産業医の選任は、労働者50人以上の事業場に義務付けられており、従業員数によって依頼できる産業医の種別に違いがあります。会社の経営者や人事・労務担当者の中で現在、産業医の選任について検討されている方もいらっしゃるでしょう。
産業医は、主に勤務形態の違いによって「嘱託(しょくたく)産業医」と「専属産業医」に分類され、勤務できる事業場や報酬相場も異なります。
産業医に支払う報酬は会社の費用となるため、あらかじめ相場を把握しておきたいところです。今回は産業医の報酬相場や年収のめやすについて、種別ごとに解説していきます。
嘱託産業医と専属産業医の違い
まずは、嘱託産業医と専属産業医の違いを押さえておきましょう。
嘱託産業医
嘱託(しょくたく)とは「非常勤」の形態を指し、産業医を専門に多企業と契約している医師もいますが、普段は病院に勤務しながら空いた時間を利用して嘱託産業医として従事する医師が多く見られます。
非常勤のため、事業場での関わりは月1回〜数回ほどです。そのため、嘱託産業医に支払う報酬は専属産業医と比べると経済的負担が抑えられます。
ただし、嘱託産業医は常時50人から999人の労働者がいる事業場が対象になります。
専属産業医
専属産業医とは、労働者が1000人以上いる一般企業や、一定の有害業務に常時500人以上が従事している企業で選任される産業医を指します。
また専属産業医は、労働者が1000人以上で1人、3000人以上で2人以上選任する義務があります。
専属の産業医として事業場で働く従業員と共に勤務し、週4日から5日のフルタイムで契約されることがほとんどです。嘱託産業医と比べると勤務時間が大幅に増加するため、報酬額も高額になります。
産業医の年収と報酬の相場は?嘱託産業医と専属産業医それぞれ解説
嘱託産業医と専属産業医の違いを押さえたところで、それぞれの報酬相場を解説していきます。
嘱託産業医の報酬
嘱託産業医は、専属より勤務回数が少ないため、報酬額も比較的安価な傾向があると前述しました。
嘱託産業医は、基本月額報酬の他、健康診断の意見書作成や事後フォロー、休職や復職面談、超過勤務者の面談や高ストレス者の面談、ストレスチェックの実施者など別途報酬が発生することがほとんどです。
また、産業医の業務範囲や勤務形態も報酬の変動に関わってきます。
・事業場への訪問回数
・1回あたりの訪問時間
上記のような点を産業医、あるいは産業医紹介会社とあらかじめ相談し、報酬額を設定しましょう。
産業医の主な業務は
- ・月1回数時間の事業場への訪問
- ・職場巡視
- ・健康管理の基本的なアドバイス
- ・安全衛生委員会への出席
などです。
専属産業医の報酬
次に、専属産業医の報酬相場について見ていきましょう。
会社専属で業務を行なう専属産業医は、会社から直接雇用されることがほとんどです。また、一般従業員と同じような勤務形態であることが特徴となっています。
ただし、産業医としての業務が毎日あるわけではないため、週3日や1日6時間勤務といった産業医の希望を受け入れているのが実態となっています。
【 専属産業医の一般的な報酬目安 】
週1日勤務ごと:300万程度/年
よって、専属産業医の年収目安は、
- ・週4日勤務で1200万円/年
- ・週5日勤務で1500万円/年
このように算出できます。
専属産業医はベテランかつ優秀な先生を選任するため、人事の目線では部長級の年収をイメージしておくといいでしょう。 ただし上記の金額はあくまでも目安で、依頼する業務内容や経験年数、精神科・心療内科の専門医かどうかによっても、年収目安は100万単位で大きく変動します。
例えば、経験の浅い産業医では、週5日勤務であっても年収が900〜1100万円ほどに収まることもあります。一方で、専属産業医には、未経験や若手の産業医はほとんど選任されないのも現実です。
嘱託産業医の報酬が事業場の従業員数に比例することがあるのに対し、専属産業医の報酬は「週の勤務日数や医師のスキルや経験」が大きく関与しています。もちろん、専属でも事業場の従業員数によって報酬が加算される場合もあります。さらに大企業の複数選任された産業医をまとめる「統括産業医」は、さらに報酬が高くなることもあります。統括産業医は、特に経験や知識が豊富な産業医が勤めます。
嘱託・専属に関わらず、報酬額が高くなるということは、会社においてもそれだけ価値のある役割だと言えるでしょう。額面だけで判断せず、会社が必要とする産業医を見極め、より良い選任に繋げることが重要です。
まとめ
今回は産業医の報酬相場についてご紹介してきました。重要なポイントは3つです。
- ・産業医には嘱託・専属という種別がある。
- ・産業医の報酬額は事業場の従業員数によって変動することがある。
- ・自社の状況や産業医の希望などを考慮し、報酬額を総合的に判断する。
本記事でご紹介した産業医の報酬相場も参考に、事業場にとって適切な報酬額及び勤務形態を検討してみてください。
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