産業医から「産業医意見書」が提出され、どのように取り扱えばよいか悩む企業は多いのではないでしょうか。
医師が作成する文書ということから、診断書と意見書は同一と考えている担当者もいるかもしれません。
本記事では、産業医意見書の内容や作成される目的、法的拘束力、診断書との違いについて解説します。産業医意見書を企業が活用する方法についても紹介していますので、企業の御担当者様はぜひ参考にしてみてください。
産業医から「産業医意見書」が提出され、どのように取り扱えばよいか悩む企業は多いのではないでしょうか。
医師が作成する文書ということから、診断書と意見書は同一と考えている担当者もいるかもしれません。
本記事では、産業医意見書の内容や作成される目的、法的拘束力、診断書との違いについて解説します。産業医意見書を企業が活用する方法についても紹介していますので、企業の御担当者様はぜひ参考にしてみてください。
社員が産業医面談を受けた結果として記載されるのが産業医意見書です。
産業医意見書は産業医の専門的な判断や意見をまとめた文書で、診断書と比較し内容や作成目的、法的効力に違いがあります。
産業医は面談により社員の健康状態や労働環境などを把握します。
産業医意見書には、産業医が面談を通して総合的に判断した結果が記載されます。
さまざまな産業医意見書の書式がありますが、厚生労働省が参考として紹介している産業医意見書の内容は次のとおりです。
出典:厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の 面接指導に関する 報告書・意見書作成マニュアル」
日・週・月または年月日~年月日
「対人業務による精神的負荷が高いため、担務変更や異動を含めた業務内容の調整をご検討ください」など
「このまま症状悪化がみられなければ医療機関の受診は不要」など
参考:厚生労働省「医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル」
診断書とは医師が診察した結果を証明する書類です。健康状態や病気、ケガなどを直接診察したあとに診断名や症状、治療方針、必要な休養期間などが記載されます。
診断書は公的な文書であり休職や復職、労災など公的機関への支援や手当などを申請するときに使用されます。一方、産業意見書は企業の職場環境や労働条件、社員の健康状態に対する産業医の専門的な判断や意見がまとめられた文書です。
産業医意見書は診断書と異なり公的文書には該当しないため、診断書のように行政機関への申請や健康状態の証明には利用できません。
産業医意見書に診断書のような法的効力はありません。
労働安全衛生法に基づき産業医が事業者に提供する文書ではあるものの、あくまで企業の方針を決定する「参考資料」の一つです。産業医意見書が提出された場合、その内容を尊重する義務が発生しますが、最終的には企業の判断にゆだねられます。
産業医意見書を軽視すれば安全配慮義務違反、さらには損害賠償請求につながる可能性があります。適切に対応しなければ、最終的に企業の社会的信用を毀損しかねません。
産業医意見書は、産業医職務の一環として作成されます。企業は産業医から意見聴取した内容に対し、健康管理や就業上の措置について適切な対策を講じなければなりません。産業医意見書が作成される場面は以下の6つです。
参考:厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の 面接指導に関する 報告書・意見書作成マニュアル」
参考:厚生労働省「労働安全衛生法に規定する産業医関係の法条文 」
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健康診断の結果に何らかの異常があり産業医面談が必要と判断された場合、意見書が作成されることがあります。
健康診断で有所見と判断された労働者に対し、健康管理や就業上の措置について産業医など医師からの意見聴取が必要です。
産業医意見書には「血圧が高いため通院治療が確認できるまで時間外勤務制限、深夜業・出張・重量物運搬を禁止」などと記載されます。
長時間労働により産業医面談の対象者となった場合、意見書が作成されることがあります。
事業主は時間外労働が1カ月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。
産業医意見書には「業務多忙で治療継続が困難な状態。通院のための業務量調整や勤務配慮が必要」などと記載されます。
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され、本人が産業医面談を希望した場合、意見書が作成されることがあります。
企業は高ストレス者に対し医師による面接指導を実施し、健康管理や就業上の措置について意見聴取を行わなければなりません。
配慮事項として、「社外の人間関係に対する負担軽減のため、内勤への異動を含めた業務調整が必要」などと意見書に記載されます。
職場巡視を行った結果、健康障害リスクが高いと判断された場合、意見書が作成されるでしょう。たとえば、作業環境測定結果により健康障害リスクが高いと判定された作業環境、化学物質や工具、保護具の管理不備などです。
社員に健康障害や労働災害が発生し、再発防止策が必要な場合も同様です。
産業医意見書には「換気設備故障中。温湿度計とサーキュレーターの設置、換気設備の早急な修理が必要」などと記載されます。
社員が休職に入る前や復職時または復職後のフォロー面談の際、産業医面談を通じて意見書が作成される場合があります。
産業医意見書は診断書とともに、企業が社員の就業上の措置を講じるため参考資料として重要な役割を果たします。たとえば、休職の決定や復職判定、リハビリ出勤や就業制限の決定などに用います。
具体的には、「復職可とし1カ月リハビリ出勤実施。期間中は時間外・深夜業・休日出勤・出張禁止」などと記載されます。
社員が心身の健康にかかわる理由で産業医面談を希望した際、意見書が作成される場合があります。
産業医意見書には「異動による不安が大きく不眠傾向。現時点では医療機関受診不要。1カ月後再面談予定」などと記載されます。
社員の健康管理の推進と安全な職場環境を企業が確保するためには、産業医意見書の活用が効果的です。
産業医意見書は、健康リスクの高い社員を企業が早期に把握するのに役立ちます。健康リスクの高い社員との産業医面談結果として作成されるのが、産業医意見書です。
産業医が把握した社員の健康リスクに対し、企業は医療機関の受診勧奨や業務負担軽減を行い、健康状態が悪化しないよう対処する必要があります。
産業医意見書は、快適な職場環境づくりや労働条件の見直しに役立ちます。産業医が行う職場巡視の結果、作成された意見書をもとに、作業環境の危険性と有害性のリスクアセスメントを行い、リスク低減措置を実施しましょう。
有害物質の管理、照明や騒音、換気、室温などの作業環境管理や、作業方法・作業手順の見直しなどの作業管理を行い、労働災害の発生や再発を予防します。
休職前や休職者が復職する際、企業が最終的な判断をする参考資料として活用されるのが産業医意見書です。社員が復職したあとは、企業が就業上の措置を行う際に重要な役割を果たします。
産業医意見書には職場の実情に即した助言や提案が記載されているため、企業が就業上の措置を決定する際に有用です。復職の際は主治医の診断書だけでなく、産業医意見書もあわせて確認しましょう。
主治医の復職可の診断書が本人から企業に提出され、メンタルヘルス不調者の復職が見込まれる場合、企業は産業医意見書をもとに職場復帰支援プランを作成します。
具体的には、復帰前後のリハビリ出勤や復帰時期、時短勤務などの就業上の措置について、必要性や時期を検討します。また、復帰後の産業保健スタッフとの定期面談や再休職予防のための対策も含まれます。
産業医意見書と診断書は、どちらも社員の健康を守るための重要な文書です。診断書は主に病気を証明するのが目的で公的文書として取り扱われます。一方、産業医意見書は職場環境の調整を目的として作成されますが、公的文書ではありません。
産業医から意見書が提出された場合、社員の職場環境や労働条件の改善、健康管理への適切な配慮が企業には求められます。意見書を軽視すれば、安全配慮義務違反や損害賠償請求、ひいては企業価値の低下につながる可能性がありますので注意が必要です。
意見書の実効性を高めるには、自社の業務特性や実情を踏まえた配慮の提案など、産業医との密な連携が不可欠です。ただ、自社の課題やニーズに応じた対応ができる産業医を探すのに苦労するケースも少なくありません。
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