つらい花粉症。その治療法やセルフケアについて解説

2022年02月25日【監修・イラスト】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医 清水杏里先生

寒く厳しい冬が終わりを告げるころ、花粉症の人には、悩ましい季節がやってきます。
花粉症は眠気、だるさ、集中力の低下を起こすことから、仕事の作業効率低下の原因になります。今回は花粉症の原因や治療法、セルフケアについて詳しく解説します。

若年化が進む花粉症

 

花粉症は花粉によって引き起こされるアレルギー疾患
です。花粉を吸いこんだ時に鼻粘膜が刺激されてくし
ゃみ、鼻水がでる「アレルギー性鼻炎」と、花粉が目
の粘膜に触れて、涙がでたり目のかゆみが生じる「ア
レルギー性結膜炎」に分けられます。花粉症は眠気、
だるさ、集中力の低下を起こすことから、仕事の作業
効率低下の原因になります。日本人全体のおよそ30%
は花粉症と言われています。特に、近年は若年の花粉
症患者が増加していることが問題となっています。
下のグラフは「平成28年度の東京都内における推定有
病率」です。全体の有病率は増加傾向で、平成18年度
以降は15-29歳の方が最も多く、0-14歳の患者さんも
増えてきています。

花粉症の男性

平成28年度の東京都内における推定有病率

花粉症の原因

 

花粉症の原因としてはスギの花粉が最も多く、70%を占めています。他にはヒノキ、シラカンバ、ブタクサなどが原因となります。昭和20年から40年代にかけて木材資源の確保のためにスギ・ヒノキの植林が行われ、現在、関東地方には35万ヘクタールのスギ林があります。その後、国産の木材利用の低迷などでスギの伐採が進まず、スギの本数は変化していません。しかし花粉生産量の多い樹齢30年以上のスギが増えており、今後も花粉の飛散量と花粉症の患者数は増加していくと考えられます。

花粉症の時期

 

主な花粉が飛散する時期は、地域によって多少違いがありますが、スギやヒノキは2-4月の春が中心で、秋にも少量の花粉が飛散することがあります。ブタクサやヨモギなどの花粉は夏の終わりから秋にかけて飛散します。症状の出る時期によって、ご自分がどの植物の花粉で症状がでるのか、ある程度予測ができると思います。症状がある方は耳鼻咽喉科、アレルギー科などで原因となっている植物の検査をお勧めします。血液検査で花粉に対するIgE抗体を調べる方法と、皮膚に花粉のエキスを垂らし、ひっかいてアレルギー反応が起きるかを見るプリックテストという方法があります。

花粉症の治療

症状を軽減する「対症療法」と、根本的に治す「根治療法」に加えて、「抗IgE抗体療法」が登場しました。

・対症療法

現在は「抗ヒスタミン薬」が中心となっています。以前は副作用として眠気が強い薬剤が多かったのですが、最近では眠気がほとんど起きず効果が強いものも増えています。他に点鼻ステロイド薬、内服ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬、手術療法などがあります。

・減感作療法

スギ花粉を徐々に体に取り込んでいき、体質を改善する治療法です。皮下注射のほかに2014年から認可された「スギ花粉舌下免疫療法」が注目されています。スギ花粉エキスが入った錠剤を舌の下に毎日含む方法で、治療は長期間(3年~5年)かかります。やめた後でも効果が持続するのが特徴で、2年以上続けた患者さんの約60%の方に効果が持続しています。ただし花粉症の症状が出ている時期には行えないため、6月から11月に開始する必要があります。

・抗IgE抗体療法

2019年12月に抗IgE抗体オマリズマブによる治療が保険適用されました。これまでの治療法で症状が抑えられない重症・最重症の方に、2~5月限定で行える治療で、月に1-2回注射を行う必要があります。費用は3割負担の方で月に45百円~7万円で、自己負担が高額になる場合は、限度額適用認定証や医療費助成を受けることをお勧めします。

花粉症のセルフケア

花粉症の症状をおさえ、発症を遅らせるためには、い
かに花粉に触れないようにするかが重要です。花粉症
は、花粉を浴びた量がアレルギー物質に対する「許容
量」を越えると発症すると考えられています。そのた
め、現在花粉症ではない人も、今後発症する可能性は
十分にあります。花粉は

  • ①晴れて気温が高い日
  • ②空気が乾燥して風が強い日 
  • ③雨上がりの翌日や、気温の高い日が2~3日続いた
    あとの昼から夕方

に多く飛散します。外出時の服装はセーターやファー
などの毛足が長い服を避け、表面が滑らかな、花粉が
付着しにくいものにしましょう。外出時はマスクに加
えメガネやゴーグルなどで花粉の付着を防ぎましょう。 

花粉症対策をした女性

帰宅時には服についた花粉を払って上着を脱ぎ、家の中に花粉を持ちこまないようにしましょう。帰宅直後の手洗い、うがい、洗顔も有効です。花粉の時期はなるべく洗濯物を室内に干し、床は濡れ拭きが効果的です。

そのほかに、バランスのいい食事をとり、睡眠不足に気を付けて、疲れをためないことは、免疫機能を保つために重要です。風邪をひかないこと、節酒、禁煙も鼻粘膜を正常に保つために重要です。セルフケアと治療をあわせて、これからの花粉症の季節を快適に過ごしましょう。

併せて読みたい記事はこちら
果物アレルギーと花粉症の意外な関係

<参考文献>

花粉症特集>はじめに ~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/ookubo.html(厚生労働省)

花粉症特集>的確な花粉症の治療のために(第2版)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf(厚生労働省)

花粉症一口メモ令和3年版 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/pri06_04.pdf(東京都健康安全研究センター)

花粉症環境保健マニュアル2019 https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2019_full.pdf(環境省)