ストレスチェックの効果的な活用方法とは?重要なポイントや事例について解説

2022年05月17日

ストレスチェックは、2015年12月から労働者数50人以上の事業場を対象に義務付けられた簡易的なストレス度検査です(労働安全衛生法第66条の10)。

義務化を受けて形式的に導入したものの、うまく活用できていないと感じる事業者も少なからずいるでしょう。

そこで当記事では、ストレスチェックの効果的な活用方法をテーマに、そもそもの制度概要や目的をおさらいしつつ、厚生労働省の調査結果から見るストレスチェックの実施状況や活用する上で重要なポイント、参考とすべき事例について解説します。

ストレスチェックの概要や目的を改めておさらい

労働安全衛生法によって一部企業で実施が義務化されたストレスチェックは、そもそもどのような制度なのか、何のために存在する制度なのかを改めて確認しましょう。

ストレスチェックの概要

まず、ストレスチェックは医師や保健師などが実施し、受検および分析の結果は事業者を介さずに受検した労働者へ直接通知されます。

このとき、高ストレス判定が出た労働者には面接指導の申し出を推奨する通知も出されます。

高ストレス者は任意で事業者に面接指導の申し出をして、はじめて医師による面接指導やその結果による就業上必要な措置の判断が行われるのです。

また、ストレスチェックの結果は実施者(医師や保健師など)によって集団的に分析され、その結果は事業者にも提供されます。

これを受けて、事業者は業務内容や労働時間など職場環境の改善を図る努力義務があります。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックを実施する最大の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することです。

その手段として、検査結果のフィードバックによって労働者自身のストレスへの気付きを促すと同時に、危険信号が出ている高ストレス者には医師による面接指導でフォローします。

また、集団分析の結果を受けて事業者側が職場環境を改善して、より働きやすい職場づくりを目指すのも目的の一つです。

結果として、労働安全衛生措置やコンプライアンスの徹底による社会的信頼の向上、心身ともに健康な労働者による生産性向上など、事業者側にも多くのメリットが生まれます。

厚生労働省の調査結果から見るストレスチェックの実施状況

ストレスチェックの義務化から5年以上が経過した現在、制度はどの程度まで普及しているのでしょうか。

厚生労働省は、ストレスチェック制度に関する文献調査やアンケート調査、ヒアリング調査の結果を公表しており、ストレスチェックの実施状況については下記のようにまとめられます。

  • ・実施割合は年々増加傾向にあり、2020年度には全事業場のうち8割以上が実施
  • ・実際に受検した労働者の割合が約8割を超える事業場は77.5%
  • ・受検者に占める高ストレス者は、大半の事業場で5~20%の割合で存在
  • ・高ストレス者のうち、医師による面接指導を申し出る者の割合が5%未満の事業場が多い
  • ・集団分析結果を職場環境改善に組み込む事業場は30%台後半で推移

この結果から、小規模事業場(50人未満)を含めてストレスチェックの実施率および受験率は年々高くなってきており、ストレスチェック結果の集団分析結果を活用した職場環境改善の実施も少しずつ普及していると言えるでしょう。

その一方で、高ストレス者と判明した労働者へのフォローが十分ではない現状もあるようです。

定性調査からわかるストレスチェック制度の有効性

厚生労働省による上記調査のうち、アンケート調査の回答からは事業者と労働者の双方がストレスチェック制度の有効性を感じていることがわかっています。

回答者のうち、多くの事業者は「社員のセルフケアへの関心度の高まり」や「メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成」といった効果について挙げ、労働者については半数以上が「自身のストレスを意識することになった」と回答しています。

また、ヒアリング調査においては、継続的にストレスチェック制度に取り組んだ結果、実施以前と比較してメンタルヘルス不調者が5分の1に減少したという事業者もいました。

▼参考資料はコチラ
ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて

ストレスチェックを効果的に活用するためにはPDCAサイクルが重要

各事業者がストレスチェック制度を最大限に活用する上で大きなポイントとなるのは、「PDCAサイクルによる組織的な制度運用」です。

PDCAの各ステップにおいて主に実施する内容や意識すべき点について以下に解説します。

実施計画(Plan)

まず前提として、ストレスチェック制度を運用する前に実施計画(Plan)を策定し、目的・方針・実施体制とあわせて検討する必要があります。

こうした検討の段階は、一般的に衛生委員会や事業場の年間活動計画策定の場で行われます。

検討のポイント例は以下の通りです。

  • ・実施体制(委託先)
  • ・ストレスチェック実施前の説明方法や研修形式
  • ・実施形態(Web方式か質問紙方式か)
  • ・実施時期
  • ・調査項目
  • ・集団分析の分析単位
  • ・集団分析結果の開示範囲
  • ・職場環境改善の改善主体や改善方法など

とくに集団分析および職場環境改善は、ストレスチェック制度の主な目的である一次予防を推進するための重要なテーマです。

集団分析の実施や分析方法、結果の活用方針、職場環境改善を行うための体制整備は十分に検討しておきましょう。

実行(Do)

実施計画(Plan)の後は、ストレスチェックの実施から職場環境改善までのプロセスを実行する(Do)段階へ移ります。

各プロセスでは、実施者である医師や保健師などに各プロセスを定期的にフォローアップしてもらいながら随時振り返りを行い、必要に応じて改善をするといった小さなPDCAサイクルを生み出すと良いでしょう。

評価と改善(Check&Act)

実行(Do)が終わると、最後に総合的な評価と改善(Check&Act)を行います。

全体を通して上手くいった点を振り返ると同時に課題を整理し、次回以降の活動にフィードバックしましょう。

振り返りのポイントは、実施計画(Plan)で挙げた検討のポイント例と基本的に同様です。

振り返りの結果、実施体制や方法など、受検する労働者に直接影響がある見直しを行う場合には、変更事項やその理由などを丁寧に説明しましょう。

そのほか、集団分析結果の良い部署が実施している取り組みや、工夫しているポイントといった職場の好事例を他部署へ情報共有するのも効果的です。

▼参考資料はコチラ
職場環境改善報告書

ストレスチェック制度の課題と工夫のパターンを事例から学ぶ

ストレスチェック制度の効果的な活用にはPDCAサイクルが重要であり、その本質は「課題の発見と解決のための工夫」です。

そこで、実際の事業者がストレスチェックを実施した際の課題と工夫について事例を紹介します。

ストレスチェックの回答処理に関する課題と工夫

ある企業はストレスチェックの実施にあたり、質問紙方式とWeb方式を併用していました。

しかし、紙のマークシートでは回答が判読できないなど、入力作業に手間と時間を要し、労働者へ結果をフィードバックするまでに3か月以上要していたのです。

そこで、翌年度からWeb方式に統一する方針に変更し、各事業場にWeb入力コーチ(庶務業務担当者等)が配置されるようになりました。

結果として回答の処理に関する労働者の負担を軽減しつつ、フィードバックまでの期間短縮に成功したのです。

高ストレス者の面接指導時の課題と工夫

ある企業では、毎年各事業場で一定数が高ストレス者として選定されるものの、該当者による面接指導の申し出が非常に少なく、高ストレス者への支援方法が課題でした。

申し出が少ない原因について検討が進んだところ、医師による面接を受ける時点で「高ストレス者であると会社にバレてしまう」心理が大きな障壁になっている可能性について指摘が挙がります。

そこで同社は、高ストレス者に対する支援の一つとして、産業医や保健師による一般的な健康相談のほかに、会社に関知されずに相談できる窓口の設置を外部機関へ委託しました。

新たに追加された窓口については各事業場でのポスター掲示または社内イントラネットで周知され、その結果毎年利用率が上昇しているようです。

集団分析から職場環境改善時の課題と工夫

ある企業ではストレスチェック導入当初から、委託先から集団分析の結果の提供を受けていました。

しかし、社内の人事労務担当者だけでは提供された分析結果の解釈が難しく、導入から約2年間は職場環境改善につなげられていなかったそうです。

ある日人事労務担当者がこの件について嘱託産業医に相談したところ、近くの産業保健総合支援センター(さんぽセンター)を紹介されました。

そこでメンタルヘルス対策促進員に集団分析結果の解釈や考えられる課題などについて具体的な助言を受け、少しずつ職場環境改善の取り組みが進んでいったとのことです。

まとめ

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ目的が大前提の制度です。

労働者が自らのストレスに気づく機会を与えたり、ストレスの少ない職場環境をつくったりすることで、地道に少しずつ効果が表れるものだと考えましょう。

そのため、PDCAサイクルを回しながら課題と工夫を続け、根気強く実施しなければなりません。

しかし、こうした努力が労働者にとって「事業者から大切にされている」安心感につながるのです。

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