101人以上従業員を抱える企業が知っておきたい一般事業主行動計画

2022年02月18日

101人以上従業員を抱える企業が知っておきたい一般事業主行動計画

少子高齢化で日本の労働力減少が危惧されるなか、仕事と子育てを両立しなければならない共働き世帯は増加傾向にあります。

また、近年社会的要請の強い職業生活における女性の活躍も、労働力の強化にとって必要なピースです。

仕事と子育ての両立、そして女性の活躍の推進は密接に関係しており、それぞれ働く人たちにとって、あるいは国全体にとって重要なテーマとなります。

こうした女性や子育てをキーワードとした多様な労働条件を整備するため、必要な取り組みを企業ごとに促進する制度が「一般事業主行動計画」です。

当記事では、一般事業主行動計画の基礎知識や、根拠となる2つの法律との関係、計画に盛り込むべき内容などを解説します。

一般事業主行動計画とは?2つの法律に対になる計画が必要

一般事業主行動計画とは?2つの法律に対になる計画が必要

一般事業主行動計画(以下「行動計画」)とは、労働者の雇用環境や多様な労働条件を整備するための取り組みについて、特定の国や自治体、企業などの事業主に策定義務がある計画です。

策定した計画については、各都道府県労働局への届出、社内への周知や外部への公表が必要となります。

これら行動計画の策定から公表までに関する義務は、次の2つの法律に根拠があります。

  • ・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下、「女性活躍推進法」)
  • ・次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」)

女性活躍推進法に基づく行動計画と次世代法に基づく行動計画は別であるため注意しましょう。

法律の目的が別々の切り口となっているため、それぞれに対となる計画を立てなければなりません。

2つの法律の詳細や行動計画との関連、義務の要件はそれぞれ異なるため、詳細についてこれから解説していきます。

女性活躍推進法の内容と行動計画との関係

女性活躍推進法の内容と行動計画との関係

女性活躍推進法は、仕事で活躍したいと希望するすべての女性が働きやすく、かつ長期的にキャリアを形成できるように後押しする目的で、2015年8月に成立しました。

その後、2019年6月に改正法も公布されています。

同法は、国や自治体、企業などの事業主に対し次の項目について義務付けています。

  • ・女性の活躍状況の把握や課題分析(女性採用の割合や男女の平均勤続年数の差異など)
  • ・上記を踏まえた行動計画の策定・届出公表
  • ・女性の活躍に関する情報公表

これらの義務はもともと従業員数が301人以上の大企業のみが負っていましたが、2019年の法改正で101人以上の中小企業に対象が拡大されました(※)。 ※法改正の適用は2022年4月1日から

政府が求める「女性の活躍」については、定性的に次の観点を持っておくとよいでしょう。

  • ・女性が仕事と家庭を両立しながら能力を発揮できる環境の有無
  • ・女性に対する採用や昇進といった機会の豊富さ

とりわけ女性が活躍するためには、「マミートラック」の問題を避けて通れません。マミートラックとは、女性が産休・育休を経て職場に復帰した際、本人の希望に関係なく重要な業務を割り当てられない、もしくは単純な作業しか任されずに出世コースを外れてしまう事象です。

そのため、産休育休を原因とするキャリアアップの阻害を避け、女性が安心して職場に戻れるような制度づくりが必要となります。

総括すると、「男女関係なく仕事で最大限の力を発揮するための支援」こそが、女性活躍推進法に基づく行動計画で最重要視されるポイントなのです。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要」
厚生労働省「令和4年4月1日から 女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出」

次世代法の内容と行動計画との関係

次世代法の内容と行動計画との関係

次世代法は、次世代の社会を担う子供が健やかに生まれ、育成される環境整備を進める目的で2003年7月に成立しました。

従業員101人以上の企業には、次世代法に基づいた一般事業主行動計画の策定・届出・公表・周知が義務付けられています。

まず、次世代法では「子どもの出産と育児を積極的に支援する」点が最重要視されると意識しましょう。

その手段として、ワークライフバランスの確保や、仕事と子育ての両立に必要な雇用環境の整備を計画することが求められます。

これを踏まえたうえで、定性的に次の観点を持っておくとよいでしょう。

  • ・男女の家庭生活への参画バランス
  • ・労働時間が適正か
  • ・多様な働き方の容認があるか

少子高齢化や共働き世帯の増加によって「男は仕事、女は家庭」の時代は過去の産物になりつつあります。

家事・育児介護などの家庭生活の負担は男女がバランスよく引き受けることで、互いに仕事と家庭生活の充実を実現できるでしょう。

したがって、女性だけでなく男性の家庭生活への参画を推進するための取り組みも重要です。

また、仕事と家庭いずれかの二者択一を突き付けるのではなく、長時間労働の改善や多様な働き方の容認によって、抜本的な労働環境の見直しも求められます。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について」

一般事業主行動計画に盛り込むべき内容

一般事業主行動計画に盛り込むべき内容

では、具体的に行動計画にはどのような内容を盛り込めばよいのでしょうか。

まず、次世代法と女性活躍推進法の両方に共通する観点として、次の3点は必須事項となります。

計画期間

計画の期間は事業主の実情を踏まえて2〜5年程度の区切りを設け、定期的に行動計画の検証をしながら改定を行いましょう。

長期的に計画を管理するため、人事労務担当者や労働者の代表などを構成員とした委員会を設けると効果的です。

数値目標

設定する目標は、1つ以上を実数や割合、倍数といった数値で定める必要があります。

数値化によって達成すべき目標が明確になると同時に課題の改善について定量的に測定でき、公表の際は内容が誰にとっても一目瞭然となります。

計画期間内に達成を目指すものとして、各事業主の実情に見合った水準にしましょう。

【数値目標の事例】

  • ・採用者に占める女性比率を〇〇%以上とする
  • ・従業員全体の残業時間を△△時間以内とする
  • ・女性の人事評価結果の平均値を男性と同水準の××ポイント以上とする

取り組み内容と実施期間

取り組み内容を決定する際は、設定した数値目標のなかで優先順位をつけて、目標達成に必要なアクションが何かを検討しましょう。

また、実施する期間を正確に定めれば、取り組みとその結果の関係を導き出しやすくなります。

続いて、2つの法律において有効とされる取り組み例についてそれぞれ列挙します。

女性活躍推進法における取り組み例

  • ・採用選考における面接官の性別に対するバイアスの排除
  • ・女性の活躍に関する情報についての求職者に向けた積極的広報
  • ・個人面談の実施を経たキャリア転換または昇格に関する支援
  • ・育児、介護、配偶者の転勤などを理由とする退職者に対する再雇用の実施

次世代法における取り組み例

  • ・仕事と子育ての両立についての相談や情報提供を行う窓口の設置や担当者の配置
  • ・男性に対する子育て目的の休暇の取得推進
  • ・育児休業中または休業後の待遇やその他労働条件に関する周知徹底
  • ・短時間勤務制度やフレックスタイム制度の実施
  • ・事業所内託児施設の設置および運営

▼参考資料はコチラ
東京産業労働局「女性活躍推進法 ・ 次世代育成支援対策推進法のポイント」

認定制度の存在で企業にもメリットがある

認定制度の存在で企業にもメリットがある

行動計画の策定は時代的社会的な要請に基づいた義務です。企業はCSRの一環として義務を負う一方、協力に応じたメリットも用意されています。

そのメリットの中心となるのが認定制度の存在です。

行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、特定の条件を満たした場合は厚生労働大臣の認定を受けることができます。

認定を受けると、次世代法の場合は「くるみん」および「プラチナくるみん」、女性活躍推進法の場合は「えるぼし」および「プラチナえるぼし」という認定マークを利用可能になります。

これらのマークを商品のパッケージやインターネットの広告などに表示することで、自社が仕事と子育ての両立をサポートしている、あるいは女性の活躍について積極的に取り組んでいるというPRになるのです。

これによって、企業の社会的な取り組みを重視する顧客の新規獲得につながります。

また、認定を受けた一部企業(※)は、各府省庁における公共調達で優遇される可能性が高まるメリットもあります。

※プラチナくるみん、プラチナえるぼし取得企業

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「「えるぼし認定」「くるみん認定」について」

まとめ

同じ一般事業主行動計画であっても、根拠となる次世代法と女性活躍推進法の2つで求められる内容が異なります。

次世代法が「仕事と子育ての両立」、女性活躍推進法が「女性が能力を最大限に発揮する機会」といった切り分けで取り組みを整理すると効果的でしょう。

2022年4月以降は、すべての行動計画に関する義務の対象が中小企業も含むようになるため、該当する企業は労務管理担当者を中心に準備を進めましょう。

行動計画の策定や取り組みの実施には法的義務を守る以上の意味があります。

認定制度も用意されているので、議務の対象でない企業も是非検討してみてはいかがでしょうか。

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