EAPとは?生産性向上のための具体的な施策

2021年12月16日

EAPとは

日々の労働者が身を置く日常生活や職場での生活では、様々なストレスの要因があります。

人によってはメンタルに不調を起こし、仕事のパフォーマンスや周囲の士気に影響を与えかねません。

「ストレス社会」と呼ばれる昨今、企業は従業員のメンタルヘルスケアに十分に注意し、向き合っていく必要があるのです。

当記事では、その一助となる具体的な施策となる「EAP」について、基礎知識や導入するメリット、導入時・運用時の注意点などを解説します。

EAPとは?従業員のメンタルヘルスケア対策で重要な制度

従業員のメンタルヘルスケア対策で重要な制度

EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)とは、アメリカ発祥の職場におけるメンタルヘルス(心の健康)ケアサービスです。

1950年代にアメリカで社会問題となっていたアルコール依存従業員への対策に端を発し、仕事の生産性とメンタルケアの関係性が注目されて以降は世界中の多くの企業に利用されています。

具体的にどのような支援を行うかは、日本EAP協会の公式ホームページによると以下のように定義されています。

Employee Assistance ProgramまたはEAPは以下の2点を援助するために作られた職場を基盤としたプログラムである。

1.職場組織が生産性に関連する問題を提議する。
2.社員であるクライアントが健康、結婚、家族、家計、アルコール、ドラッグ、法律、情緒、ストレス等の仕事上のパフォーマンスに影響を与えうる個人的問題を見つけ、解決する。

(日本EAP協会)

定義が示す通り、メンタルヘルス不調だけでなく、ハラスメントの悩みや、家庭環境、経済的な不安や依存症など、健康維持に関する様々な問題を広くカバーする機能があります。

実態としてのサービス内容は、主にストレス診断・EQ(心の知能指数)診断や相談窓口の設置、セミナーの開催など企業によって様々です。

高まるメンタルヘルスケアの重要性について

厚生労働省が定期的に実施する「労働安全衛生調査(実態調査)」では、現在の仕事や職業生活で強い不安やストレスの原因を抱える労働者の割合が54.2%(令和2年 【個人調査】)という結果が出ています。

また、過去1年間(令和元年11月1日~令和2年10月31日)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休職または退職した労働者がいた事業場の割合は9.2%(令和2年 【事業所調査】)となっています。

個人レベルでは過半数を超える労働者がストレスを抱えていて、それが原因で休職・退職する人も決して少なくないというのが現状です。

2014年に施行された労働安全衛生法の改正では、従業員のストレスチェックやその結果を受けた面接・保健指導を義務付けるように定められました。

こうしたストレス社会の実態や法改正を受け、各企業はこれまで以上に従業員の安全と健康だけでなく、メンタルヘルスケアに対策を講じる努力も求められているのです。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省 令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要

EAPを導入するメリット

企業がEAPを導入することで、どのようなメリットが得られるでしょうか。

以下に主な2点のメリットについてご紹介します。

課題の見える化で効果的なメンタルヘルス対策が可能

厚生労働省によるとメンタルヘルスへの取り組みは、次の3段階に分かれています。

一次予防:メンタルヘルス不調を未然に防止する取組
二次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う取組
三次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰の支援等を行う取組

(Ⅰ メンタルヘルス対策のポイント)

段階が進むに連れて、職場への影響やコストが大きくなるため、早い段階で予防することが重要です。

EAPの一環で行う各種ストレス診断は、まず現状の見える化を可能にします。

個人のストレス要因や組織全体としてのストレス傾向といった情報を知ることで、問題の予防や早期解決を実現しやすくなるでしょう。

メンタルヘルス問題によるリスクを低減可能

従業員がメンタル不調をきたすと、企業には次のようなリスクが生じます。

メンタルヘルス問題によるリスク

  • ・集中力低下による生産性の低下やミスによる事故や怪我の増加
  • ・職場全体の雰囲気の悪化
  • ・休職者や離職者の増加による労働力の減少
  • ・対外的・対内的な企業イメージの低下

とりわけメンタルの問題はすぐに表出しにくいため、徐々に組織をむしばんでいくことも考えられます。

EAPを導入することで、問題の表出化と対策を可能にし、上記リスクを低減することが可能です。

EAPの導入は内部と外部の2通りアプローチが存在する

EAPの導入・内部と外部のアプローチ

EAPを導入する際には、すべてを自社内で行う「内部EAP」と、外部機関や企業を利用する「外部EAP」という2つのアプローチがあります。

ここでは2つの違いやメリットについて説明します。

内部EAP

内部EAPは、メンタルヘルスについて指導やカウンセリングができる産業医や保健師などを雇用または契約し、社内に常駐させて対応する運営方法です。

自社のニーズに合った体制を構築でき、EAPに従事するスタッフと従業員の距離が近いため、困ったときに気軽に相談できる点がメリットとなります。

ただし、スタッフを常時抱える分人材コストがかかるため、支社が多い企業や従業員の外出が多い企業では運用の仕方をよく検討する必要があるでしょう。

外部EAP

外部EAPは、社外のEAP機関と契約し、従業員が利用したいときに電話・メール・訪問といった手段で相談できるようにする運営方法です。

内部では相談できないようなプライベートな悩みも打ち明けやすく、従業員の利用頻度や予算によって柔軟にプラン変更が可能な点がメリットとなります。

導入のハードルは比較的低く、24時間365日対応のサービスもあるため、一般的に多くの企業が外部EAPを運用しているのが実情です。

EAPの導入と運用に際しての注意点

EAPの導入と運用に際しての注意点

EAPの導入によって高い効果を期待するのであれば、導入時あるいは運用時に注意しておきたいポイントについておさえておきましょう。

サービスの利用開始時に目標を設定する

EAPは慈善事業ではなく、コストを支払って従業員のメンタルヘルスケアを維持・管理してもらうサービスであるため、費用対効果は無視できません。

そのため、サービスの利用開始時点で具体的な目標設定をしておく必要があり、契約時に明文化すると良いでしょう。

目標はKPI(Key Performance Indicator:業績評価指標)として、サービス利用中の不調者・休職者・退職者の数、離職率やEAPの利用率など数値化できるものを設定します。

運用中は定期的にその目標の達成状況を確認したり、目標未達の場合にはEAP機関へ対処を求めたりといったアクションも重要です。

契約先の機関を十分にリサーチする

自社のEAPに従事する機関を選ぶ際には、効果的なサービスを提供してもらえるような相手かどうかを十分にリサーチする必要があります。

観点として、以下のような例を意識すると良いでしょう。

勤務形態の具体的なアイデア例

  • ・心だけでなく身体のケアもできるか
  • ・女性が相談しやすいか
  • ・専門の医師へ取り次いでもらえる体制があるか
  • ・情報漏洩に関する対策を行っているか
  • ・従業員の家族も利用できるか

KPIの成否にも関わるため、機関に所属するカウンセラーの経験や経歴、人柄まで十分に確認をしておきたいところです。

従業員にEAPについて徹底的に周知する

EAPの導入は企業の上層部や人事労務担当者などが携わりますが、サービスを利用するほとんどは事情を知らない従業員たちです。

そのため、EAP導入後は朝礼での説明、電子メール、社内掲示板など多数のコミュニケーション手段によって漏れがないように周知すると効果的です。

周知だけでなく、現場のマネジメント層やリーダー層といった管理者からEAPの説明を徹底させ、EAPの重要性を組織全体が理解したうえで利用できる環境づくりも不可欠でしょう。

まとめ

実際にEAPを導入してみると、少しずつ社内のメンタルヘルス問題が浮き彫りになることもあるでしょう。

それが組織としての問題の自覚と、対策のための取り組みが始まるきっかけとなります。

従業員がカウンセリングを利用することで一時的に個別の問題は解決するかもしれませんが、メンタルヘルスケアは継続して行うことが重要です。

EAPサービスに任せきりにしたまま完結するのではなく、KPIの設定や周知徹底、サービスの見直しなどを通して、企業としてもメンタルヘルスケアと向き合う意識をもちましょう。

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