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過重労働面接(長時間労働者に対する医師による面接指導)とは?

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更新日: 2023.09.21
過重労働面接(長時間労働者に対する医師による面接指導)とは?
この記事を書いた人:ワーカーズドクターズ編集部

産業保健に関する情報を幅広く発信。産業医業界で10年以上、約1,250ヶ所の事業場の産業保健業務サポートをしているワーカーズドクターズだからこその基礎知識や最新の業界動向など、企業様の産業保健活動に役立つ情報をお届けします。

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厚生労働省のデータによると、国内における労働時間は年々下降傾向にあります。従業員が30人以上の企業における1か月の労働時間は平成2年時点で171時間でしたが、令和2年では140.4時間と、この数十年で約30時間も短くなっています。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「労働統計要覧 実労働時間数(調査産業計)」

国が官民一体で従業員の待遇是正へ向けて働きかけた成果と言えるでしょう。しかし、労災の請求・補償決定件数はほとんど下がっていないというデータもあります。つまり、全体としては労働時間が減っているものの、一部ではいまだ過重労働が問題となっているのです。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

そこで本記事では、従業員の過重労働による危険性と、その対応策である「長時間労働者に対する面接指導(過重労働面接)」について解説します。

過重労働の危険性

過重労働の危険性

そもそも過重労働とは、長期間にわたる労働や、身体的・精神的に負荷の大きい労働が該当します。ただし、法令などで明確な定義がされているわけではありません。

過重労働による疲労の蓄積は、身体・精神ともに被害を被る可能性があります。身体的な危険では、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的な結果が出ており、死に至る場合もあります。また、精神的な危険では、うつ病などの精神障害の原因となり、最悪のケースでは自殺に追い込まれる可能性もあります。

なお、2021年に脳・心臓疾患に関する労災認定基準が改正され、「長期間の過重業務」の評価について、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価することが明確化されました。その他にも改正されているポイントがあるため、気になられる方は以下の記事をご覧ください。

▼関連記事はコチラ
【20年ぶりに改正】脳・心臓疾患労災認定基準の改正ポイントを解説

長時間労働者に対しては面接指導(過重労働面接)を

長時間労働者に対しては面接指導(過重労働面接)を

上記のような理由から、過重労働に対して企業は対策を取らなければなりません。そのなかのひとつが「面接指導」です。労働安全衛生法66条の8では、長時間の時間外・休日労働を行った従業員(労働者)に対して、企業(事業者)は医師による面接指導を行わなければならないと定められています。

“第六十六条の八 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。”

(労働安全衛生法 第六十六条の八)

近年、働き方改革によって労働者の立場を守るために法律の改正・新設が進んでいます。労働安全衛生法も2019年に改正され、面接指導の対象となる要件が拡大されました。例えば、面接指導の義務の対象者は以下になります。

労働者(裁量労働制、管理監督者含む)
【義務】
①月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接指導を申出あり
【努力義務】
②事業主が自主的に定めた基準に該当する

研究開発業務従事者
【義務】
①月100時間超の時間外・休日労働を行った
②月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接指導の申出あり
【努力義務】
③事業主が自主的に定めた基準に該当する

高度プロフェッショナル制度適用者
【義務】
①1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた時間について月100時間超行った
【努力義務】
② ①の対象者以外で面接指導の申出あり

面接指導までの流れ

それでは、長時間労働者が産業医による面接指導を受けるまでの流れを解説します。

労働時間の算定・把握

企業は従業員の労働時間を把握し、3年間保存する義務が定められています。また、労働時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日で行う必要があります。

労働時間は客観的な方法で把握する必要があり、例えばタイムカードやICカード、パソコンの起動時間の確認などがあげられます。

従業員の総労働時間、時間外労働、休日労働を取りまとめ、各従業員が確認できる状態にしておきましょう。

従業員への通知・産業医への情報提供

時間外労働と休日労働が月80時間を超えている従業員に対しては、労働時間の状況に関する通知をしなければなりません。なぜならその通知によって、医師による面接指導の対象者であるという認識をしてもらい、面接指導の申出を促せるためです。したがって、面接指導の実施方法や時期の案内などもあわせて伝えましょう。

また従業員への通知と同時に、産業医へ時間外労働と休日労働が月80時間を超えている従業員に関する情報を提供する必要があります。該当者がいない場合は、「該当者なし」という情報を提供しましょう。

面接指導の実施

面接指導は医師が実施しなければなりません。法的に医師であれば問題ありませんが、産業保健に関する医学的な知見を持つ、産業医などに依頼するほうが望ましいです。

従業員が50人以上の企業では産業医の設置義務があります。従業員の人数が少なく、産業医のいない企業では地域産業保健センターなどの窓口を活用しましょう。ワーカーズドクターズでは産業医をお探しの企業へ、長年培ったノウハウを活用し、ご紹介します。


ワーカーズドクターズならではの企業サポート

面接指導では、以下の事項を確認・総合的に評価し、従業員へ指導することになります。

確認事項
1.勤務状況 労働時間、出張回数、深夜勤務、作業環境の状況など
2.就労の蓄積の状況 仕事の負担度、自覚症状、睡眠・休養の状況など
3.その他心身の状況 現病歴、生活状況など

また、面接指導の実施の事実や内容が漏れることがないよう、プライバシーの保護を徹底しましょう。

▼関連記事はコチラ
産業医とは?役割や業務内容をわかりやすく解説

意見の聴取と事後措置の策定・実施

企業は、面接指導を実施した従業員の健康を維持するために、必要な措置を産業医から聴取します。その意見を考慮して企業は事後措置を実施する判断をします。具体的には配置転換や労働時間の短縮、就業場所の変更などがあげられます。

なお、面接指導の結果は5年間保存しなければなりません。また、労働者からこの結果の開示が求められた際は原則としてそれに応じなければならない点は注意しましょう。

まとめ

従業員の過重労働を把握する際に有効なのが「疲労蓄積度チェックリスト」の活用です。疲労蓄積度チェックリストは疲労の蓄積度合いを確認するためのツールになります。従業員本人が疲労を自覚することで、面接指導へ申し出やすくしたり、健康管理意識が強くなったりします。

過重労働による弊害は従業員の健康を脅かすだけでなく、作業の生産性にも直結します。企業にとって重要なのは目先の利益だけでなく、従業員の健康も含まれている、という点を十分考慮しましょう。

公開日: 2022.06.28
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