ギャンブル依存症  診断基準と治療法について解説

2022年04月04日【監修・イラスト】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医 清水杏里先生

失業や離婚、虐待、自殺などの社会的問題を引き起こすこともあるギャンブル依存症。やめたいと思っても自分の意志ではなかなかやめられないギャンブル依存症について、その診断基準や治療法、身近な人が依存症だと感じた時の対応方法などを解説します。

ギャンブル依存症とは

ギャンブルとは、結果を予想して、物やお金を賭けることを指します。日本では、競馬、競輪、競艇、宝くじ、パチンコ、パチスロ等があてはまります。決めた金額の範囲で適度に楽しめる方も多い中で、ギャンブルにのめりこむうちに「依存症」になってしまう方もいます。

「依存症」とは「やめたいのにやめられない状態」を指します。掛ける金額が増えて高額な借金をする、ギャンブルを隠して身近な人に嘘をつく、仕事を休んでギャンブルをするなどの行動から、失業や離婚、虐待、自殺などの社会的問題が生じることもあります。ギャンブルをしたいという気持ちが抑えられないのは、脳内に機能的、構造的な変化が起こるからと考えられています。そのため、どんなにやめたいと思っても、自分の意志ではやめられなくなってしまいます。

平成29年度の全国調査によると、国内の「ギャンブル等依存が疑われる者」の割合は、成人の0.8%(約70万人)とされています。また、一生のうちに一度はギャンブル依存症を経験する人の割合は、成人の3.6%(約320万人)と推計されています。ギャンブル依存症は、誰もが関わる可能性があり、適切な治療と支援によって十分回復が可能な病気です。

しかし、治療を行う医療機関や、支援相談機関、自助グループ等の情報を得にくく、依存症の方が適切な治療、支援を受けられていないというのが現状です。そのことを踏まえ、国が総合的、計画的にギャンブル等の依存症対策を推進していくために、「ギャンブル等依存症対策基本法」が平成30年10月に施行されました。

ギャンブル依存症の診断

以下に米国の診断基準を記載します。過去12か月で4項目
以上あればギャンブル依存症の診断がつきます。
4,5項目は軽度、6,7項目なら中等度、8,9項目を重度
としています。

ギャンブル依存症

DSM-5 ギャンブル依存症診断基準
(1) 興奮を得るために掛け金が増えていく
(2) ギャンブルをやめると落ち着かず、イライラする
(3) ギャンブルをやめようとしてもやめられない
(4) いつもギャンブルのことを考えている
(5) 辛い気分の時にギャンブルをする
(6) 失った金額を別の日に取り戻そうとする
(7) ギャンブルにのめり込んでいることを隠すために嘘をつく
(8) ギャンブルのために人間関係、仕事、学業などを機牲にする
(9)ギャンブルをする金を出してほしいと他人に頼る

治療法

ギャンブル依存症に有効な薬物は、まだありません。考え方のクセを見直し、柔軟で合理的な考え方を身につけ、行動を変える「認知行動療法」が有効とされています。ギャンブルで得たものと、失ったものを整理し、今後の目標を自分で決めたり、「ギャンブルをしたくなった際の対処法」を考えていきます。

また、依存症の問題を解決するために、本人・家族に身近な自助グループや、民間団体の活動支援がとても重要です。自助グループは、12ステップの回復プログラムに基づき、当事者が自発的に集まってその回復を目指すグループのことです。GA(ギャンブラーズ・アノニマス) が有名です。

身近な人が依存症だと感じたときは

ギャンブルにのめりこむと、身近な人に嘘をついて隠したり、借金をするという行動が増えます。そのため、交友関係・家庭関係を壊してしまう原因となり、依存症の方が孤立してしまうという負の連鎖が起きます。ギャンブルをする方が、家族の行事を顧みなくなった、家庭内の金銭管理に関して暴言を吐くようになった、等の変化が見られる場合、依存症を疑う必要があります。

依存症から回復するためには、まずは専門相談窓口や専門医療機関に相談することが大切です。本人が自ら問題に気づいて相談窓口や医療機関に繋がることが理想ですが、依存症は「否認の病」と言われており、多くの方は「自分が病気で、治療が必要である」という認識が薄く、それよりも、「借金をどうするか」ということに意識が向いています。そのため、周囲が安易に金銭的な援助をしないことや、専門家と相談しながら問題にとり組むことが重要になります。

借金の肩代わりをしたり、迷惑をかけた相手に本人の代わりに謝ると、本人は問題に向き合わないままで、結果として回復を遅らせてしまいます。そのような不適切な行為を「イネイブリング」と呼びます。 専門機関に繋がるために、周囲の方から本人に「悩みを聞いてもらったら?」と誘導することが大切です。「病気だから治療しないと」など直接的に伝えても本人は納得せず、否定することが多いため、注意が必要です。また、まずは周囲の人だけで相談機関に行き、相談することでも、解決方法を探す手掛かりになると言えます。

GA(ギャンブラーズ・アノニマス)などの自助グループも、依存症者の家族が集い、悩みを共有し、理解とサポートを得ることができます。自助グループのメンバーなど、類似の経験を持つ人たちの知見などをいかし、本人が回復に向けて自助グループに参加することや、借金の問題に向き合うことを促しましょう。家族だけで問題を抱え込まず、依存症の方の言動に振り回されずに、健康的な思考を保つことが重要です。

まとめ

ギャンブルをやめたくてもやめられないのは、意志の弱さのせいではなく、「依存症」という病気です。もしご自身がギャンブル依存症ではないかと感じたら、まず専門の医療機関を受診するなど、関係機関に相談してみましょう。

そして、同じ悩みを抱える方たちが支えあう自助グループに是非参加してみてください。ギャンブルにとらわれず、健康的な生活を送れるように、一歩ずつ取り組んでみましょう。

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<参考文献>

高橋三郎、大野裕監訳: DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院, 東京, 2014 ギャンブル等依存症対策基本法及び基本計画の概要等についてhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/setsumeikai/dai1/siryou1.pdf
(内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局)

ギャンブル依存症の症状とサインhttps://www.ncasa-japan.jp/notice/gambling/sign(依存症対策全国センター)

ギャンブル等依存症でお困りの皆様へhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/(消費者庁)

田邉等先生に「ギャンブル依存症」を訊くhttps://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=33
(日本精神神経学会)