ストレスチェックだけでは足りない?パルスサーベイの役割と導入について解説

2021年11月29日

従業員の幸福について考えることは、企業幹部らにとって重要なトピックになっています。これは、昨今企業倫理が大きく様変わりし、労働対価としての賃金に加え、企業が考えるべき事柄が増えたことに起因しています。

しかし、賃金や職場環境、福利厚生、コミュニケーションなどに対し、(企業が)従業員の意識や日々の満足度を把握することは簡単なことではありません。たとえアンケートやストレスチェックを実施していたとしても、年にたった一度の実施であったり回答を基にした改善がなかったりすれば、それらは当然意味がないものになるでしょう。

そこで注目され始めたのが、満足度を測る新たな調査手法「パルスサーベイ」です。しかし、このパルスサーベイとは一体どのようなものなのでしょうか。

パルスサーベイとは

コミュニケーションを取る従業員

パルスサーベイとは、会社に対する従業員の満足度について、簡易的な調査を短期間に繰り返し実施していく調査手法のことです。愛着や忠誠心、思い入れなど、企業と従業員の関係性いわゆる”エンゲージメント”を把握するために用いられます。

これらは、脈拍を定期的に測り健康状態を把握する習慣になぞらえて、「パルス(脈拍)+サーベイ(調査)」と呼称され、単純に「パルス調査」とも呼ばれています。

パルスサーベイには画一的な実施頻度はありませんが、一週間あるいは一ヶ月に一度のタイミングで実施し、1~2分で回答が終わる10問程度のボリュームが一般的です。質問内容についても任意となっており、定量的な問いにするか、定性的なものにするかは、あくまで企業の判断です(※一般的には組み合わせたものが多い)。また、扱うトピックは賃金、職場環境、キャリア、福利厚生、コミュニケーションなど、企業によって異なります。

似て非なる調査手法「センサス」について

パルスサーベイと比較される調査手法の一つに、「センサス」というものがあります。センサスは、比較的設問の多い意識調査を年に1~2回程度実施し従業員の満足度などを把握するもので、一般的にパルスサーベイと平行して行われます。

また、定型的な例としては、企業が従業員に対し毎年1回実施する「ストレスチェック(労働安全衛生法により一部の企業に実施が義務付けられている)」や、「モラールサーベイ(従業員意識調査・ES調査)」などが挙げられます。

センサスは従業員の意識調査としてかつて主流となっていましたが、低い実施頻度などから”改善が難しい”といったさまざまな問題が発生。そして、その解決策として、パルスサーベイがより注目されるようになりました。

パルスサーベイの目的やメリット

アンケートに記入する男性社員

パルスサーベイには、回答率向上など、さまざまな目的やメリットがあります。

リアルタイムに近い情報が把握できる
短いスパンで調査を行うため、経営幹部らは、リアルタイムに近い情報(従業員の満足度など)を得ることができます。

回答率や、回答の質の向上
設問の数が少なく手短に回答できるため、従業員全体の回答率や、回答の質が向上します。

過去の推移が把握できる
定量的な調査を定期的に実施することで、情報(従業員全体の満足度など)の推移が把握できるようになります。得られた情報はセグメント化することで、多角的な分析が可能になり、改善や向上につながります。

調査実施側の負担が減少
設問の数が少ないため、スピーディーな調査・集計が可能に。これにより、調査関係者の負担が減少します。

素早いアクションにつながりやすい
調査の実施から、集計、分析までのサイクルが短いため、改善対策など素早いアクションにつながりやすくなります。

パルスサーベイのデメリットや注意点

同時に、パルスサーベイにはさまざまなデメリットが存在します。その一つは、詳細が把握しづらいこと。そもそも設問のボリュームが少ないため、情報の真意や理由、背景などが見えづらい傾向があります。

さらに、パルスサーベイは調査実施の頻度が高く、調査者が各回答者に対しつぶさにフィードバックを加えることは困難です。また、回答へのフォローや改善策などのフィードバックがなければ、パルスサーベイそのものの意義について回答者(従業員)が疑心暗鬼になり、最悪の場合、回答の質の低下にもつながるでしょう。

実際、パルスサーベイなどのサービスを手掛ける株式会社ボルダーが行った「従業員満足度調査に関するリサーチ」によると、対象者の約7割が「サーベイの対応へ疲れると感じる」と回答したことが判明。また、”働き方に改善を感じた”という回答者は約3割に留まったということです。

▼参考資料はコチラ 約7割が従業員・組織サーベイは「疲れる」「改善を実感できない」。Wellが「従業員・組織サーベイへの意識と改善状況」を独自調査

広がるパルスサーベイの活用シーン

職場環境や賃金、経営状況、人間関係、福利厚生など、さまざまな項目から従業員の感情を引き出し、従業員全体のエンゲージメントを把握するパルスサーベイ。左記のように、”マクロな指標”の抽出に用いるのが一般的でしたが、昨今は”ミクロな情報”の抽出作業においても、このパルスサーベイが活用されています。

心身状態の把握
従業員の心身状態の把握を目的に、パルスサーベイを用いる企業が増加しています。リモートワークが長引く職場環境では、コミュニケーションの機会が減り、従業員の心身状態を対面でチェックする機会は減る傾向に。そもそも心身状態は短期間で変化することがあり、短いスパンでの調査実施が必要です。このためパルスサーベイを実施し、心身状態把握に務める企業が増えているのです。

部下や上長の評価
一般的な企業では四半期や半期に部下や上長に対する評価を行いますが、昨今はパルスサーベイの手法を用いて、なるべくリアルタイムでこれらを行う企業も増えているようです。中にはパルスサーベイとセンサスを組み合わせて実施している企業もあるといい、従業員のパフォーマンスなどを密に把握する狙いが隠れています。

パルスサーベイの導入方法や進め方

会議を行う社員

一般的にパルスサーベイの導入ステップは、「目的の設定」、「質問の作成」、「調査の実施」、「回答の集計や、調査結果の分析」の順番に進みます。それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。

目的の設定

まずは、パルスサーベイの目的を決めるところから始めます。また、この段階で、『誰が(調査実行者)』、『誰に対して(調査対象)』、『どのように調査を実施し』、『いつまでに集計するのか』、役割などを決めておくことが大切です。

尚、この記事では、(経営者による)従業員全体の満足度(エンゲージメント)の把握を目的として、解説を進めます。調査実行者は人事部で、全従業員が調査対象です。

質問の作成

このステップでは、「質問項目の抽出」から「質問の作成」までを行います。今回は”会社に対する従業員の満足度”を測ることが目的のため、左記を構成する要素を項目として抽出。尚、パルスサーベイは10問程度が望ましいので、これに合わせ項目も10程度に絞りましょう。

また質問(アンケート)内容の作成では、質問の種類がとても重要になります。質問は大きく分けると、「(はいorいいえで回答する)クローズド・クエスチョン」、「(回答の範囲を制限しない)オープン・クエスチョン」、「段階方式の評定(例:10段階評価など)」の三通りです。

主にパルスサーベイでは、クローズド・クエスチョンや段階方式の評定が採られます。これは、集計作業の負担を軽減すること。また、定量的な情報を集めることで後のデータ分析が容易になることも理由の一つです。

項目の例 質問の例
職場環境
Q業務遂行に適した職場環境が整備されていると感じるか
Q業務遂行の観点から、職場環境について感じることを述べよ
Q業務遂行の観点から、職場環境を評価せよ
(1:不良↔10:良好)
経営に対する
気持ち
Q適切な会社経営が進められていると感じるか
Q会社の経営(経営方針)について感じることを述べよ
Q会社の経営(経営方針)について評価せよ
(A:適切~E:不適切)
業務の量
Q業務の量が適切にアサインされていると感じるか
Qアサインされている業務量について感じることを述べよ
Qアサインされている業務量の状況について
(1:少ない↔10:多い)

調査の実施

このステップでは、まず「調査の実施方法」と「回答期限」を決定し、その上で実際に調査を実行していきます。

調査の実施方法は、「メールにそのまま質問を記入して一斉送信し、回答者に返信してもらう方法」や、「WordやExcelなどを用いてファイルを作り、一斉送信し、回答者に返信してもらう方法」など、企業によってさまざまです。

しかし、上記の方法は集計や分析が困難なため、昨今のビジネスシーンではパルスサーベイのビジネスツールを用いるケースが一般的。サービスによって仕様は異なりますが、アンケートを作成・集計したり、データを分析・管理したりするなど、パルスサーベイに必要な一連の作業がツール上で行えます。

現在、多くの企業がパルスサーベイに特化したサービスを展開しており、クアルトリクス合同会社の「従業員パルスサーベイ(PULSE SURVEY)ツール」、株式会社オーピタスの「オーピタスサーベイ」、また株式会社リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」などが注目されています。

▼参考資料はコチラ
エンプロイーパルスサーベイ(Pulse Survey)ツール|クアルトリクス
オーピタスサーベイ –従業員満足度(ES)調査 – | 株式会社オーピタス
モチベーションクラウド|組織改善ならモチベーションクラウド

回答の集計や、調査結果の分析

最後に、「回答の集計」を行い、その上で「調査結果の分析」を実施し、従業員全体の満足度(エンゲージメント)を算出します。

しかし、何をもって従業員全体の満足度とするのかは、”統計の手法”に依拠するため、もちろん画一的な方法はありません。したがって調査者は、データや分析結果を閲覧する経営幹部らと共同し、各ステップを進める必要があるでしょう。

また、集計や分析が難しい場合は、ステップ3で紹介した各種ツールを用いることも一つの方法です。搭載された統計アルゴリズムなどによって、ツールが自動的に各種指標を算出。ツールによっては集計データのセグメント化も可能で、経営幹部による多角的な分析をサポートします。

パルスサーベイを活用し、従業員満足度を向上へ

パルスサーベイに関する理解は深まりましたでしょうか。これまで述べたように、パルスサーベイは会社に対する従業員満足度を把握する上で、大変注目されている手法です。

しかしこれらは、あくまで各種指標を計測するためのもの。調査を実施するだけでは、もちろん従業員満足度が向上することはありません。何が従業員のエンゲージメントを下げているのか。また、何をすれば従業員の満足度が向上するのか、分析することが非常に重要です。必要な対策を実行して初めて、結果が現れるのです。

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