アトピー性皮膚炎

2021年10月01日【監修】ワーカーズドクターズ産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医 清水杏里先生

アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚のバリア機能が低下しており、さまざまな刺激に皮膚が反応して炎症が生じやすくなります。皮膚の乾燥と強いかゆみのある湿疹が生じ、症状は悪化と改善をくり返します。

アトピー性皮膚炎とは

遺伝子変異などに伴う角層の異常に起因する皮膚の乾燥と、バリア機能障害、免疫・アレルギー学的異常に伴うアトピー素因、瘙痒などが関与する多病因性の疾患で、生活環境やストレスなどが悪化因子となります。

 

<診断基準>

強いかゆみがある 

②体の左右同じ場所に、特徴的な皮疹(湿疹)が
あらわれる

<年齢的な特徴>

・乳児期:頭や顔に始まり、次第に体や手足に降
りていく

・幼小児期:首や手足の関節に皮疹ができやすい

・思春期・成人期:上半身(頭、首、胸、背中)
の皮疹が強い

成長別アトピー性皮膚炎の湿疹

治療について

アトピー性皮膚炎の薬物療法は外用(塗り薬)が中心です。治療により皮膚がきれいになっても、皮膚の深い層に炎症が残る場合もあるので、中断せず継続して治療を行うことが重要です。

・ステロイド外用薬
治療の基本となる薬剤です。強さにより 5 つのランクに分類され、炎症の強さと塗る部位により使い分けられます。全身の副作用の心配はまずありませんが、塗布部位の皮膚が薄くなったり、感染を起こしやすくなることがあるため、定期的に医師の診察を受ける必要があります。

・タクロリムス軟膏
タクロリムス(プロトピック ®など)軟膏は、ステロイドのように皮膚が薄くなる副作用がないため顔や首には効果的です。副作用として、塗った後にひりひりしたりほてることがあり、強い紫外線を避ける必要があります。

・プロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎は悪化と改善をくり返すことが特徴です。そこで、症状を抑えたあとにも、外用薬を定期的(週2~3回)に塗って症状が抑えられた状態を維持する「プロアクティブ療法」を進めます。外用薬の使用量も少なくて済むため、副作用も軽減できます。

・JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬
2020年からJAK阻害薬としてデルゴシチニブ軟膏(コレクチム® 軟膏 0.5%)が登場しました。細胞内の免疫を活性化する「シグナル伝達」に関わるJAKの働きを抑制し、症状を改善させるものです。

・生物学的製剤
上記の治療でも改善が難しい成人の重症の患者さんに、デュピルマブ(デュピクセント ®)という生物学的製剤の注射薬が用いられることがあります。2 週間に1度の注射が必要ですが、自己注射が可能な薬剤ですので毎回通院する必要はありません。

スキンケア

皮膚のバリア機能を補い状態を整えるため、清潔に保ち、保湿し、紫外線から守ることが大切です。

・洗浄
汗や汚れ、ブドウ球菌などが湿疹の悪化要因に
なるため、入浴やシャワーによる洗浄が必要で
す。石けんの成分が皮膚に残っていると症状が
悪化することがあるので、しっかりすすいでく
ださい。

・保湿
保湿剤を塗ることで、バリア機能が改善して湿
疹を起こしにくくなります。乾燥による皮膚の
かゆみにも有効です。保湿薬は入浴後すぐ(5
分以内)に塗るのがよいとされています。正常
に見える部分も乾燥しているため、全身に塗り
ましょう。季節に関係なく継続してください。

アトピー性皮膚炎のためのスキンケア

 主な悪化因子

アトピー性皮膚炎では、汗や髪の毛の接触、衣
類との摩擦といった刺激、寝不足や不規則な生
活、ストレスなどで悪化することがあります。
ダニ、ホコリ、花粉、ペットの毛などもアレル
ギーを引きおこし症状を悪化させる要因になる
ことがあります。
また、精神面への影響として、
・ストレスでかゆみが生じ、皮膚炎が悪化する
・強いかゆみや皮膚症状で心理的に追い詰めら
れて不眠になった り、人と会うことを避ける
・薬への不安や医療への不信感、症状が改善し
ない無力感から、自分の判断で治療を中断して
しまう などが挙げられます。

アトピー性皮膚炎のかゆみの様子

 治療と就労の両立支援のために

「アレルギー疾患の患者および養育者の就労・就学支援を推進するための研究」班が行ったアンケート調査で、アトピー性皮膚炎のために「仕事量や内容が制限されることがある」と答えた方は35%で、「仕事の生産性が半分以上低下した」と感じている割合は 15%でした。治療と就労の両立支援の取組は、働く意欲を高め、労働生産性の向上に繋がり、企業においても貴重な人材を失うことなく、大きなメリットとなると考えられます。
労働者健康安全機構のアンケート調査(平成 25 年)によれば、患者さんが必要と感じている支援は ①治療法、体調などに応じた柔軟な勤務体制 ②治療・通院目的の休暇・休業制度 ③休暇制度を利用しやすい社内風土の醸成が挙げられています。職場の休暇制度、勤務制度を活用し、円滑に治療を受けることができるように配慮することが望ましいと考えられます。時間単位休暇の制度等、取り組めるところから取り組んでいただければと考えます。


<参考文献>

アレルギーについて アトピー性皮膚炎https://allergyportal.jp/knowledge/atopic-dermatitis/(アレルギーポータル)

治療と就労の両立支援マニュアルhttps://allergyportal.jp/documents/allergy_ra_support_manual.pdf(アレルギーポータル)

バリシチニブ製剤の最適使用推進ガイドラインhttps://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201225I0020.pdf(厚生労働省)

【この記事はダウンロードして講話資料としてお使いいただけます】
                                ダウンロードはこちら⇒