強迫性障害とは 症状と治療法について解説

2022年06月17日【監修・イラスト】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医 清水杏里先生

戸締りの確認をしに何度も家に戻ったり、汚れや細菌が気になって過剰に手を洗うなど、何度繰り返しても安心できず生活に支障をきたしてしまう場合は「強迫性障害」かもしれません。
今回は強迫性障害の症状と治療法やについて詳しく解説します。

強迫性障害とは

強迫性障害とは、強い「不安」や「こだわり」があり、何度も同じ行為を繰り返したり、一つの考えが頭から離れず、日常生活に支障が出てしまう病気です。

世界保健機関(World Health Organization:WHO)で「生活上の機能障害をひきおこす10大疾患」のひとつにあげられています。思春期の後半や成人期の初期に発症しやすく、成人の40人に1人にみられる疾患です。

自分でも「ばからしい」と思ってもやめられないことが特徴で、症状は「強迫観念」と「強迫行為」にわけられます

    • ‣ 強迫観念

ある考えが頭に浮かび、その考えが頭から離れなくなります。

    • ‣ 強迫行為

不安にかきたてられて、ある行動ををしないではいられず、何度も繰り返します。手の洗浄や戸締りの確認などがあります。

以下に、代表的な強迫観念と強迫行為の例を挙げます。

強迫観念と強迫行為の例
不潔恐怖と洗浄

汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い・入浴・洗濯を繰り返したり、ドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを触れない

加害恐怖

「誰かに危害を加えたかもしれない」という不安が頭から離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する

確認行為

戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認する

儀式行為

「自分の決めた手順でものごとを行わないと、恐ろしいことが起きる」という不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない

強迫行為の例

戸締りの確認をしに家に戻ったり、清潔のために手を頻繁に洗うことは誰にでもあると思います。「少し神経質なだけ」なのか、「ちょっと行き過ぎか」という判断は難しいところです。

不安や確認が強すぎて、何度繰り返しても安心できず、辛さを感じたり、時間をとられて約束や仕事に遅れてしまうなど、生活に支障がでている場合は「強迫性障害」かもしれません。

また、家族に火や戸締まりの確認を何度もさせたり、アルコール消毒を強要したりするなど、周囲の人を強迫観念に「巻き込む」という症状もあります。

その結果、周囲の人が疲弊してしまいます。自分では「病気というほどひどくない」と感じていても、家族や友人など周囲の人が困っているようなら、受診を考えてください。

治療法

強迫性障害の原因ははっきりと特定されていませんが、もともとの性格に加えて、脳の神経伝達物質の調節障害や、脳のある部分の活動性の異常が影響していると言われています。また、ストレスや感染症など、様々な要因も関係しています。治療には、「認知行動療法」と「薬物療法」を組み合わせることが効果的です。

・認知行動療法

「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」が代表的な治療法です。「わざと不安を起こすような状況に患者さんをさらし、不安に耐えて、強迫行為をしないで我慢する」ことで、徐々に不安が下がっていくという行動療法です。

たとえば、「汚いと思うものを触って、手を洗わずに我慢する」「外出した後は施錠を確認するために戻らないで我慢する」などです。こうした課題を続けていくと、不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても済むようになります。

・薬物療法

抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)が効果があります。うつ病の方に使うよりも高用量で、長期間の服薬が必要です。副作用など不安がある場合には、主治医とご相談ください。

まとめ

強迫性障害は「ちょっときれい好きなだけ」「心配性なだけ」と思われることが多く、病気と自覚しにくいため、受診や治療に繋がりにくい疾患ですが、適切な治療を行えば、症状の改善が可能です。

強迫性障害の症状にとらわれて、ご自身やご家族の方が困っている・生活に支障が出ている場合は、まずは専門機関を受診して、相談してみてください。

併せて読みたい記事はこちら
5月病と適応障害について 症状と治療法を解説

<参考文献>

強迫性障害|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_compel.html

OCD(強迫性障害) |NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease21.html