健康経営とESG。従業員の健康が企業価値となる時代

2021年12月09日

健康経営とESG。従業員の健康が企業価値となる時代

近年の企業経営における大きなテーマにSDGs、ESGへの対応が挙げられます。両者は世界的な潮流であり、これまでの生活様式を大きく変革するインパクトがあるため、どの企業も喫緊の対応が迫られています。

この記事では、ESGと企業が従業員の健康と安全に取り組む「健康経営」の関係性について解説します。

ESG、ESG経営、ESG投資とは?

ESG、ESG経営、ESG投資とは?

ESGとは、下記のように環境、社会、ガバナンスの頭文字をとった言葉です。

・Environment=環境
・Social=社会
・Governance=ガバナンス

気候変動、人権、差別、貧困など、人類は様々な問題を抱えているなか、企業が持続的な成長、発展を遂げるにはESGの3つの観点が重要だという考え方が世界中に広がっています。

企業は、短期的に利益を上げることができても環境・社会的に悪影響があれば持続可能な成長は見込めないとの考え方から、企業は営利的な活動だけではなく、社会的な責任や中長期での投資が重視されるようになっています。

この3つの観点を重視した経営スタイルをESG経営といいます。

ESG投資とは?

企業の環境問題や社会問題の解決に結びつくような取り組みやサービスを評価して、投資家や金融機関が投資をすることをESG投資と言います。これまでの投資は短期的なリターンを追求する動きが顕著でしたが、気候変動などのリスクにも対応できる持続可能な企業価値を求めるようになりました。

ESGを評価された企業が資金を獲得し、ビジネスを展開することで、持続可能な社会を作ることが目的となっており、2006年に国連が提唱したPRI(責任投資原則)がきっかけで急速に普及しました。

2020年現在では、PRIへの賛同機関は年々増加しており、総資産運用残高は2020年では1京円超となっています。

企業活動を継続し、成長するにあたり、ESGは無視できないものであり、積極的にESGの観点での取り組みが求められています。

▼参考資料はコチラ
国土交通省「ESG投資の動向」

SDGsとの違い

SDGsは、2015年に国連サミットで採択された17のゴールと169のターゲットで構成された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」です。

ESGは企業活動や投資に限定された考え方であり、SDGsは世界が共通で取り組むべき目標となっています。また企業はESG経営をすることでSDGsに貢献ができ、そのような企業に投資することで投資家・投資機関もSDGsに貢献ができる、という循環構造になっています。

ESG経営の取組例

ESG経営の取組例

具体的にESG経営の取組事例を環境、社会、ガバナンスの視点で紹介します。取組は企業によって多岐にわたりますので、参考にしてください。

環境(Environment)の取組例

環境への取組は、脱炭素社会(カーボンニュートラル)や再生可能エネルギー、脱プラスチックなど身近な生活に溢れています。自動車産業におけるハイブリッドカーや電気自動車、水素エンジンなどは好例です。

そのほか、製造業ではCO2排出量の削減や化学物質の管理、リサイクルなどへの取組が代表的です。また牛がゲップで排出するメタンの量は地球環境に悪影響があると言われ、植物性の代替肉が普及している点もESG観点のイノベーション事例とも言えます。

社会(Social)、ガバナンス(Governance)の取組例

社会とガバナンスの取組は明確に区別しにくいので、同時に紹介します。

社会の代表的な例は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に代表されるように、多様な人材が平等に活躍できるオフィスや働き方の制度などの労働環境改善などが挙げられます。

女性や高齢者、障害者、LGBTの積極的な雇用や男性の育児参画や介護の両立、従業員の健康と安全に配慮した安全衛生推進体制やメンタルヘルスケア、残業時間の削減などの働き方改革など多岐にわたります。

またガバナンスの観点では、経営の透明性や監視機能の強化などコーポレートガバナンス体制の確立、企業倫理や法令遵守に加えて、女性役員、社外役員の就任、顧客の満足度などステークホルダーとの関係や社会貢献活動などが挙げられます。

非財務価値が評価される時代へ

これまではこのような社会貢献活動や雇用などは、直接的に利益を生む財務的な価値ではなく非財務的な企業活動ですので、重視されてきませんでした。ただ前述のように持続可能かつ長期的な価値が考慮される現在、ESGの3つの観点をバランスよく兼ね備えた経営が求められています。

またESGの取組は、現在世界各国のESG評価機関が取組ごとに企業を格付けしています。大企業やグローバル企業は自社だけではなく、サプライチェーンにも自社と同様の方針を求めますので、中小企業も無関係ではいられません。

健康経営とESG、SDGsの関係性

健康経営とESG、SDGsの関係性

では、健康経営はESG、SDGsとどのような関係性があるのでしょうか?SDGsの観点では、下記の3つの目標に該当すると考えられています。

【目標3】すべての人に健康と福祉を

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

【目標5】ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

【目標8】働き甲斐も経済成長も

すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する

さらに日本国内では少子高齢化が他国より進んでおり、現役世代が健康で長く働ける期間は重要な視点です。一人ひとりの従業員が働き甲斐を持ち、年齢や性差が関係なく、高い生産性で長く働ける企業は、サステナブルと言えます。

また以前から健康経営へ取組む企業は多かったですが、現在ではESGの観点から従業員への健康と安全への配慮を広報している企業が増えてきています。健康診断やストレスチェック、メンタルヘルスケアの徹底、ウーマンズヘルス(女性特有の健康問題)、産業医や嘱託医の配置、運動習慣の向上など取組は様々ですが、目標値を掲げて結果を公表している企業が増えています。

これまで健康経営は短期的な利益は出にくいことから優先順位が低くなっていた企業も多くあるでしょう。しかし、健康経営はSDGs、ESG経営の観点から重要な取組であり、中長期で自社に利益をもたらします。

まとめ

SDGsやESGは壮大なテーマや一部の投資家、上場企業に限った話ではなく、すべての企業、従業員にも関わるごく身近なものです。加えて、近い将来、対応していない企業は、いかにいい商品やサービスを展開していても社会的には評価されない時代がやってくるでしょう。

従業員一人ひとりの健康が企業価値となる時代はもう目の前まできています。またそれは各個人によるものではなく企業が経営戦略として取り組まなくてはいけません。

改めて、社内の働き方や従業員の健康に目を配り、小さな一歩から健康経営を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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