社で独自に作成すると良いでしょう。義務はありませんが、基本的な審議事項や委員の任期や役割といった内容を明文化すると、委員会を円滑に進めやすくなります。

運営規定は厚生労働省が例となるフォーマットを公開しているため参考にしてみてください。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省|安全衛生委員会運営規程(例)

産業医と連携しやすい体制を作る

産業医は、医療の専門知識と第三者の視点をもった貴重な存在です。委員会への出席は任意とされていますが、毎回欠席だと意味がありません。産業医の巡視のタイミングに合わせて委員会を開催して参加しやすくする工夫が必要になります。

やむを得ず欠席となった場合でも、議事録の内容をメールなどで産業医へ送り、意見をもらいましょう。

リモート開催時の対応も用意しておく

新型コロナウイルス感染症が蔓延して以降、三密を避けた行動が推奨されています。委員会もオンラインでの開催が認められており、リモートでの実施は今後さらに増えるでしょう。

そのため、映像や音声が安定する通信環境や、オンラインでの資料の共有方法、議論の進め方など、さまざまな点に留意する必要があります。

現場を改善する強い意志を持って安全衛生委員会の運営を

安全衛生委員会は、労使が一体となって労働者の安全と衛生のために知恵を出し、改善に取り組む場所です。

近年では、長時間労働や感染症による健康被害から労働者を守る必要性が高まっています。企業が取り組む、安全や衛生に関する配慮にも変化が求められているのです。

委員会の設置や開催にあたっては、法律上の義務を守る一方で、本来の目的と使命を忘れず、形式的なものにならないように意識して運営しましょう。

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