産業医との契約はどのように進める?契約形態や契約の手順を解説

2021年09月08日

産業医と握手をする様子

従業員数が50人以上の企業・法人は、産業医を選任する義務があると法律で定められています。しかし、初めて産業医を設置する企業の担当者からすると、何から手をつけて良いのか分からない、というのが実情ではないでしょうか。

この記事では、産業医との契約に焦点を当て、契約形態や契約締結までの手順などを詳しく解説します。正しい知識を持って契約を進めれば、企業の安全・健康をさらに促進できるはずです。

産業医の契約形態の種類

産業医と契約を行う様子

企業と産業医との契約形態は、企業と産業医が直接契約を結ぶケースと、企業と産業医の間に人材紹介会社などが入り、企業、人材紹介会社、産業医で間接的に契約を結ぶケースが存在します。また、直接契約はさらに「雇用契約」と「業務委託契約(嘱託契約)」に二分されます。

雇用契約の場合

企業と産業医が、企業で働く従業員と同じように、直接雇用契約を結びます。雇用形態は契約社員、アルバイトなどがありますが、専属産業医(常勤)として雇用契約を結ぶことがほとんどです。また、人材紹介会社が産業医を企業に紹介し、企業と産業医間で直接雇用契約を結ぶパターンもあります(人材紹介契約/紹介料が発生)。さらに、企業と医療機関が直接雇用契約を結び、産業医を派遣してもらうケースもあります。

なお、従業員が1,000人以上、もしくは一定の有害業務を行う従業員500人以上の事業場では、専属産業医の選任が義務付けられています。

業務委託契約(嘱託契約)の場合

企業と産業医間で、業務委託契約(嘱託契約)を結ぶケースです。業務委託契約とは、企業が外部の企業や個人へ業務を委託する際に結ぶ契約を指し、外部の企業や個人は業務の対価として報酬を受け取ります。

業務委託契約を交わした産業医は、契約内容における業務「のみ」を遂行し、その他の業務は拒否することができます。企業の専業産業医と異なる点は非常勤であるため、嘱託産業医として選任される確率が高いことです。

嘱託産業医は、従業員が50人以上999人未満の事業場において1名の選任義務があり(※有害業務がある500人以上の事業場は専属産業医が必須)、月に1回~・数時間、企業を訪問し、契約業務を行うのが一般的です。

業務委託契約は、専門的な知識と産業医の業務に対する理解が必要であり、初めて産業医を設置する企業にとってはハードルが高い契約方法です。そのため、企業と産業医の間に産業医紹介サービス会社などが介入して間接的に企業と産業医が契約を結ぶことが多く、企業にとっては紹介会社を通じて医師に対する要望などを伝えやすいメリットがあります。

産業医を選任する時に必要なもの

書類を確認するビジネスマン

企業は、産業医が必要となった時点(事業場の従業員が50人以上に到達した時点)から14日以内に①産業医を選任し(労働安全衛生規則第13条)、②所轄の労働基準監督署に下記の書類を提出する必要があります。

・産業医選任報告書

※書類を厚生労働省のウェブサイトからダウンロード、もしくは労働基準監督署に取りに行き直接記入する方法のほか、同省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用して書類を作成する方法があります。なお、電子政府の総合窓口「e-Gov」からの電子申請も可能です。

・産業医の医師免許のコピー

・産業医認定証など、産業医が労働安全衛生規則第14条第2項、または規則附則第2条に規定する者であることを証する書面または写し

産業医との契約締結までの手順

産業医との契約は一般的に、自社の要件に合う産業医を探す、契約を締結する、産業医選任報告書などの必要書類を労働基準監督署に提出するというステップを踏みます。それぞれの段階で企業がすべきことを具体的に説明します。

自社の要件に合う産業医を探す

まず、どこから産業医を選任するか、を決めなくてはなりません。基本的なルートは、

  • ①定期健康診断などでお世話になっている医療機関に相談する
  • ②地域の医師会に紹介を依頼する
  • ③産業医紹介サービス会社に自社に合う産業医を選んでもらう
  • ④自社の人脈を利用する

などが挙げられます。

ただし、①②④については、必ずしも自社の要件に合致する産業医が紹介されるとは限らないので、初めて産業医を設置する場合は他社事例にも精通した③産業医紹介サービス会社でアドバイスをもらいながら選任するのが無難かもしれません。

契約を締結する

上記の雇用契約または、業務委託契約で、産業医の業務内容や勤務日数、報酬も異なります。契約締結については契約書を取り交わしますが、内容については、日本医師会による契約書のひな形「産業医契約書の手引き」を参考にすれば良いでしょう。契約書には、産業医の業務内容、報酬、データの取り扱いについて、契約期間などが明記されている必要があります。

産業医選任報告書など、必要書類を労働基準監督署に提出

産業医と契約を締結できたら、上記の産業医選任報告書、医師免許のコピー、産業医であることを証明する書類を、所轄の労働基準監督署に提出します。

産業医の一般的な契約期間と契約更新はいつ頃?

上記の「産業医契約書の手引き」によると、産業医は、契約期間満了日の1ヶ月前までに企業と産業医どちらからも申し出がない限り、1年単位で自動更新されるケースが多いようです。自動更新は、産業医資格の有効期限である最長5年まで続くこともあります。会社の状況や環境の変化(今回のコロナ過など)に合わせて産業医に求められることが変わってきています。自動更新ではなく、年度ごとに変更の必要はないか検討することで今までの産業医とは違った産業保健活動が進展することもあります。

また、契約を解除する際にも、産業医の解任後14日以内に新しい産業医を選任しなくてはならないことが法律で定められています(労働安全衛生規則第13条)。これに違反した場合は、50万円以下の罰金が発生します(労働安全衛生規則第120条)。

産業医と契約を締結する際の注意点

悩みを抱えているビジネスマン

労働者数50人以上の事業場は産業医を選任する義務や条件があり、違反した場合は罰則に該当するというのは前述のとおりです。そのほかの注意点について説明します。

自社のニーズに適した産業医を選任する

産業医にも、生活習慣病の指導に強い(内科)、メンタルに強い(精神科)、などそれぞれ得意分野や専門分野があります。企業として何を重視するのか考慮した上で、産業医を選任する必要があります。さらに近年、女性活躍や就労女性の健康管理が注目されています。2021年7月には厚生労働省から「不妊予防支援パッケージ」で産業医の研修が強化されるなど産業医が果たす役割は増えてきていることから常に新しい知識を有していることも選任のポイントとなります。

医師の事情について理解する

医師の世界では、「副業」が当たり前に認められています。そのため、複数の企業と契約を締結する産業医も珍しくありません。そうした医師の事情を理解しつつ、お互いに条件など合意した上で契約を進める必要があります。誤解やすれ違いが蓄積すると、トラブルを招く原因になるため、特に業務委託契約を締結する場合は契約の際に業務内容の「やる」「やらない」といった線引きをしっかり取り決めて書面化しておきましょう。

提出書類には早めに着手

産業医は、事業場の従業員が50人以上になった日から14日以内に選任しなければならないと法律で定められています。いざと言う時に慌てなくて済むように、提出する資料等は事前に準備するのが理想的です。

「名義貸し」ではない?

産業医を選任しない企業は法を犯すことになります。そのため、誰でもいいからとりあえず産業医を選任する企業も存在するのが事実です。産業医が職場巡視など労働安全衛生法で定められた業務を行わなかった場合(単なる「名義貸し」の場合)、法律違反はもちろん、厚生労働省から違反企業として公表されてしまいます。その結果、企業のイメージダウン、従業員もモチベーション低下の原因ともなるので、くれぐれも気をつけてください。

まとめ

注意して欲しいポイントは、企業と産業医の契約は企業が従業員を雇う際とは異なることです。契約形態にも2パターンあり、特に「業務委託契約」では、「雇う側」「雇われる側」の関係ではなく、対等な関係となります。そのため、自社の都合だけでなく、産業医の希望なども十分にヒアリングした上で契約することが重要です。

産業医紹介サービス会社を活用すると、自社に合う産業医を見つけることができるだけでなく、スムーズに産業医と契約締結できるでしょう。何から着手してよいのか分からない…と頭を抱える担当者の方は、ぜひWORKERS DOCTORSまでお問い合わせください。

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