早めが肝心 熱中症対策

2020年06月02日【監修】帝京大学医学部救急医学講座教授
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長
三宅 康史 先生

 熱中症は真夏にだけ起こるものと思いがち。しかし、例年、梅雨入り前の5月頃から増え始めるため油断は禁物です。体が熱さに慣れていないと熱中症になりやすいので、本格的に暑くなる前から対策を始めましょう。

気温だけでなく、湿度や体調なども熱中症に影響

熱中症

 私たちの体は、暑いときには汗をかき、汗が蒸発するときに体の表面から熱を奪うことで、体温を調節しています。熱中症は、このしくみがうまくいかずに起こる体調不良の総称です。
 気温が高いときだけでなく、梅雨のように湿度が高い時期も、汗が蒸発しにくく、体内に熱がこもりやすくなります。とくに、梅雨の合間に晴れて突然気温が上がった日や、梅雨明け後に急に蒸し暑くなった日は要注意。体がまだ暑さに慣れていないので、熱中症が起こりやすくなります。
 また、下記に挙げた条件が重なるほど、熱中症のリスクは高まります。早い時期から暑さに強い体づくりを始めるとともに、可能な限り下記の条件を減らすよう心がけ、熱中症を予防しましょう。


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運動で汗をかいて暑さに強い体づくり

運動の種類は、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動がおすすめ

 体が暑さに慣れることを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。暑熱順化を身につけるためには、日頃から運動をして汗をかくことが有効です。運動の種類は、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動がおすすめ。半身浴やサウナでも効果が期待できます。健康に自信のある人なら、ややきつめの運動を30分程度行うとよいですが、天候、持病の具合や、その日の体調に合わせて、負荷をかけ過ぎないように運動量や時間を工夫しましょう。
暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間ほどで獲得できるといわれています。

のどが渇く前にこまめに水分を補給

 軽い脱水状態のときにはのどの渇きを感じないことがあります。のどが渇く前、あるいは暑い場所に行く前から水分を補給しておきましょう。入浴中や眠っている間も汗をかくため、入浴の前後や起床後も水分を摂取する必要があります。
 日常生活で摂取する水分のうち飲料として摂取するのは、1日あたり1.2リットルが目安です(食事などに含まれる水分は除く)。一度にたくさん飲むよりも、回数を分けてこまめに飲みましょう。

水分に加え、塩分の補給も忘れないように

大量の汗をかいたときは塩分も補給

通常の水分補給であれば、水や麦茶などで問題ありません。運動などで汗を大量にかいたときは、塩分(ナトリウム)などの電解質も失われるため、水分に加え、塩分の補給も忘れないようにしてください。経口補水液やスポーツドリンクを飲むのもよいですし、塩あめや梅干しを利用するのもよいでしょう。なお、高血圧や、心臓の病気で塩分制限を受けている人は、持病の悪化を避けるため、かかりつけの医師とよく相談してください。

アルコールはNG

暑い日に飲むビールは格別――という人も多いと思いますが、アルコールは利尿作用があり、脱水を招く恐れがあるため、熱中症予防のための水分補給には向きません。

めまい、頭痛、吐き気などは熱中症のサイン

暑さに強い体づくりや水分補給のほか、天気予報や環境省「熱中症予防情報サイト」(https://www.wbgt.env.go.jp/)などを参考に暑い日や時間帯の外出をできるだけ控える、室内では我慢せずにエアコンや扇風機を使用するなどの暑さを避ける工夫も忘れないようにしましょう。 二日酔い

しかし、どんなに気をつけていても、熱中症になってしまうことはあります。暑い環境に長くいて、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、けいれんなど熱中症が疑われる症状が見られたときは、涼しい場所で安静にし、体を冷やし、水分を補給するようにしてください。 熱中症は重症化すると命にかかわります。自力で水分を摂取できない、嘔吐を繰り返す、意識がないなどのときは、周囲の人は迷わず救急車を呼びましょう。